フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

焦燥

2005年09月14日 23時23分29秒 | 第4章 恋愛前夜編~カズトの章~
オレの病室は1週間も経たないうちに花で埋め尽くされた。
毎日、バスケのマネージャーや、クラスの女や、隣りのクラスの女や、知らない女が見舞いに花を持って来たからだ。

その上、看護師様たちがやれ検温だ、やれ体調はいかがと日に何人と入れ替わり立ち代わりやってくる(誰だよ。オレの担当は!?)。
だから、ヤブ……矢部先生が、「んー。そろそろ松葉杖で歩いてもいいだろう」と、言ってくれた時は、心底助かったと思った。


オレは久し振りに、外に出てベンチに腰を下ろした。
木の隙間から風が流れてきて心地いい。


昨日監督と電話で話した。
「チームは順調に勝ち続けているよ。だから、お前は治療に専念しろ」

きっと、オレがいなくてもチームは優勝するだろう。
安堵する反面、自分の不甲斐無さに対する怒りも込み上げてきた。

オレは入院してから何度も同じ夢を見ていた。
バスケの試合に出ている夢だ。
ドリブルをしながら、敵をかわし、一気にリング目掛けてシュートしようとした。
ところが、リングが見つからない。
途方に暮れたオレは、気付くと切り立った岩に立っていて、今にも、谷底へまっ逆さまに落ちそうだった。
そんな夢だった。

毎日、落ち込んで行くオレを見て、ヤブが言った。
「君は態度もでかいし、口も悪いが、繊細だ。そんな君には今回の事故は確かに予想外の出来事で堪えただろうが、これは不幸ではないよ。君次第で幸運へと変える事も出来るんだよ」
「幸運??それはあり得ないだろう」

オレは冷笑した。

「まぁ。今は信じなくてもいい。でも、出来事には必ず必然がある。君がここへ入院したのも何か訳があるんだよ」

「何の訳があるんだよ!」

オレは拳に満身の力を込めてベンチを叩いた。

「何が訳だって?」

懐かしい声にふと顔を上げた。
声の主は北尾だった。

「結構、元気そうじゃん。安心したよ。ほれ、先生から預かってきたぜ」
茶封筒の中身を開けると、成績表やら、宿題やらがたんまりと入っていた。
余計なモン、持って来やがって。
オレは北尾が持ってきた書類をベンチの上に放った。

「ありがたくないな」
「それを言うなら、『有り難う』だろ。ったく。今回の期末の成績も学年1位と言い、ホント、やなヤツだぜ、お前って」

口を尖らせながら、どっかりと北尾はオレの隣に腰を下ろした。



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