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2023年フランス・ベルギー合作映画『バティモン5 望まれざる者』

2024年06月11日 | 映画
 6/5(水)、千葉劇場にて。監督ラジ・リ。出演アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ。

 パリでは、今年2024年夏にオリンピックが開催される。報道によると、それがために一部の地区で住民が強制退去させられた、と聞く。2023年製作の、この作品はオリンピックとは直接的な関係はないかもしれない。が、行政が警察を動員して住民を強制退去される設定になっていて、その点ではオリンピック開催という行政の都合による住民の強制退去と同じ、と言える。端的に言えば、現代フランス社会の歪みを描いた作品、と言えるだろう。映画の舞台となっているのは、日本の高度成長期に建てられた公団住宅によく似た10階建て程の団地。老朽化が進み、エレベーターなどは故障して長く動かず、通路の照明なども切れ、落書きだらけで住民の心の荒廃も感じられる。しかし、そこでは、確かに人々が生活しているのだった。
 映画の最後、住む家を失った黒人青年が市長の家に乗り込み破壊と放火を試み、帰宅した市長に「住む場を奪われた者の気持ちを味合わせてやる・・」と、泣きながら叫ぶシーンがある。それは、かつて植民地として国を奪われた者の言葉の様にも聞こえた。観ていて、つらいシーンも多かったが、見る価値のある作品、と感じた。



以下は、千葉劇場のホームページより引用
『パリ郊外で移民家族が多く暮らす地区を一掃しようとする行政と住民たちの衝突を緊迫感たっぷりに描き、大都会パリの知られざる暗部を浮き彫りにした社会派ドラマ。パリ郊外に立ち並ぶいくつもの団地には労働者階級の移民家族たちが多く暮らしているが、このエリアの一画=バティモン5では再開発のために老朽化が進んだ団地の取り壊し計画が進められている。そんな中、前任者の急逝で臨時市長となったピエールは、自身の信念のもと、バティモン5の復興と治安を改善する政策の強行を決意。だがその横暴なやり方に住民たちは猛反発、やがて、これまで移民たちに寄り添い、ケアスタッフとして長年働いていたアビーたちを中心とした住民側と、市長を中心とした行政側が、ある事件をきっかけについに衝突。やがて激しい抗争へと発展していく。(2023年製作/105分/G/フランス・ベルギー合作)』

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