社に戻ると、秘書のミセス・マクダウェルが「まぁ!まぁ!まぁ~!」と感激の涙を流し、僕の帰りを喜んでくれた。
昨日用意されていたと言う、退院祝いの食事の殆どはキンケイドが平らげていた(らしい)。
「すみません……退院祝いの用意をしてくれていたなんて知らなくて、僕は……」
だが、誰も僕を責めるでも無く、退院を心から喜んでくれた。
「でも、ミセス・マクダウェル。さすがにこの花は部屋の外に飾ってくれるとありがたいのですが……」
部屋はむせ返るような大量の花で埋め尽くされていた。
その花に囲まれるように額縁には大きな僕の写真……。
(あのぉ、……僕、まだ生きてるんですけど……)
この微妙なコーディネートはやはりグレイスがやったらしい。
そして、サイドテーブルには数々の退院を祝う色取り取りのカードが立てて並べられ、オフィスは一層華やいで見えた。
ひと息つくと、ミセス・マクダウェルは早速いつも通り、分刻みの本日のスケジュールと、留守中の電話の伝言を読み上げ始めた。
「そうそう!Mr.フジエダが会見をなされた翌日から何度も『ササハラさん』と言う方からお電話を頂きましたわ」
「『ササハラ』から?!」
「ええ。『自分からも電話するけど、いつでも良いから電話を欲しい』って、タドタドしい英語でおっしゃってましたわ」
やっぱり、あの「佐々原」だ!
僕は懐かしくて、時差も忘れ、「5分だけ」とミセス・マクダウェルから時間を貰い、彼の自宅に電話してみた。
「はい?」
寝ぼけて出た佐々原の声に、僕は初めて日本がまだ朝の5時であることを理解し、かけ直すと言った。
「いいよ。もう、目ェ覚めたし。久し振りだな、トオル。見たよ、記者会見」
「え?!日本にも流れたのか?」
「うん。しっかし、すげぇよなぁ~。その年で、社長様で、しかも大学まで出てたなんて……。
っつーか、何で言わないんだよ!水臭いじゃんよ」
「……ごめん」
佐々原は僕のトーンダウンした言葉に恐縮したらしく、
「え?!いいよ。別にさ、謝んなくてもさ。でも、まぁ、お前がいないと、あの時間にお前目当てで電車に乗るジョシコーセーの数がめっきり減ってさ、俺も淋しいのよ……」
と、「淋しい」の論点を微妙にずらす所も佐々原らしい。
そんな相変わらずの佐々原節に、僕はくすりと笑っていたが、「女子高生」の言葉に、
(もしかしたら、佐々原からハルナの近況が聞けるかもしれない……)
と思い、さり気なく彼にハルナのことを尋ねてみた。
「え?!トオル、知らないのか?」
佐々原の思いも掛けない質問に、なぜだろうか……胸騒ぎを覚えた。
「知らないって、何を?」
佐々原は、「まじかよ……」と言うなり黙り込んでしまった。
「佐々原!?」
「……いや、俺も彼女の友達の皆川さん?っつーの?トモちゃんとか言ったっけ?
彼女からの又聞きなんだけどさぁ……」
僕は次第に痺れを切らして声を荒げてしまっていた。
「だから、何をだよ!」
「いや……、だから、その……理由までは知らないけど……つまり、彼女が……、ハルナちゃんが高校を退学したってことだよ……」
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昨日用意されていたと言う、退院祝いの食事の殆どはキンケイドが平らげていた(らしい)。
「すみません……退院祝いの用意をしてくれていたなんて知らなくて、僕は……」
だが、誰も僕を責めるでも無く、退院を心から喜んでくれた。
「でも、ミセス・マクダウェル。さすがにこの花は部屋の外に飾ってくれるとありがたいのですが……」
部屋はむせ返るような大量の花で埋め尽くされていた。
その花に囲まれるように額縁には大きな僕の写真……。
(あのぉ、……僕、まだ生きてるんですけど……)
この微妙なコーディネートはやはりグレイスがやったらしい。
そして、サイドテーブルには数々の退院を祝う色取り取りのカードが立てて並べられ、オフィスは一層華やいで見えた。
ひと息つくと、ミセス・マクダウェルは早速いつも通り、分刻みの本日のスケジュールと、留守中の電話の伝言を読み上げ始めた。
「そうそう!Mr.フジエダが会見をなされた翌日から何度も『ササハラさん』と言う方からお電話を頂きましたわ」
「『ササハラ』から?!」
「ええ。『自分からも電話するけど、いつでも良いから電話を欲しい』って、タドタドしい英語でおっしゃってましたわ」
やっぱり、あの「佐々原」だ!
僕は懐かしくて、時差も忘れ、「5分だけ」とミセス・マクダウェルから時間を貰い、彼の自宅に電話してみた。
「はい?」
寝ぼけて出た佐々原の声に、僕は初めて日本がまだ朝の5時であることを理解し、かけ直すと言った。
「いいよ。もう、目ェ覚めたし。久し振りだな、トオル。見たよ、記者会見」
「え?!日本にも流れたのか?」
「うん。しっかし、すげぇよなぁ~。その年で、社長様で、しかも大学まで出てたなんて……。
っつーか、何で言わないんだよ!水臭いじゃんよ」
「……ごめん」
佐々原は僕のトーンダウンした言葉に恐縮したらしく、
「え?!いいよ。別にさ、謝んなくてもさ。でも、まぁ、お前がいないと、あの時間にお前目当てで電車に乗るジョシコーセーの数がめっきり減ってさ、俺も淋しいのよ……」
と、「淋しい」の論点を微妙にずらす所も佐々原らしい。
そんな相変わらずの佐々原節に、僕はくすりと笑っていたが、「女子高生」の言葉に、
(もしかしたら、佐々原からハルナの近況が聞けるかもしれない……)
と思い、さり気なく彼にハルナのことを尋ねてみた。
「え?!トオル、知らないのか?」
佐々原の思いも掛けない質問に、なぜだろうか……胸騒ぎを覚えた。
「知らないって、何を?」
佐々原は、「まじかよ……」と言うなり黙り込んでしまった。
「佐々原!?」
「……いや、俺も彼女の友達の皆川さん?っつーの?トモちゃんとか言ったっけ?
彼女からの又聞きなんだけどさぁ……」
僕は次第に痺れを切らして声を荒げてしまっていた。
「だから、何をだよ!」
「いや……、だから、その……理由までは知らないけど……つまり、彼女が……、ハルナちゃんが高校を退学したってことだよ……」
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