池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつくフーテン上がり昭和男の記録

空間の歴史(10)

2019-01-11 10:49:26 | 日記
私はエスカレーターで地下にもぐり、高速道路をくぐって再び地上に出る。
歳末のショッピング街には人があふれている。
「どこか適当な飲食店に入って夕食をとり、それから電車に乗っても遅くない。どうせ妻は接待ミーティングで遅くなると言っていた」そんな気持ちでいたのだが、足はどんどんと前に進む。

五差路を横切って駅方面に向かう。人混みはさらに大きくなる。
久しぶりの池袋だが、懐かしいともうれしいとも思わない。ただ……
ただ、この焦れったいような感覚は何なのだ?

地下道に入る。自由な空間がまったくないほど、人だらけだ。
夕方になり、たしかにお腹は空いている。しかし、飲食店を物色するわけでもない。
長いミーティングの後で疲れていることも確かだ。しかし、休める場所を探すわけでもない。

ともかく、身体は前へ前へと進んでいく。
何度か人とぶつかりそうになりながら、ようやく西口ロータリーの前に出る。

そして、足は西口の歓楽街へ向かう。

原色の光に埋まった通りは、見たことがあるような、ないような。
それから先、ほとんど記憶がない。ネオンと冷気をシャワーのように浴びながら、あちらこちらを歩き回ったような気がする。

気が付くと、私は、しゃれたカフェの前にいた。
コメント
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