11月28日(火曜日)
事務所に出ると、デスクの前で中村弁護士が目を吊り上げて何かを考えています。
「おはよーすっす。何かありました?」あえてノー天気にたずねます。
「顧問先の○○株式会社の株主総会が明日あるでしょう?今日の朝一に、別件で司法書士のKさんが事務所にこられたとき、なんとなく話していて、登記との関係で重要なことに気づいた。ボスは、もう白浜に向けて出発してしまったから、連絡が取れない・・・・。現地に着くまでに知らせたいんだけど・・。」
この顧問先とは、ボスがご縁があって顧問になった、白浜で温泉旅館等を営まれている会社で、毎年この時期に現地白浜で株主総会が開かれます。ボスは、前日夕刻から現地に入るのが慣例になっています。
あわてて、宿泊先や携帯電話に連絡を取れるように手配。
問題は、中村弁護士が「重要なこと。」といった問題点の対処方法。
1ヶ月ほど前、この会社から、うちの事務所に対して定款(会社の自治規則を定めるもので、すべての会社で作成が義務付けられています)の見直しの依頼がありました。
ボスからの指示で、中村弁護士が丁寧な対照表を作り、事務所としてのアドバイスを盛り込みました。
その見直し作業の過程で、株式を一般に公開する公開会社から、定款で株式譲渡を制限する会社に変更することになったのが出発点です。
そこまでは良かったのですが、株式の譲渡制限などという株主にとって重要な変更については、株主総会での特別決議が必要で、かつ知れたる株主に対して、1ヶ月以上の期間をあけての、「通知」と「公告」(クラシックなスタイルとしては、新聞への掲載)が要求されています。
問題となる条文は、会社法219条1項。
これを素直に読めば、一定期間をあけての通知、公告をしてから譲渡制限の特別決議をするというようになる。何度読んでも。
でもこれは、現実には「???????」
「通知・公告しても株主総会で否決されたらどうするの?」
中村弁護士が出した結論は、「決議以降の特定の日を効力発生日として、譲渡制限の決議をする。承認されれば、それにしたがって通知・公告をする。そして一定期間が経過し、指定した特定の日が来れば、譲渡制限の効力が生じる」と読む、というもので、素人が読んでもそうとしか読めない。
私が、「そうとしか読めない。そう伝えよう。」というと、ここからが、実務家でプロの中村弁護士と私の差。
「うーん。私としては、確信はあるけど、どこを調べても、司法書士のK先生がいろいろ当たってくれても、これに対する解説などがないので、客観性がなー。プロとしてこの状況で顧問先に伝えることはできない。明日、朝一番で法務局に行って、確認してきますわ。」
「そうですね・・・。」というしかありません。
そのとき、司法書士のKさんから電話。
「いろいろあたりましたが、はっきりと答えてくれる人は居ませんでした。」こちらも相当のプロ意識。
「本当にこちらの都合で、振り回してしまって申し訳ない。一応の結論は出たけど、明日法務局に行って裏を取ってくるわ。9:30AMまでにボスに報告すれば株主総会には間に合うし、そのように段取りした。」と中村弁護士。
あわてたのは、Kさん。
「そんなん、司法書士の領域ですやん。私が明日、法務局に行って確認してお知らせします。」と。
「いや、こちらの問題なので、お願いすることはできない。私が行きます。」きっぱりと、中村弁護士は言い切り、丁寧にお礼を言って電話を切りました。
このやり取りを聞いていて、「どちらもプロやなー。私なんかまだまだや。一緒に仕事ができてよかった。」と思うしかありませんでした。
次の日、事務所につくなり、「どうでした?」私の間抜けた質問に、
「実務的にも、私たちの考えたとおりでよかったです。ボスには報告しておきました。」とさらりと中村弁護士は答えます。
「あ~それと。朝、法務局で話を聞いていると、少し遅れて、K先生が横で同じ話を質問していました。来るとは思っていたけれど・・・・。」
うちの中村弁護士もすごいけれど、K先生のプロ意識もすごい!
ちなみに、この司法書士の先生とは、まだ若いですが、大阪で開業されている小寺 竜吾さんといいます。
お問い合わせは、keiji@ono-lo.jp 私のアドレスまで。
尾埜合同法律事務所 http://www.ono-lo.jp