トオル君は、温かくてその大きな両手に私の手を包んだまま、目を瞑り、額にあてた。
まるでお祈りでもしているかのように……
「君を……愛している」
トオル君の想いを振り払おうと、強く首を振り、懸命に手を引くのに……
それでも、彼の揺ぎ無い瞳の前に、私の心が捕まってしまう。
「ハルナ……、もう嘘はつかないで。今、君が本当のことを言わなかったら、僕たちは一生、お互いの心を求めて彷徨うんだ。……そんな運命を、君は黙って受け入れるつもりか!?」
「出て行けよ!コソドロ!!」
突然、扉が大きく開いたかと思うと、烈火の如く怒りを露わにしたカズトが部屋へ飛び込んで来た。
トオル君の襟を掴み持ち上げたかと思うと、次の瞬間、彼の頬に拳を振り上げた。
「トオル君!!」
壁に打ちつけられたトオル君の唇から血が流れ落ちていた。
「大した心臓だな!?オレ達の結婚式に来るなんてな!だが、お前を呼んだ覚えはねぇぞ!!」
トオル君は切れた唇から、流れ落ちる血を袖で拭いながら立ち上がった。
「みっともねぇことすんなよな!」
「……みっともなくてもいいさ。今、伝えなければ、ハルナを一生失ってしまうんだ」
「ヒトの女を気安く呼び捨てにしてんじゃねぇよ!!」
カズトの放った拳が再度トオル君の頬を打ち、彼はガラガラとパイプ椅子をなぎ倒しながらその場に倒れこんでしまった。
それでもトオル君は、カズトを睨みつけながら、ユラユラと立ち上がった。
「トオル君……!カズト、止めて!!」
いつの間にか、控え室には、式場のスタッフや、数人の招待客が入って来ていた。
「何だ?」
「どうしたんだ?一体……」
「おい!誰か警備員を呼んで来いよ!!」
騒然とした控え室は、たちまち新たな見物客を呼び込んでしまっていた。
三度、カズトの放った拳に、私は悲鳴を上げ、目を瞑った。
「殴られっぱなしじゃ、割に合わないな……」
そう言うと、トオル君はカズトの拳をヒラリと交わし、驚いて振り向くカズトの顔面に右ストレートを放った。
カズトは強く床に打ち付けられ、切れた口の中から出た血をぺっと吐き出した。
「このやろぉ!!!」
掴み掛かろうとするカズトの手を掴んだかと思うと、トオル君はその手を捩じ上げ、くるんとカズトの体を宙に浮かせ、床に打ちつけた。
「止めて!二人とも!!トオル君!!カズト!!」
泣きながら叫ぶ私の声は、ざわざわと集まった野次馬の声に掻き消された。
「ごめんね!ハルナ!!」
いつの間にかトモが泣きながら背後から私を抱き締めていた。
「私……、私、トオル君から、電話を貰ってたの……。
『片岡と話がしたいから住所を教えてくれ』って……。
でも、私、『もう遅いよ。諦めた方がいいよ』って教えなかったんだよ。
そしたら、トオル君、『じゃ、仕方ないね』って笑って、『本意じゃないけど、結婚式場まで略奪に行くしかないか……』って言ってて……。
でも、まさか本当になるとは思ってなくて……」
動揺するトモを抱き締めながら、私は顔を上げた。
そして、次の瞬間、ぞくっとした。
カズトの拳を紙一重で交わし、赤子の手を捻るかのようにカズトを扱うトオル君の姿に慄然とした。
私は、トオル君のその訓練された無駄の無い動きに鳥肌が立ち、震えた。
「止めさせなければ……」
パパの声が背後でしたかと思うと、素早く二人の間に割って入り、「ここまでだ!」と叫び、2人の拳をその腕で受け止めていた。
↑「いま、会いにゆきます」で有名な♪アルファポリスです
↑ランキング上位に入ってしまいました(@ O @)応援有り難うございます♪
まるでお祈りでもしているかのように……
「君を……愛している」
トオル君の想いを振り払おうと、強く首を振り、懸命に手を引くのに……
それでも、彼の揺ぎ無い瞳の前に、私の心が捕まってしまう。
「ハルナ……、もう嘘はつかないで。今、君が本当のことを言わなかったら、僕たちは一生、お互いの心を求めて彷徨うんだ。……そんな運命を、君は黙って受け入れるつもりか!?」
「出て行けよ!コソドロ!!」
突然、扉が大きく開いたかと思うと、烈火の如く怒りを露わにしたカズトが部屋へ飛び込んで来た。
トオル君の襟を掴み持ち上げたかと思うと、次の瞬間、彼の頬に拳を振り上げた。
「トオル君!!」
壁に打ちつけられたトオル君の唇から血が流れ落ちていた。
「大した心臓だな!?オレ達の結婚式に来るなんてな!だが、お前を呼んだ覚えはねぇぞ!!」
トオル君は切れた唇から、流れ落ちる血を袖で拭いながら立ち上がった。
「みっともねぇことすんなよな!」
「……みっともなくてもいいさ。今、伝えなければ、ハルナを一生失ってしまうんだ」
「ヒトの女を気安く呼び捨てにしてんじゃねぇよ!!」
カズトの放った拳が再度トオル君の頬を打ち、彼はガラガラとパイプ椅子をなぎ倒しながらその場に倒れこんでしまった。
それでもトオル君は、カズトを睨みつけながら、ユラユラと立ち上がった。
「トオル君……!カズト、止めて!!」
いつの間にか、控え室には、式場のスタッフや、数人の招待客が入って来ていた。
「何だ?」
「どうしたんだ?一体……」
「おい!誰か警備員を呼んで来いよ!!」
騒然とした控え室は、たちまち新たな見物客を呼び込んでしまっていた。
三度、カズトの放った拳に、私は悲鳴を上げ、目を瞑った。
「殴られっぱなしじゃ、割に合わないな……」
そう言うと、トオル君はカズトの拳をヒラリと交わし、驚いて振り向くカズトの顔面に右ストレートを放った。
カズトは強く床に打ち付けられ、切れた口の中から出た血をぺっと吐き出した。
「このやろぉ!!!」
掴み掛かろうとするカズトの手を掴んだかと思うと、トオル君はその手を捩じ上げ、くるんとカズトの体を宙に浮かせ、床に打ちつけた。
「止めて!二人とも!!トオル君!!カズト!!」
泣きながら叫ぶ私の声は、ざわざわと集まった野次馬の声に掻き消された。
「ごめんね!ハルナ!!」
いつの間にかトモが泣きながら背後から私を抱き締めていた。
「私……、私、トオル君から、電話を貰ってたの……。
『片岡と話がしたいから住所を教えてくれ』って……。
でも、私、『もう遅いよ。諦めた方がいいよ』って教えなかったんだよ。
そしたら、トオル君、『じゃ、仕方ないね』って笑って、『本意じゃないけど、結婚式場まで略奪に行くしかないか……』って言ってて……。
でも、まさか本当になるとは思ってなくて……」
動揺するトモを抱き締めながら、私は顔を上げた。
そして、次の瞬間、ぞくっとした。
カズトの拳を紙一重で交わし、赤子の手を捻るかのようにカズトを扱うトオル君の姿に慄然とした。
私は、トオル君のその訓練された無駄の無い動きに鳥肌が立ち、震えた。
「止めさせなければ……」
パパの声が背後でしたかと思うと、素早く二人の間に割って入り、「ここまでだ!」と叫び、2人の拳をその腕で受け止めていた。
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あわわ…なんだか大変なことに…
が…頑張れトオル君!!
お、お父さん素敵…号泣具合とか。
最終章ですし、トオル君とハルナちゃんをひっそり見守っていくですっ
ハルナちゃんのお父さん、気に入って頂けて嬉しいです。
でも、カズトのお父さんも実は素敵?!だったりする?
「F1」のテーマの一つでもある「ケッタイナ大人達を書く」が少しでも書けて嬉しいです(←その最たる方は勿論カズトママ
)。
これからも、ケッタイナ住人達をはぜイチさんに贈ります。