はにかみながら笑うトオル君の笑顔に胸が震え、思わず彼から目を逸らした。
「今、着けてもいいかな?」
私は、止め具を外して着けようとしたけど、手が震えてなかなか上手く外せなかった。
「僕がやったげようか」
トオル君はいとも簡単に止め具を外して、私に着けてくれた。
「わぁ、可愛い。有り難う」
シルバーの星のペンダントヘッドには、よく見るとお星様の中に小さな真珠が付いていた。
「真珠も付いてる」
「それは天使の涙なんだって。もし、君につらいことがあったら、その天使が君の代わりに涙を流して、そのつらい気持ちを浄化してくれるそうだよ」
「……つらい気持ち」
私はそのペンダントを見つめながら、かずにぃとのことをふと思い出していた。
トオル君は、「気に入って貰えて良かった」と笑った。
花火も中盤にさしかかろうとした頃、トオル君は携帯で浜にいる友達に電話をして、私が足を挫いたから先に別荘に帰って手当てすることを告げた。
「ごめんね」
「いや。元はと言えば、僕が強引過ぎた。ごめん」
「そう言えば、どこに行こうとしたの?」
「え?あー。それは……その……」
トオル君がシドロモドロ答えようとした時、近くで、子供の泣き声がした。
その泣き方が尋常ではなく、周りの大人達も小さな男の子を囲んで困った顔をしていた。
「困ったね~。迷子になったみたいなんだけどね~。どうも、日本人じゃないみたいで言葉が通じないんだよ」
皆は口々に状況を伝え合い、困惑していた。
トオル君が歩み寄って、幾つかの言葉を掛けると、その子は急に泣くのを止め、顔を上げてしゃくりあげながらも話し始めた。
すると、トオル君はその子をひょいと肩に乗せて、肩車をして歩き始めた。
「トオル君、この子は?」
「やっぱり、迷子らしい。家族で花火を見に来たみたいなんだけど、場所を離れて出店にかき氷を買いに来たら、場所が分からなくなったんだって」
「日本語が通じないって言ってた」
「うん。この子は1週間だけ、上海から父親のいる日本に家族で遊びに来ている中国人だって」
トオル君は更に男の子と会話をしながら、かき氷のお店へと向かった。
「ハルナちゃん。足、大丈夫?」
「うん。それより、この子の家族を見つけよう」
「OK」
「トオル君は中国語も出来るの?」
「昔、僕のナニーが中国人だったからね」
「ナニーって?」
「ええっと、ナニーっていうのはお手伝いさん兼家庭教師みたいなもんかな。中国には北京語、上海語、福建語、広東語と言った幾つかの言語があって、その中でも、ナニーが教えてくれたのが、この子が話している上海語と北京語だったんだ」
私は何気なく話すトオル君の小さい頃の事を聞きながら、彼が全く違う世界の住人のような気がしていた。
トオル君は一体何者なんだろう。
話せば話すほど分からなくなってくる。
それはまるで、ばらばらのパズルを寄せ集めて必死に埋めようとしてる作業をしているのに似ていた。
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「今、着けてもいいかな?」
私は、止め具を外して着けようとしたけど、手が震えてなかなか上手く外せなかった。
「僕がやったげようか」
トオル君はいとも簡単に止め具を外して、私に着けてくれた。
「わぁ、可愛い。有り難う」
シルバーの星のペンダントヘッドには、よく見るとお星様の中に小さな真珠が付いていた。
「真珠も付いてる」
「それは天使の涙なんだって。もし、君につらいことがあったら、その天使が君の代わりに涙を流して、そのつらい気持ちを浄化してくれるそうだよ」
「……つらい気持ち」
私はそのペンダントを見つめながら、かずにぃとのことをふと思い出していた。
トオル君は、「気に入って貰えて良かった」と笑った。
花火も中盤にさしかかろうとした頃、トオル君は携帯で浜にいる友達に電話をして、私が足を挫いたから先に別荘に帰って手当てすることを告げた。
「ごめんね」
「いや。元はと言えば、僕が強引過ぎた。ごめん」
「そう言えば、どこに行こうとしたの?」
「え?あー。それは……その……」
トオル君がシドロモドロ答えようとした時、近くで、子供の泣き声がした。
その泣き方が尋常ではなく、周りの大人達も小さな男の子を囲んで困った顔をしていた。
「困ったね~。迷子になったみたいなんだけどね~。どうも、日本人じゃないみたいで言葉が通じないんだよ」
皆は口々に状況を伝え合い、困惑していた。
トオル君が歩み寄って、幾つかの言葉を掛けると、その子は急に泣くのを止め、顔を上げてしゃくりあげながらも話し始めた。
すると、トオル君はその子をひょいと肩に乗せて、肩車をして歩き始めた。
「トオル君、この子は?」
「やっぱり、迷子らしい。家族で花火を見に来たみたいなんだけど、場所を離れて出店にかき氷を買いに来たら、場所が分からなくなったんだって」
「日本語が通じないって言ってた」
「うん。この子は1週間だけ、上海から父親のいる日本に家族で遊びに来ている中国人だって」
トオル君は更に男の子と会話をしながら、かき氷のお店へと向かった。
「ハルナちゃん。足、大丈夫?」
「うん。それより、この子の家族を見つけよう」
「OK」
「トオル君は中国語も出来るの?」
「昔、僕のナニーが中国人だったからね」
「ナニーって?」
「ええっと、ナニーっていうのはお手伝いさん兼家庭教師みたいなもんかな。中国には北京語、上海語、福建語、広東語と言った幾つかの言語があって、その中でも、ナニーが教えてくれたのが、この子が話している上海語と北京語だったんだ」
私は何気なく話すトオル君の小さい頃の事を聞きながら、彼が全く違う世界の住人のような気がしていた。
トオル君は一体何者なんだろう。
話せば話すほど分からなくなってくる。
それはまるで、ばらばらのパズルを寄せ集めて必死に埋めようとしてる作業をしているのに似ていた。
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