夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

出世魚 伊東深水筆 その10

2024-06-10 00:01:00 | 日本画
本日は伊東深水では珍しい?魚を描いた作品の紹介です。



呉須赤絵の作品と一緒に静物画を描いた作品は昭和初期には非常に多いようですが、伊東深水がどうして出世魚の作品を描いたかは不明です。どなたかに依頼されて描いた画題かもしれませんね。



出世魚 伊東深水筆 その10
紙本水彩額装 共シール付 タトウ+黄袋
東京美術倶楽部鑑定書付(NO023-0476) 令和5年3月9日
F12号程度 全体サイズ:横865*縦770 画サイズ:横604*縦504



本作品の題名は「出世魚」となっています。

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出世魚(しゅっせうお):稚魚から成魚までの成長段階において異なる名称を持つ魚。

江戸時代までは武士や学者には元服および出世などに際し改名する慣習があった。その慣習になぞらえ「成長に伴って出世するように名称が変わる魚」を出世魚(しゅっせうお)と呼びます。

それゆえ「縁起が良い魚」と解釈されて門出を祝う席など祝宴の料理に好んで使われます。

ブリ・スズキ・ボラなどが代表的同種の魚を異なる名称で呼ぶ理由にはいくつかありますが、大きさや外見の違い・生息域や生態の変化などがあります。

例えば、成長の早い魚類では、生まれた当年の魚、2年目の魚、3年目の魚…が、同じ時期に漁獲されると、それぞれ体の大きさが一回り以上異なるので、それらを大きさで明確に識別できることがあります。

この際、それらの用途や味など商品価値が異なる場合は同じ名称で呼ぶと混同してしまう恐れがあり、逆に年齢が違うだけで同種か別種か識別が難しい場合もあります。どちらの場合も漁業や流通の現場では同種か別種かを識別する必要があるとは限らないので便宜的に異なる名称で呼ぶ場合があるようです。

出世魚の場合、学術的な用途で通常用いられる標準和名は、その魚がいくつか持つ名称のうちの一つで成熟した時(成魚)の名称である場合が多いとされます。それ以外の成長段階の名前では、和名を決めるといった「名前の統一化」が行われていないので、それぞれの名称は地方によって異なる場合が多いようです。

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魚には詳しくないのですが、本作品に描かれているのは「イナダ」かな?



関西では「ハマチ」称されているようです。皿の大きさはおおよそ尺皿ですから、もう少し小さめの頃かな?



代表的な出世魚の「ブリ」は成長過程で名前が変わりますね。
モジャコ:6~7cmくらいまでのもの
ワカシ:15 cm くらいまでのもの
イナダ:40 cm くらい(夏に旨い)
ワラサ:60 cm くらい
ブリ:90 cm 以上(夏は味が落ちる)



使用されている食器は本ブログで幾度か紹介しているおなじみの呉須赤絵の作品(下記の写真参照)で、明時代末期を中心に福建省南部の漳州窯で焼成された色絵磁器です。



当方には本作品で描かれて龍を描いた作品もあります。補修跡はあるものの絵に描かれた漳州窯の作品より上等な作品?のようです。漳州窯の赤絵はちょっとした時代経過によって評価が大きく変わります。



魚の大きさはこの皿が一般的に尺皿(35センチ前後)なので、だいたい推定できますね。イナダやカンパチより前の段階の魚かもしれません。



本作品には東京美術倶楽部の鑑定証が添付されています。



共シールの印章の「深水」の白文朱方印は本ブログで紹介した「虫の音」の共箱に押印された印章と同一印章ですし、作品中の印章の白文朱長方印「此君亭」は他の作品にもよく押印されている印章です。

 

茶室への渡り廊下に額装の伊東深水の作品を幾つか展示してみました。



まだまだですが少しずつ判断力が付いてきている当方の伊東深水の作品蒐集です。












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