髪を結い、生まれて初めての化粧をし、生まれて初めてのウェディングドレスに袖を通した。
ただでさえ慣れない雰囲気にそわそわしているのに、招待客のざわざわとした声が控え室にも届き、より一層私を落ち着かなくさせる。
「まぁ!まぁ~!!なんてお若くてお美しい花嫁様なんでしょう!!」
着付けとメイクをして下さったスタッフの人達から、一斉に感嘆と溜息が漏れる。
「あ、有り難うございます……」
履き慣れないハイヒールで、ドレスの裾を踏まないように気を付けて歩く。
ホテルの中を移動しながら、恥かしくて心なしか俯き加減になってしまう。
「まぁ~、綺麗ね~!」
「お人形さんみたい!」
「若い頃の私みたいだわ~」
お約束の賛辞を受けながら、何とかホテル内にある教会の入り口に辿り付くと、パパが目を潤ませて立っていた。
「綺麗だよ、ハルナ……。くそっ!和明のヤツ!!」
「パパ……、それカズトのお父さんの名前だよ?!」
「あ!そうだった……。カズトのヤツ!!」
パパは、私が腕をそっと掴むと、ぶわっと涙を浮かべ、また「くそっ!!」と呟き、目頭をハンカチで抑えた。
教会への扉が開き、ロボット歩きのパパの歩に慌ててツーステップで合わせる。
歩みを止めると、試着の時、「燕尾服なんて、七五三以来だ」と笑っていたカズトが、背筋を伸ばして微笑んで立っていた。
二人は一礼すると、パパは私の手をカズトに渡した。
外国人の神父さんのたどたどしい日本語による、厳粛な式が始まった。
賛美歌に、誓いの言葉に、誓いのキス……
パパの「ちくしょう!」と小さく呟いたつもりの声が教会にこだまし、参列者の泣き笑いを誘っていた。
結婚式の朝、私とカズトは実家に一旦戻り、お互いの親に挨拶しようと車を走らせた。
カズトと私は、「じゃぁ、後で」と目配せすると、隣同士のお互いの玄関の戸を開けた。
家では、パパもママもすっかり支度を済ませていた。
パパは、私の顔を見ると、「また、綺麗になったんじゃないか?」と笑った。
私達はリビングのソファーに腰を下ろし、最後の時間をゆったりと過ごした。
パパは、コーヒーをテーブルに置き、家族の写真に目を細めながら、穏やかな口調で話し始めた。
「若くして結婚した僕達の元には、なかなかコウノトリが現われなくてね。
『もう、赤ちゃんは授からないだろう』と落胆した頃に、ママは君を身篭ったんだ。
その君は16年前の今日、2,000gにも満たない未熟児で産まれて、無事育つだろうかと毎晩不安な気持ちで寝顔を覗き込んでいたんだよ……。それを!それを!!16年しか育てていないのに和明に取られるとは!!」
「パッ!パパ!!それ、カズトのお父さんの名前だから……」
「そうだったな。はは……」
私の突っ込みに、パパは力なく笑った。
出掛ける前に、パパとママに今まで育ててもらったお礼を言おうと、言葉を切り出すと、ママは微笑み、パパは「言うな!」と号泣した。
その時のパパの淋しい横顔が、今も淋しさに項垂れていた。
挙式を無事に終え、披露宴が始まる前の控え室でパパとカズトは、楽しそうに笑いながら話していた。
「でも、お隣同士ですし、すぐにいつでも会えますよ。お父さん」
「……まだ、入籍していないんだから、お父さんは早いだろう!」
拗ねたパパの言葉に、ママと私は「パパ!!」とユニゾって反論した。
パパは私達をチロンと睨みつけると襟を正した。
少し拗ねながらもパパはコホンとひとつ咳をし、カズトに頭を下げた。
「娘を頼むよ」
「いや……そんな、こちらこそ……お父さん」
「だから、お父さんは早いと言ってるだろう!!」
「あ!パパ!!」
「あなたっっっっ!!!」
頭を下げるカズトのミゾオチに、パパは思わずボクシング部で鍛えた拳をお見舞いしてしまっていた。
↑「いま、会いにゆきます」で有名な♪アルファポリスです
↑ランキング上位に入ってしまいました(@ O @)応援有り難うございます♪
ただでさえ慣れない雰囲気にそわそわしているのに、招待客のざわざわとした声が控え室にも届き、より一層私を落ち着かなくさせる。
「まぁ!まぁ~!!なんてお若くてお美しい花嫁様なんでしょう!!」
着付けとメイクをして下さったスタッフの人達から、一斉に感嘆と溜息が漏れる。
「あ、有り難うございます……」
履き慣れないハイヒールで、ドレスの裾を踏まないように気を付けて歩く。
ホテルの中を移動しながら、恥かしくて心なしか俯き加減になってしまう。
「まぁ~、綺麗ね~!」
「お人形さんみたい!」
「若い頃の私みたいだわ~」
お約束の賛辞を受けながら、何とかホテル内にある教会の入り口に辿り付くと、パパが目を潤ませて立っていた。
「綺麗だよ、ハルナ……。くそっ!和明のヤツ!!」
「パパ……、それカズトのお父さんの名前だよ?!」
「あ!そうだった……。カズトのヤツ!!」
パパは、私が腕をそっと掴むと、ぶわっと涙を浮かべ、また「くそっ!!」と呟き、目頭をハンカチで抑えた。
教会への扉が開き、ロボット歩きのパパの歩に慌ててツーステップで合わせる。
歩みを止めると、試着の時、「燕尾服なんて、七五三以来だ」と笑っていたカズトが、背筋を伸ばして微笑んで立っていた。
二人は一礼すると、パパは私の手をカズトに渡した。
外国人の神父さんのたどたどしい日本語による、厳粛な式が始まった。
賛美歌に、誓いの言葉に、誓いのキス……
パパの「ちくしょう!」と小さく呟いたつもりの声が教会にこだまし、参列者の泣き笑いを誘っていた。
結婚式の朝、私とカズトは実家に一旦戻り、お互いの親に挨拶しようと車を走らせた。
カズトと私は、「じゃぁ、後で」と目配せすると、隣同士のお互いの玄関の戸を開けた。
家では、パパもママもすっかり支度を済ませていた。
パパは、私の顔を見ると、「また、綺麗になったんじゃないか?」と笑った。
私達はリビングのソファーに腰を下ろし、最後の時間をゆったりと過ごした。
パパは、コーヒーをテーブルに置き、家族の写真に目を細めながら、穏やかな口調で話し始めた。
「若くして結婚した僕達の元には、なかなかコウノトリが現われなくてね。
『もう、赤ちゃんは授からないだろう』と落胆した頃に、ママは君を身篭ったんだ。
その君は16年前の今日、2,000gにも満たない未熟児で産まれて、無事育つだろうかと毎晩不安な気持ちで寝顔を覗き込んでいたんだよ……。それを!それを!!16年しか育てていないのに和明に取られるとは!!」
「パッ!パパ!!それ、カズトのお父さんの名前だから……」
「そうだったな。はは……」
私の突っ込みに、パパは力なく笑った。
出掛ける前に、パパとママに今まで育ててもらったお礼を言おうと、言葉を切り出すと、ママは微笑み、パパは「言うな!」と号泣した。
その時のパパの淋しい横顔が、今も淋しさに項垂れていた。
挙式を無事に終え、披露宴が始まる前の控え室でパパとカズトは、楽しそうに笑いながら話していた。
「でも、お隣同士ですし、すぐにいつでも会えますよ。お父さん」
「……まだ、入籍していないんだから、お父さんは早いだろう!」
拗ねたパパの言葉に、ママと私は「パパ!!」とユニゾって反論した。
パパは私達をチロンと睨みつけると襟を正した。
少し拗ねながらもパパはコホンとひとつ咳をし、カズトに頭を下げた。
「娘を頼むよ」
「いや……そんな、こちらこそ……お父さん」
「だから、お父さんは早いと言ってるだろう!!」
「あ!パパ!!」
「あなたっっっっ!!!」
頭を下げるカズトのミゾオチに、パパは思わずボクシング部で鍛えた拳をお見舞いしてしまっていた。
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