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風は東楡の木通りから

クリスチャンフルート吹きパスピエの愛する音楽、猫たち、薔薇の毎日

Poetry Of Japan

2006-07-18 15:16:05 | 音楽
気がめいる。だるくて何にもしたくない。このところこんな気分を引きずってしまっている。

そこで気分転換。ジャズトランペッター大野俊三氏の「Poetry of Japan」を聞いている。このアルバムは日本の叙情歌が元になっている。

1.椰子の実      6・ふるさと
2.荒城の月      7.赤とんぼ
3.花         8.母さんの歌
4.この道       9.母
5.森が崎海岸    10. 月の砂漠

これらの曲がすべてジャズとして流れてくるのである。ものすご~くかっこいい!私のお勧めは「母さんの歌」。あの親しみのあるメロディーははっきり聞こえてくるのにもう叙情歌ではなく、「何のジャズの曲?」というように最初からジャズにしか聴こえない。アレンジはヘンリー・レイ&甲斐正人。アレンジしやすい曲調というのもあるだろうし、アレンジがすばらしいというのもある、そしてもともとの曲の持つ力というのもあるだろう。まったく違った「母さんの歌」を聞いてみて。

大野俊三さんはすごい人だなと思う。いつだったかビートたけしの番組「アンビリーバボー」でこの人の特集をしていた。その中で大野さんが交通事故で唇を切り、前歯を折るなどのトランペッターとしては致命的な危機に陥り、その後も扁桃がんの末期で手術するなど、強靭な精神力で見事困難をのりこえたのだった。

一時は放射線治療の副作用で食事もとれず衰弱していた大野さんに尊敬するサックス奏者ウエイン・ショーターからカーネギーホールでおこなわれるコンサートに出演依頼される。それが大きな励ましとなり、絶対安静だったにもかかわらず激痛に耐えながら、カーネギーホールに立ったという。

そんな大野さんの生演奏を聞けたのは次男が通っていたニューヨーク日本人学校でのことだった。よく日本の学校で、新学期になるとPTAの役員各部、文化部、厚生部、広報部があるが、ニューヨーク日本人学校でもそれは同じだった。大野さんのコンサートはこの文化部が主催だった。普通はこういった催しは保護者向けなのだが、ビッグアーティストの演奏を是非子供達にもということで保護者&中学生生徒に向けてこのコンサートが持たれたのだった。なんて贅沢な・・・・しかも日本人学校限定・・・。

コンサートでは大野さんの力強い音が響いた。上記の内容の曲からスタンダードジャズまでその音に魅了された。なんというか心を揺さぶられるような音。この人が困難を通して生み出してきた音なのか。

私はクリスチャンなので苦しみや困難があるとき神様のご計画の中でこうなったのだと思う。もちろん、そんな物分りが良いわけではないので「どうしてですか?」と泣きながら祈ることはよくあるが・・・・。

聖書にこんな言葉がある。
「わたしはあなたがたのためにたてている計画をよく知っているからだー主の御告げ。-それは災いではなくて、平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ。(旧約:エレミヤ記29章11節)

この方にはどんなご計画があるのだろう。大野さんの力強い演奏を聞きながら、そんな事を思った。もちろんこれは私の勝手な思いだ。

その次の年に私は文化部部長になってしまった・・。しかもその年の夏にはすぐに帰国。帰国直前に大野さんから自宅に電話があった。

「昨年コンサートをさせていただいた、ジャズトランペッターの大野俊三と申しますが・・・。」
「!!!(ええ~!!何で大野さんからうちに電話が来るの?!)」

一瞬ものすごくあせったが、私が文化部長だったのマンハッタンでのライブの宣伝のチラシを日本人学校生徒&保護者に配ってほしいという依頼だったのだ。帰国が近かったので申し訳なかったがもうひとりの文化部長さんにその件はお願いして私がお役に立てることはなかった。

大野さん声を聞いただけだったが、へりくだった、とてもやさしげで誠実な印象を受けた。(文化部長も役得だなぁ・・・。)

「Poetry of Japan」、今日はこれで3回目。今日も大野さんの演奏からパワーをいただいた。