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時間の経過などにより掛け軸の作品では表具のメンテが必要となってきている作品があります。保管や取り扱いをきちんとしていればかなりの期間は大丈夫なのですが、気に入った作品の中で入手時に痛んでいた作品はどうしても改修などのメンテがしたくなります。
今回はその中から渡辺省亭の2作品を改装・メンテしましたので投稿します。
下記の作品はかなりいい表具材で特段大きな痛みはないものの、巻きシワや絵の具の剥離が気になっていた作品です。
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そこでこの作品は「締め直し」(既存の表具材で再表具)し、太巻の収納箱を誂えることにしました。
以下は改装後の写真です。
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双鶴図 渡辺省亭筆
絹本水墨着色軸装 軸先鹿骨 合箱→太巻二重箱
全体サイズ:縦1973*横646 画サイズ:縦1135*横503
→改装後 全体サイズ:縦1932*横635 画サイズ:縦1135*横498
改装費用
締め直し 現状の表具のままを使用 ¥30,000
太巻き二重箱(塗・こげ茶色ツヤあり)(2,35尺) ¥30,590
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よく描かかれていますが、胡粉の剥離などが進んでいます。進行を防止するには作品を太巻にして保管するのがひとつの手段となります。
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掛軸をぎりぎりに箱に巻く際にゆるんでいたりすると画材の剥離が進んでしまいます。
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いい表具材を使っていますので、締め直し(現在の表具材を使って再表具する)にしました。
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鶴の文様をあしらった表具材です。
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このように絵に似合う表具材をうまく使っていたようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/86/ee20d19f7974a8342efd28c4a48d19d1.jpg)
とくに胡粉で描いた作品は太巻きで保管し、絵の具の剥落を防止することが肝要です。
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もうひとつの作品は下記の作品ですが、こちらはやはり天地の表具材に皺がはいっていた作品で、天地に皺が入ると全体が巻きづらくなって、絵の部分まで皺が入るようになりますので、早めに天地材を交換し、同じく太巻使用にしました。天地材は美人画に合いそうな生地を使用しました。
下記の写真が改装前ですが、ちょっと写真では分かりにくいかもしれませんね。
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美人観桜之図 渡辺省亭筆 その15
絹本水墨着色軸装 軸先骨 合箱→太巻二重箱
全体サイズ:縦2010*横631 画サイズ:縦1097*横494
改装費用
天地交際 美人画にあう布柄選ぶ ¥10,000
太巻二重(塗・こげ茶色ツヤあり)+多当紙新調(2,30尺) ¥30,170
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このような作品は渡辺省亭が再評価されてきてからは、評価金額が高くなり入手が難しくなっています。
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巻いて保存する掛け軸は基本的に巻く部分の上部の天地から痛み出し、その天地にシワが発生することで本体部分まで巻シワが入るようになりますので、早めに天地材の交換をした方が良いとされます。
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傘の部分にほんの少しだけ桜の花びらを描くことで「観桜」を題材にした作品として表現しています。
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この作品も太巻にして保管しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/3a/31a0b59bb35b62912721143bb23462d4.jpg)
掛軸はスペースをとらない保管方法であり、直接絵を鑑賞できるというメリットがありますが、その分だけ維持や保管には注意点が必要ですね。
*毎月のように表具師さんから修復を依頼しておいた掛け軸らが届けられます。作品を確認して新たに判明した事柄を書面に記載して箱内に同封しておきます。
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作品の真贋も含めた作品の質もしかりながら、作品の保存・管理方法や作品の飾り方の是非で蒐集する者に問われます。骨董の蒐集は一定の期間だけの預かりもの、大切にすることが一番肝要ですね。