夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

阿蘭陀人之図 長崎絵肉筆 その2  

2019-11-04 00:01:00 | 掛け軸
母や義父の遺品の整理など郷里でも在京でも、身の回りの整理に追われています。その中に下記の作品があり、改めて整理しておきました。

真塗茶会席膳 五客揃(三十人揃いの内)
杉箱 母旧蔵品
幅360*奥行360*高さ40 杉箱入



日本橋にある漆器店より戦後間もない頃に購入した作品と推定されます。茶道における膳は真塗で脚がないものを基本とします。近年は懐石に使う漆器はその多くが木地ではない樹脂製、漆は日本漆ではく中国産の漆、グレードの高い作品で日本漆使用という表示でも仕上げのみとなり紛い物がグレード別に横行しています。そのような状況で明治期から戦後間もない頃の程度の高い本物の漆器は益々貴重さを増してくるでしょう。



まず本体が木製ではい樹脂製は論外、本体が木製でも漆が中国製では問題外、仕上げのみ日本製漆でも紛い物・・・。現代で木地から本体まで日本の自然産のものを作っているのは会津塗と浄法寺塗だけかもしれません。碗や膳を揃えるなら古いもの画価格的に手ごろでしょう。当方では我が家伝来の作品でほぼ揃います。大切にしたい日常の食器です。



さて浮世絵作品は当方の蒐集対象ではありませんが、時として面白そうな作品へは食指を動かすことがあります。本日はそのような趣旨(面白そうな作品なの)で購入した長崎絵の肉筆?の作品の紹介です。



阿蘭陀人之図 長崎絵肉筆 その2  
紙本着色軸装 軸先塗 合箱
全体サイズ:縦200*横550 画サイズ:縦1225*横405

 

長崎絵は江戸時代から明治時代にかけて描かれた浮世絵の様式のひとつ。版画が多く、幕末の鎖国時代に唯一開港されていた長崎出島のオランダ人、中国人などの外国人の風俗や港の風景を描いた浮世絵で、長崎版画ともいいます。



多くが長崎にある版元から出版され、当時オランダ人は出島屋敷に、中国人は唐人屋敷にのみ住んでいたので、主として、唐絵目利きをしている絵師が、オランダ人の実生活を知っており、室内の有様、食卓上の物まで写しています。



江戸絵と異なる点に、中国版画や西洋画から影響を強く受けた独特の雰囲気を持つことが挙げられます。延享(1744年-1748年)頃に始まり、明治時代まで続きました。



原画の主な絵師として川原慶賀が挙げられますが、彼以外の作品は、落款などがないため、作者不詳の場合が多く見られます。肉筆画を描いた絵師として、前述の川原慶賀のほか、慶賀の子、田口廬谷、城義隣、西苦楽、松井元仲らがいます。



長崎絵は当時、長崎にて土産品として売られており、素朴なものであり、長崎における大津絵のようなもので、本作品もそのような類の作品ではないかと推察されます。



素足の従者(植民地現地人)に日傘を持たせている長いキセルを持った異人の絵はよく見かける図柄ですが、定型化しており、版画のごとく簡略化されて描かれています。

本作品はキセルを持った異人のみが描かれていますが、顔の印影の描写のように明らかに西洋画の影響を受けた作行で、時代は江戸期から明治にかけての作と思われます。保存状態は良いほうではありませんが、今となっては貴重な作品です。



本作品を裏から透かしてみると補修の跡が多く見られます。作品の辿ってきた経緯がうかがい知れます。

なおこのように裏から透かして見るのは自分の所有する作品のみに許されます。お店の作品など他人の所蔵作品にこのようなことをするのはたいへん失礼にあたりますよ。



なお当方のブログに投稿されている他の作品には下記の作品があります。

阿蘭陀人之図 長崎絵肉筆 その1 
紙本着色軸装 軸先塗 合箱
全体サイズ:縦1560*横295 画サイズ:縦860*横265



この図の構図の元は下記の作品にあるように思われます。

参考作品
阿蘭陀人之図
木版筆彩 版元 針屋 43.5×32.4cm 池長孟コレクション



オランダ商館長カピタンに日傘(がさ)をさしかけるジャワ人と思われる従者(くろぼう)、ゴブレットとフラスコボトルが乗った盆をささげ持つ下級船員(またろす)を配する木版画があります。本図は、長崎版画の中でも最初期に位置する版元「針屋」から出版されています。長崎桜町にあった針屋は、長崎の大音寺の過去帳に「宝暦四閏(うるう)二月二十日桜町針屋与兵衛」と記されていることから、1754年以前から開業していたことわかっています。長崎の異国情趣豊かな風俗、文物を題材にした長崎版画は、幕末まで多くの版元から出版され、みやげ絵として長崎を訪れる人々に売りさばかれていました。



本日の作品は展示室の入り口飾って愉しんでします。


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