「かんぱーい」と、つられてグラスを持ち上げながら、オレは尋ねた。
「で、何の?」
すると、矢部先生は、少し赤くなった顔を益々赤くさせながら、白状した。
「いや、実は結婚することになってな」
「え!息子さんが?!」
先生はオレの頭をゴツン!と殴った。
「いってぇーーー!冗談だよ!何も、グーで殴ることないだろぉ!!」
「お前は私が独身ってこと知ってて言うからだ!!」
それからオレ達はワインのアルコールの力も手伝って大いにはしゃいだ。
「で、いつ結婚するんですか?」
オレは先生のグラスにワインを注ぎながら聞いた。
「んー。実はもうしちゃったんだよ。入籍だけの、ジミ婚ってやつさ」
「はっえー。で、相手はどんな人?いつ、出会ったの?」
オレが矢継ぎ早に尋ねると、先生は照れながらも、節目がちに答えた。
「私の中学時代の初恋の人さ。彼女の旦那さんが、癌でこの病院に入院してきて、それで再会したんだよ。旦那の方は私が小さい頃から良く知っている幼馴染でね
この病院に来た時は既に末期癌だった。彼は、亡くなる間際に、彼女と子供達のことを頼むと私に言い残して亡くなったんだよ」
「知らなかった」
オレはポツリと言った。
「実は、このRomanee Contiの1978年は彼女が前の旦那さんと結婚した年なんだ」
「えっ!?」
オレはワインをまじまじと見つめた。
「彼女とヤツが育ててきた大切な時間のリレーを今度は私が引き受けていきたいと思ってね。よーっく、噛み締めて飲んでみるつもりだよ」
「の、割にはピッチが早いじゃないですか」
オレが、冷やかすと、ヤブのヤツクスリと笑った。
「まぁ、多少のヤキモチくらいは入ってるかもしれないね」
ロマネ・コンティを半分も飲まないうちに先生は酔って机に突っ伏して寝てしまった。
「おーい。センセー、風邪引くぞぉ」
先生は、世界一幸せそうな顔で熟睡していた。
オレは隣室にある宿直室から、ブランケットを持ち出し、先生に掛けた。
「幸せになれよ。ヤブ」
それから、オレは残ったロマネ・コンティをヤブの寝顔をエサにチビチビ飲んだ。
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「いや、実は結婚することになってな」
「え!息子さんが?!」
先生はオレの頭をゴツン!と殴った。
「いってぇーーー!冗談だよ!何も、グーで殴ることないだろぉ!!」
「お前は私が独身ってこと知ってて言うからだ!!」
それからオレ達はワインのアルコールの力も手伝って大いにはしゃいだ。
「で、いつ結婚するんですか?」
オレは先生のグラスにワインを注ぎながら聞いた。
「んー。実はもうしちゃったんだよ。入籍だけの、ジミ婚ってやつさ」
「はっえー。で、相手はどんな人?いつ、出会ったの?」
オレが矢継ぎ早に尋ねると、先生は照れながらも、節目がちに答えた。
「私の中学時代の初恋の人さ。彼女の旦那さんが、癌でこの病院に入院してきて、それで再会したんだよ。旦那の方は私が小さい頃から良く知っている幼馴染でね
この病院に来た時は既に末期癌だった。彼は、亡くなる間際に、彼女と子供達のことを頼むと私に言い残して亡くなったんだよ」
「知らなかった」
オレはポツリと言った。
「実は、このRomanee Contiの1978年は彼女が前の旦那さんと結婚した年なんだ」
「えっ!?」
オレはワインをまじまじと見つめた。
「彼女とヤツが育ててきた大切な時間のリレーを今度は私が引き受けていきたいと思ってね。よーっく、噛み締めて飲んでみるつもりだよ」
「の、割にはピッチが早いじゃないですか」
オレが、冷やかすと、ヤブのヤツクスリと笑った。
「まぁ、多少のヤキモチくらいは入ってるかもしれないね」
ロマネ・コンティを半分も飲まないうちに先生は酔って机に突っ伏して寝てしまった。
「おーい。センセー、風邪引くぞぉ」
先生は、世界一幸せそうな顔で熟睡していた。
オレは隣室にある宿直室から、ブランケットを持ち出し、先生に掛けた。
「幸せになれよ。ヤブ」
それから、オレは残ったロマネ・コンティをヤブの寝顔をエサにチビチビ飲んだ。
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