「かっずぼ~ん!たっだいま~!!」
声と同時に荷物をドサドサと下ろす音がした。
「リョーコか……」
かずにぃは、私をぎゅっと抱きしめると上半身を起こし、ブランケットでそぉっとくるんだ。
「おーい!いるんでしょ。夕飯買って来てあげたぞぉ。一緒に食べよー」
ドアがノックされ、ドアノブに手を掛ける音がした。
ど、どうしよう。
かずにぃの私を抱きしめる手に力が入った。
その時、カチカチカチッと引っ掛かるような音がした。
「あれ?鍵が掛かってる?まだ、寝てんのかな?」
リョーコさんの声が、リビングの向こう側に去っていった。
そうだった。かずにぃ、鍵を掛けていたっけ。
ほーっとして、肩の力が抜けた。
そして恐る恐る振り返ると、かずにぃは厳しい顔で扉の方を見つめていた。
「オレ、先に出るから。後から出て来いよ」
かずにぃは素早く服を着て、部屋から出て行った。
暫くするとリビングの方からリョーコさんとかずにぃの話声が聞こえて来た。
「あれ?やっぱ、起きてるんじゃん。ほれ、今日の医学概論の講義ノートだよん」
「ん。サンキュ。わりぃな。ちょっと寝坊しちゃってさ。」
「代返しといたからね。ギャラは高いよぉ!」
「マックのバーガーでチャラな」
リョーコさんの笑い声を聞きながら、私も慌てて床から服を手繰り寄せようとして、身体を折り曲げた。
と、同時に下腹部に微かな痛みを感じた。
痛い……
痛むお腹を庇いながら服を着て、窓際に歩み寄った。
ゆっくりとブラインドを上げると今まで見えなかった月の光が差し込んできた。
そして今頃になって震えが止まらなくなり、その場にしゃがみ込んでしまった。
どうしてさっき、とっさにトオル君の名前を叫んでしまっていたんだろう。
リョーコさんが帰ってこなかったら今頃、どうなっていたんだろう。
そう考えるととめどなく涙が溢れて、月の輪郭は見る見るぼやけて朧月夜になっていった。
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「リョーコか……」
かずにぃは、私をぎゅっと抱きしめると上半身を起こし、ブランケットでそぉっとくるんだ。
「おーい!いるんでしょ。夕飯買って来てあげたぞぉ。一緒に食べよー」
ドアがノックされ、ドアノブに手を掛ける音がした。
ど、どうしよう。
かずにぃの私を抱きしめる手に力が入った。
その時、カチカチカチッと引っ掛かるような音がした。
「あれ?鍵が掛かってる?まだ、寝てんのかな?」
リョーコさんの声が、リビングの向こう側に去っていった。
そうだった。かずにぃ、鍵を掛けていたっけ。
ほーっとして、肩の力が抜けた。
そして恐る恐る振り返ると、かずにぃは厳しい顔で扉の方を見つめていた。
「オレ、先に出るから。後から出て来いよ」
かずにぃは素早く服を着て、部屋から出て行った。
暫くするとリビングの方からリョーコさんとかずにぃの話声が聞こえて来た。
「あれ?やっぱ、起きてるんじゃん。ほれ、今日の医学概論の講義ノートだよん」
「ん。サンキュ。わりぃな。ちょっと寝坊しちゃってさ。」
「代返しといたからね。ギャラは高いよぉ!」
「マックのバーガーでチャラな」
リョーコさんの笑い声を聞きながら、私も慌てて床から服を手繰り寄せようとして、身体を折り曲げた。
と、同時に下腹部に微かな痛みを感じた。
痛い……
痛むお腹を庇いながら服を着て、窓際に歩み寄った。
ゆっくりとブラインドを上げると今まで見えなかった月の光が差し込んできた。
そして今頃になって震えが止まらなくなり、その場にしゃがみ込んでしまった。
どうしてさっき、とっさにトオル君の名前を叫んでしまっていたんだろう。
リョーコさんが帰ってこなかったら今頃、どうなっていたんだろう。
そう考えるととめどなく涙が溢れて、月の輪郭は見る見るぼやけて朧月夜になっていった。
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