初代PSが所謂「勝ちハード」となったキッカケが「スクウェア参入」であった事は、今じゃ誰も否定しないだろう。
この衝撃的事件は業界に激変を巻き起こし、まずPSはそれまで良い勝負をしていたサターンを完全に退け、当面の敵に勝利。
更に後日登場する新たな敵・N64に対しても強烈過ぎる先制攻撃をカマしたことになり、将来的な敵にも殆ど戦わずして勝利した。
まぁN64を負けハードとするのは個人的にかなり疑問だが、順列を付けるなら仕方あるまい。
そして、スクウェア参入がPS勝利のキッカケなら、その約1年後に発表された
「エニックスPS参入・ドラクエ7はPSで発売」のニュースは、PS勝利の決定打だったと言えるだろう。
9割5分まで来ていた勝利の可能性に、更に10割5分の率が加算されたようなものだ。つまり勝率20割。無茶苦茶だが、そんな感じだった。
確定した、約束された、完全勝利。ドラクエ新作の進路確定は、それだけの破壊力があったのだ。
尤もスクウェア参入はともかく、ドラクエ7に関しては別に衝撃的でも意外でもなかった。
当時のエニックスはドラクエの扱いについて、良くも悪くも「勝ち馬に乗る」を公言しており、これもその流れに乗っただけ。
破竹の勢いで覇道を進んでいたPSにドラクエが来ない方が不自然であり、何らおかしくなりハードの移行だった。
安定であり当然の選択。エニックスの行動に突っ込む所は何もない。ユーザーも概ね歓迎ムードだった、と思う。
……のだが。
PS参入・ドラクエ7発表後、ほぼ同時に、エニックスは非常に妙な行動も取った。
「エニックス、サターンにも参入」。
……ぽかーん。は? 今なら色んなAAで彩れそうな表情を浮かべた覚えがある。
PSとサターンは、もちろん性能・特徴は違うが、同世代と言うことで似通った面もあり、マルチタイトルも多くあった。
ハード初期ならともかく、勝ち馬状態になったPSに参入したのに、わざわざサターンにも参入する理由が思い付かない。
ましてエニックスが得意とするRPG市場は、明らかにPSの方に偏っているのだ。
一体何だったんだろう。どんな判断だったんだろう。14年が経過した今でも分からないのである。
まぁエニックスは「単純に、開発陣からの要望が多かったからです」とコメントしていたが……正直嘘臭ぇ。
ドラクエ移籍の裏ではセガからも莫大な袖の下とにゃんにゃん接待を受けたから、義理を通す為に参入したんじゃねーの?
などとかなり失礼な邪推を今ではしている。だってホントに理由が分からんもん。開発者が? 本当にぃ?
もう時効ってことで誰かネット使って暴露してくんないかなぁ。個人的にはゲーム業界史上有数の大きな謎なんだよな……。
ともかく謎の動機でエニックスはサターンに参入したわけだが、発売したゲームを見ると、謎は更に深まるばかりだった。
「日本代表チームの監督になろう! ~世界初、サッカーRPG~」「忍ペンまん丸」など、正直理解不能のラインナップ。
まぁサッカーの方は、当時日本が初めてワールドカップ予選を突破したこともあり、10万本ちょいのプチヒットを記録したと記憶している。
ちなみにこの作品はセガとの共同開発で、ジャンルの特異性もあってなかなか興味深いと思ってる。機会があればやってみたいかも。
しかし「忍ペンまん丸」はマジでトチ狂ったんじゃないかと当時思った。
サターンと言えばただでさえ濃いユーザーが集った暑苦しいハードであり、まして時期はPSに負けた敗走のタイミング。
こんな時に明らかに子供向けなキャラクターゲームを出して、一体誰が買うねん。一体誰に売りたいねん。
当然ながら全く売れなかった。ちなみにゲームの出来自体も酷かったらしく、ファミ通クロレビでは低い評価だった。
内容にも売り方にもやる気が見られない。これが「開発者の要望」に答えたハード選択だったのか?
で、「七ツ風の島物語」である。比類なきエニックスがサターンで発売したゲームの一つである。
……言うまでもないが、全然売れず、歴史の彼方に消え去ったタイトルである。
その後続編やリメイクの話も一切聞かない。完全に「死んだ」タイトルと言えるだろう。
売れないゲームの宿命として値崩れし、俺は発売から1年後くらいに新品980円くらいで購入した……ような記憶がある。
それを十数年の時を経て、今回開封した。ちゃんとビニールに包まれた新品だったから、ちょっと勿体無かったかもしれない。
まいいや。ぴらぴらのビニールに、十数年の重みを感じた。あの頃な……。
今作は、「監督・雨宮慶太」を前面に出したゲームになっている。
俺は雨宮氏の事はよく知らないんだが、特撮方面の大御所(?)らしい。ゲーム業界でも何度か仕事しているようだ。
だがここまで氏がメインで携わったゲームは恐らく他にはないだろう。雨宮ファン垂涎の作品だ。多分。
して、その作風は……良いのか悪いのか、「高尚」な感じだった。いや、敢えて悪いと言わせてもらおう。
俺はなんちゅーか、自分の感性が安っぽいと思っている。
ガキの頃からゲー漫画ニメといった文化にばっかり触れてきて、誰かに誇れるような趣味を持ったことは一度としてない。
その事に全く後悔がない……と言えば、嘘になる。人前でウンチクを語って感心されるような知識の一つや二つ、持ってみたかった。
でも結局そういうものに興味が持てず、今も昔もあまり変わっていない。残念ながら、俺はこういう安っぽい奴なのだろう。しゃーない。
懐石料理や老舗の和菓子より、マクド屋バーガーやポテチが好き。それで満足ならまぁいいじゃないか。そんな風に今じゃ捉えている。
そんな俺にとって、雨宮氏の作品、今作七ツ風の島物語は、高尚な作品と見える。
絵本チックな絵柄と世界設定、キャラクターは売れ線を全く排除した、雨宮感性溢れる奇怪な者達揃い。
例えば、プレーヤーが動かす主人公は「竜人」である。竜が入ってることで辛うじて売れ線を意識しているように見えるが……そうでもない。
一応緑の鱗に覆われ、羽や尻尾が生えたドラゴンな風貌ではあるのだが、顔や体型は40~50台のオッサンそのもので、カッコ良さなど皆無。
主人公からしてこれ……いや主人公は「竜」が入ってるだけまだマシな方だ。
他のキャラはそれこそ媚び要素一切なく、ただただ雨宮氏の感性に任せた奇怪な容姿と動きをする。
もちろん背景や世界設定もだ。ちなみにBGMは一切なく、環境音と効果音のみ。
全ては雨宮氏の判断なのだろう。氏が良いと思い、氏が表現したいと思ったのが、この世界であり、このゲームなのだ。
だがこれは、油でギトギトした低俗(敢えてこう言おう)文化にばかり浸ってきた俺に魅力的なものではない。
剣と魔法がない。美少女がいない。物語のどんでん返しがない。独りよがりな神がいない。などなど。
同時に、これは決して売れ線ではない。別に俺の好みが売れ線だと言うわけではないが、これが売れ線ではないことは断言できる。
反論できる人も多分いないだろう。実際売れてないし。
別に、これが悪いと言うわけではない。何をしようが人の勝手だ。クリエイターは基本好きなように暴れればいいのだ。
だが最終的にそれが受け手に渡り、賛否を受け、順列を付けられるのもまた当然のことだ。
どんだけ高尚だろうと、丁寧に作ってあろうと、低俗な俺から見りゃ、わざわざ売れ線を離れた独りよがりにしか見えない。
俺の低俗な絶対価値観は「面白いかどうか」だ。少なくとも見てくれにおいて、今作はそれを自分から避けてるようにしか見えない。
パッケージやタイトルの時点でそう思っていたが、ゲームをプレーしてみても、やはり印象は変わらなかった。
残念である。十数年分、地味に期待しちゃいたんだけどな。はぁ。
見てくれは置いておいて、ゲーム内容。
これは割と単純な、「フラグ立て謎解きアドベンチャー」である。ゲームシステムに奇怪な面は殆ど見られなかった。
主人公はタイトルにある「七ツ風の島」を探検し、アイテムを探したりイベントを起こしたりし、物語を進めていく。
その物語は「七ツ風の島物語」という本に自動で記され、もちろんプレーヤーが後で読む事が可能。
物語の内容はプレーヤーの行動次第で変わってくるので、つまりプレーヤーの数だけ七ツ風の物語が存在する。
その自由度が今作の売りであると思う。独特の世界を自由に動き回り、それが本になる。七ツ風の島物語。
……んが、作風については「俺の好みに合わない」でいいとしても、ゲーム内容は明確に「ダメ」だった。
ここが良ければ「ゲーム」として楽しめたのに、それが出来なかった。雨宮さん、失格。これじゃダメ。
まず何より、マップ(七ツ風の島)が広すぎるのが大問題。
今作は雰囲気を重視してか、ゲームは全編完全横スクロール視点で進み、また画面が初代ゼルダ風に区分けされている。
それは別にいいのだが、とにかくマップが広い。いちいち広い。無意味なまでに広い。
そのくせに、主人公の移動速度が矢鱈と遅い。だから目的地到着までにいちいち時間がかかる。非常に面倒臭い。
主人公はオッサンらしく、ドタバタとどん臭い移動をする。また画面切り替え時にはその都度後ろを確かめるような動きが挿入される。
そういった雰囲気を重視するのは、この作品なら当然なのだろう。だがそれがゲーム進行のとんでもない足枷になってるとあっちゃぁ話にならない。
ゲーム序盤は、まだマップが狭く、行ける部分が少ないので、不満は殆ど感じなかった。
しかし物語を進めるとマップはどんどん広がり、イベントのフラグもそれに合わせて複雑になっていく。
なのに移動は終始徒歩(一応遅いダッシュあり)のみ。瞬間移動は「スタート地点に戻れる」アイテムのみで、ワープ的なものはない。
つまり島の最深部に行くなら毎回そこまで徒歩で行かねばならないのだ。ちなみにセーブはスタート地点でしか出来ない。
一体何を考えてこんな糞面倒な移動システムを放置したのか。90年代としてもあまりにも酷い。
またこれに絡むのが、フラグの根拠が意味不明なこと。
例えば「アイテムAはキャラBが持ってるよ」という情報を仕入れたので、キャラBを探すことにした。
しかしBがどこにいるかは誰も教えてくれない。じゃあどうやって? 自分の足で探すしかない。
そう、広大な七ツ風の島を、だ。全部の画面を一つ一つ虱潰しに。苦行以外の何物でもな。だがゲーム終盤はこればっかり。
途中までは自力プレーに拘っていたが、このあんまりなマップと移動・フラグ立てにホトホトうんざりし、終盤は攻略サイトに頼った。
しかし負けとは思わない。俺はこんなもんに付き合うほど酔狂ではない。プレーヤーを何だと思ってる。ゲームを何だと思ってる。
身勝手な感性を押し付け、ゲームをこんな苦行に仕立て上げやがって。何なんだ一体。はぁ。
まぁ本来、今作は俺のようにゲームゲーム言う奴がプレーするものじゃなく、それこそドン臭い移動も「味」として受け入れられる人向けなのだろう。
だがそれを考慮しても、終盤の無茶苦茶さは度を超えていると思う。あれを素直に楽しめる人がいるのか? ……俺には理解できない。
雰囲気ゲーとやらの言葉に甘えていい加減に作ってるとしか思えん。あかんだろ、このゲーム。
次に、メッセージが妙に抽象的で、意味が分かりにくいこと。
今作は基本的に誰も喋らず、キャラ同士が会話してもそれが3人称の説明文となって画面に表示される。
この説明文が、何とも尻切れと言うか中途半端と言うか、非常に分かり難い。日本語としておかしいと思えるものも多い。
これもゲームの雰囲気作りの一貫なのだろうが、それでゲーム進行に支障が出てはいかんだろう。
マップや移動と同じ不満をここでも抱いた。今作は明らかに雰囲気を重視し、ゲームを蔑ろにしている。
アイテム使用や仲間の入れ替えをするインターフェースも非常にいい加減。
サターンの数多いボタンを全く活用してないダメっぷりに笑ってしまった。これがプロの仕事か。あり得んわ。
主人公には3人の仲間がいて、その特殊能力をゲーム進行に色々使うことになるんだが、
説明書には「仲間はNPCやアイテムではありません」とか書いてあるのに、ゲーム中での役割はアイテムそのもの。
偉そうなことを言うならその表現をゲームに盛り込めばいいのに、結局アイテム以上のことは何もできてない。
仲間の入れ替えは頻繁にする必要があるのに、それが無意味に煩わしくなってるし、部屋中では出来ないなどの制約はあるし……。
そのくせ仲間はきちんと主人公の後を付いてくるという、雰囲気作りの表現には気合が入っていた。
その気合を少しはゲームシステムに向けられなかったのか。力の入れ様が歪すぎる。
ちなみに、後ろに付いて来てくれるのは嬉しいんだが、3人の仲間は皆何故か足跡が異様に煩く、耳障りだった。
序盤は気にならなかったが、終盤の広大な島散策時には正直「もうお前ら付いてくんな!」とまで思ってしまった。
はぁ……。
売りになっている、プレーヤーの行動次第で本の中身が変わるシステムも、ぶっちゃけ殆ど意味がない。
イベントをクリアーするまでの時間やそこに至るまでの移動の記述が変わるだけで、本筋に変化は殆どない。
「〇〇するのに〇秒かかった」の秒数がプレーヤーごとに違うからって、それを「プレーヤーだけの物語」とは言わんだろう。
これは完全に誇大広告である。できもしないことを偉そうに誇ってんじゃねーよ。
とまぁ、今作は「ゲーム」としてはハッキリ言ってダメダメである。
そして俺は基本「ゲーム」を求めてるんだから、合うわけがなかったのだ。俺は拒絶されてたんだよ。
人を選ぶエンターテインメント。別にそれを否定する気はないが……今作の方向性はなぁ。うーん。
貶してばっかだとアレなんで、褒めるとこも。
合う合わないを除外すれば、世界設定は凝っている。入念に丹念に雨宮氏の世界を表現しようとしたことが伺える。
特に、キャラのアニメーションがどいつもこいつも素晴らしい。ウニウニ気持ち良く動く、ゲームの至宝・ドット絵アニメーション。
前述した、サターン参入時の「開発者の要望」とは、このアニメーションだったのではないかと思う。
この表現がPSで不可能なのかどうかは分からんが、2Dドット絵がサターンの方が得意だったのは確かなはずだ。
ドット絵アニメを見て良い気分になれたのは久しぶりだったので嬉しくなった。これぞ清く正しいノスタルジー。はぁ。
そして、そんなウニウニ動く多彩なキャラを見ていると……前言と矛盾するようだが、この世界が徐々に魅力的に見えてくるのだ。
確かに奇怪な奴ばかりだが、周囲もそんな奴ばかりなので、1周回って違和感がない。
そこに流麗なアニメーションが入り、「どこか愛嬌がある」という印象に変化していく。
プレーヤーには「風獣紀」という、今作に登場するキャラやアイテムを網羅した辞典のような本が与えられている。
これを読むと更にキャラ設定が細かく分かり、ますます愛着が増す……は言いすぎか。
ちなみにこの本の記述は謎解き上でも重要で、読まなきゃゲームを進められないこともある。
油ギトギトなものを好む俺だが、「通」な料理も決して不味いわけではなかった。そりゃそうか、ちゃんと作られた料理なんだもんな。
ゲームをクリアーする段階では、不満はゲームシステム方面に偏っており、世界設定には寧ろ好感を持っていたのは自分でも意外だった。
それでも「大好き」と言えるほどではないが、プレー前印象を考えれば十分な成果だ。
雨宮氏の世界、悪くない。……売れる作風とは今でも全く思わんけどね。
ゲーム中に幾つかムービーが挟まれるのだが、時代を考えるとかなりレベルが高いと思った。
CGかクレイアニメか俺には判断つかないんだが、雨宮世界を違和感なく表現し、ボリュームもそこそこあった。
当時ムービーと言えばスクウェアだったが、エニックスもこれだけのことはやれたんだね。
……問題はそれが無名なサターンゲーだったから、誰にも知られず消えちまったことかな……。
世界やキャラは奇異だが、物語はそうではなく、寧ろ割とフツーだった。いや安っぽい? あまり心が動かなかった。
端的に言うと「世界に絶望したキャラが暴走し、それを主人公が止める」話なのだが……もう使い古されてるよな。
そもそも個人的には「あの程度」の絶望で暴走するキャラは、単なる甘ったれに見えて仕方がない。
あの程度の絶望なら俺だってしょっちゅう感じてるよ。現代現実のどこにでも転がってる、虚しい心である。
なのにあのキャラは「暴走する」能力を持ち、またそれを存分に行使し、挙句暖かい仲間に救ってもらえた。
サイコーやんけ。どんだけ恵まれてるねん。俺なんかな、俺なんかな……!! 畜生、畜生。
作中の悲劇に共感するどころか、歪んだリア充っぷりに嫉妬してしまった。もう俺死んだ方がいいんか。はぁ。
特異な世界観を持つ雨宮氏も、語る物はごく有り触れた、もっと言えば陳腐な内容だったことは残念である。
俺が驚愕し、新たな世界に目覚めるよな強烈な価値を示してほしかった。ま、こんなもんなのかのう……。
ふぅ。
今作には「初回限定版」特典として、雨宮氏がデザインした原画を見られるCDがディスク2として同梱されている。
……もちろん通常版が出回ることは永遠になかったわけだが、それは言うまい。はぁ。
ディスク2はゲームに登場する殆どの原画が収録されているので、好きな人にはたまらんだろう。
俺はアニメーションやムービーが気に入っただけだから、あまり嬉しくなかったが。そっちは収録されてないし。
あと何故か項目毎に「〇〇.BMP」とファイルの拡張子が入ってるのは笑った。そんなん表示するなよ。
ディスクにゃ「プレミアムCD」「PREMIUM CD」と何故か二表記で国際的に書いてるし。わけの分からん拘りだ。
テキトーに眺めてこの世界から離れた。七ツ風の島、か。「ツ」が片仮名なとこに注意ね。あはは……。
今回調べてみたんだが、結局エニックスがサターンで発売したゲームは
・日本代表チームの監督になろう!
・忍ペンまん丸
・RIVEN
・七ツ風の島物語
のたった4本しかなかった。「RIVEN」は洋ゲーの移植だから、実質は3本しかない。
ますます謎が深まった。一体何だったんだろう。個人的な90年代ゲーム業界の引っかかりとして、これからもたまに悩ませてくれそうだ。
まぁ当のエニックスにとっちゃ、今じゃ心底どうでもいい過去なんだろうけどね。
だがこの4本の中じゃ、今作が一番作家性が強く、制作者に望まれた作品だっただろう。ちなみに売上はサッカーがブッチギリだ。
エニックスがサターンに参入した意義があるとすれば、今作しかない。俺は長い時を経て、それをプレーしたのだ。ふはは。
この意味不明な自己満足を今回のプレーの報酬としておこう。
90年代のやり残しをまた一つ遂げられたしな……やれやれだ。
あれから随分時間が経ち、エニックスはスクウェアと合併までしたものの、かつての勢いはもうない。
もう今作のような「売れ線でない」ゲームを出す余裕はどこにもないだろう。そしてそれは正しいと思う。
今やスクエニどころか日本ゲーム業界全体が危機的状況にある。実験的でニッチ向けな作品なんて言語道断だ。
必要なのは、売れるゲーム。必要なのは、金。それで当然だ。それが面白さを追求する道なら、いちユーザーとして何も不満はない。
……けど、いちゲーオタとしてはやっぱ寂しいなと思う。本当に勝手だよな。
考えてみれば、こんな主流を外れた作品が発売され、全然売れず、それを入手した数少ないユーザーからも叩かれるってのは、
ある意味幸せな状況かもしれん。まだゲーム業界にそれを許容する余裕があったとも解釈できるからな。
そりゃ今でも駄作は作られてるが、こういう端から売れ線を狙わず、かつ金と気合の入ったタイプはないだろう。
90年代の幸せな記憶。このゲームにすらこんな事を感じてしまう。現状。ああ現実。
友達と仲良く平和に暮らせる七ツ風の島とやらはどこにあるんだろう。
ギスギスギチギチクラクラトボトボこの現実。
俺も絶望で暴走を引き起こせる特殊能力が欲しいよ。そのまま暴れてりゃ、誰かが助けてくれるんだろ?
心に吹き荒ぶ黒い風を追い払ってくれる風使いの竜人はどこにもいない。
はぁ……。
拍手を送る
この衝撃的事件は業界に激変を巻き起こし、まずPSはそれまで良い勝負をしていたサターンを完全に退け、当面の敵に勝利。
更に後日登場する新たな敵・N64に対しても強烈過ぎる先制攻撃をカマしたことになり、将来的な敵にも殆ど戦わずして勝利した。
まぁN64を負けハードとするのは個人的にかなり疑問だが、順列を付けるなら仕方あるまい。
そして、スクウェア参入がPS勝利のキッカケなら、その約1年後に発表された
「エニックスPS参入・ドラクエ7はPSで発売」のニュースは、PS勝利の決定打だったと言えるだろう。
9割5分まで来ていた勝利の可能性に、更に10割5分の率が加算されたようなものだ。つまり勝率20割。無茶苦茶だが、そんな感じだった。
確定した、約束された、完全勝利。ドラクエ新作の進路確定は、それだけの破壊力があったのだ。
尤もスクウェア参入はともかく、ドラクエ7に関しては別に衝撃的でも意外でもなかった。
当時のエニックスはドラクエの扱いについて、良くも悪くも「勝ち馬に乗る」を公言しており、これもその流れに乗っただけ。
破竹の勢いで覇道を進んでいたPSにドラクエが来ない方が不自然であり、何らおかしくなりハードの移行だった。
安定であり当然の選択。エニックスの行動に突っ込む所は何もない。ユーザーも概ね歓迎ムードだった、と思う。
……のだが。
PS参入・ドラクエ7発表後、ほぼ同時に、エニックスは非常に妙な行動も取った。
「エニックス、サターンにも参入」。
……ぽかーん。は? 今なら色んなAAで彩れそうな表情を浮かべた覚えがある。
PSとサターンは、もちろん性能・特徴は違うが、同世代と言うことで似通った面もあり、マルチタイトルも多くあった。
ハード初期ならともかく、勝ち馬状態になったPSに参入したのに、わざわざサターンにも参入する理由が思い付かない。
ましてエニックスが得意とするRPG市場は、明らかにPSの方に偏っているのだ。
一体何だったんだろう。どんな判断だったんだろう。14年が経過した今でも分からないのである。
まぁエニックスは「単純に、開発陣からの要望が多かったからです」とコメントしていたが……正直嘘臭ぇ。
ドラクエ移籍の裏ではセガからも莫大な袖の下とにゃんにゃん接待を受けたから、義理を通す為に参入したんじゃねーの?
などとかなり失礼な邪推を今ではしている。だってホントに理由が分からんもん。開発者が? 本当にぃ?
もう時効ってことで誰かネット使って暴露してくんないかなぁ。個人的にはゲーム業界史上有数の大きな謎なんだよな……。
ともかく謎の動機でエニックスはサターンに参入したわけだが、発売したゲームを見ると、謎は更に深まるばかりだった。
「日本代表チームの監督になろう! ~世界初、サッカーRPG~」「忍ペンまん丸」など、正直理解不能のラインナップ。
まぁサッカーの方は、当時日本が初めてワールドカップ予選を突破したこともあり、10万本ちょいのプチヒットを記録したと記憶している。
ちなみにこの作品はセガとの共同開発で、ジャンルの特異性もあってなかなか興味深いと思ってる。機会があればやってみたいかも。
しかし「忍ペンまん丸」はマジでトチ狂ったんじゃないかと当時思った。
サターンと言えばただでさえ濃いユーザーが集った暑苦しいハードであり、まして時期はPSに負けた敗走のタイミング。
こんな時に明らかに子供向けなキャラクターゲームを出して、一体誰が買うねん。一体誰に売りたいねん。
当然ながら全く売れなかった。ちなみにゲームの出来自体も酷かったらしく、ファミ通クロレビでは低い評価だった。
内容にも売り方にもやる気が見られない。これが「開発者の要望」に答えたハード選択だったのか?
で、「七ツ風の島物語」である。比類なきエニックスがサターンで発売したゲームの一つである。
……言うまでもないが、全然売れず、歴史の彼方に消え去ったタイトルである。
その後続編やリメイクの話も一切聞かない。完全に「死んだ」タイトルと言えるだろう。
売れないゲームの宿命として値崩れし、俺は発売から1年後くらいに新品980円くらいで購入した……ような記憶がある。
それを十数年の時を経て、今回開封した。ちゃんとビニールに包まれた新品だったから、ちょっと勿体無かったかもしれない。
まいいや。ぴらぴらのビニールに、十数年の重みを感じた。あの頃な……。
今作は、「監督・雨宮慶太」を前面に出したゲームになっている。
俺は雨宮氏の事はよく知らないんだが、特撮方面の大御所(?)らしい。ゲーム業界でも何度か仕事しているようだ。
だがここまで氏がメインで携わったゲームは恐らく他にはないだろう。雨宮ファン垂涎の作品だ。多分。
して、その作風は……良いのか悪いのか、「高尚」な感じだった。いや、敢えて悪いと言わせてもらおう。
俺はなんちゅーか、自分の感性が安っぽいと思っている。
ガキの頃からゲー漫画ニメといった文化にばっかり触れてきて、誰かに誇れるような趣味を持ったことは一度としてない。
その事に全く後悔がない……と言えば、嘘になる。人前でウンチクを語って感心されるような知識の一つや二つ、持ってみたかった。
でも結局そういうものに興味が持てず、今も昔もあまり変わっていない。残念ながら、俺はこういう安っぽい奴なのだろう。しゃーない。
懐石料理や老舗の和菓子より、マクド屋バーガーやポテチが好き。それで満足ならまぁいいじゃないか。そんな風に今じゃ捉えている。
そんな俺にとって、雨宮氏の作品、今作七ツ風の島物語は、高尚な作品と見える。
絵本チックな絵柄と世界設定、キャラクターは売れ線を全く排除した、雨宮感性溢れる奇怪な者達揃い。
例えば、プレーヤーが動かす主人公は「竜人」である。竜が入ってることで辛うじて売れ線を意識しているように見えるが……そうでもない。
一応緑の鱗に覆われ、羽や尻尾が生えたドラゴンな風貌ではあるのだが、顔や体型は40~50台のオッサンそのもので、カッコ良さなど皆無。
主人公からしてこれ……いや主人公は「竜」が入ってるだけまだマシな方だ。
他のキャラはそれこそ媚び要素一切なく、ただただ雨宮氏の感性に任せた奇怪な容姿と動きをする。
もちろん背景や世界設定もだ。ちなみにBGMは一切なく、環境音と効果音のみ。
全ては雨宮氏の判断なのだろう。氏が良いと思い、氏が表現したいと思ったのが、この世界であり、このゲームなのだ。
だがこれは、油でギトギトした低俗(敢えてこう言おう)文化にばかり浸ってきた俺に魅力的なものではない。
剣と魔法がない。美少女がいない。物語のどんでん返しがない。独りよがりな神がいない。などなど。
同時に、これは決して売れ線ではない。別に俺の好みが売れ線だと言うわけではないが、これが売れ線ではないことは断言できる。
反論できる人も多分いないだろう。実際売れてないし。
別に、これが悪いと言うわけではない。何をしようが人の勝手だ。クリエイターは基本好きなように暴れればいいのだ。
だが最終的にそれが受け手に渡り、賛否を受け、順列を付けられるのもまた当然のことだ。
どんだけ高尚だろうと、丁寧に作ってあろうと、低俗な俺から見りゃ、わざわざ売れ線を離れた独りよがりにしか見えない。
俺の低俗な絶対価値観は「面白いかどうか」だ。少なくとも見てくれにおいて、今作はそれを自分から避けてるようにしか見えない。
パッケージやタイトルの時点でそう思っていたが、ゲームをプレーしてみても、やはり印象は変わらなかった。
残念である。十数年分、地味に期待しちゃいたんだけどな。はぁ。
見てくれは置いておいて、ゲーム内容。
これは割と単純な、「フラグ立て謎解きアドベンチャー」である。ゲームシステムに奇怪な面は殆ど見られなかった。
主人公はタイトルにある「七ツ風の島」を探検し、アイテムを探したりイベントを起こしたりし、物語を進めていく。
その物語は「七ツ風の島物語」という本に自動で記され、もちろんプレーヤーが後で読む事が可能。
物語の内容はプレーヤーの行動次第で変わってくるので、つまりプレーヤーの数だけ七ツ風の物語が存在する。
その自由度が今作の売りであると思う。独特の世界を自由に動き回り、それが本になる。七ツ風の島物語。
……んが、作風については「俺の好みに合わない」でいいとしても、ゲーム内容は明確に「ダメ」だった。
ここが良ければ「ゲーム」として楽しめたのに、それが出来なかった。雨宮さん、失格。これじゃダメ。
まず何より、マップ(七ツ風の島)が広すぎるのが大問題。
今作は雰囲気を重視してか、ゲームは全編完全横スクロール視点で進み、また画面が初代ゼルダ風に区分けされている。
それは別にいいのだが、とにかくマップが広い。いちいち広い。無意味なまでに広い。
そのくせに、主人公の移動速度が矢鱈と遅い。だから目的地到着までにいちいち時間がかかる。非常に面倒臭い。
主人公はオッサンらしく、ドタバタとどん臭い移動をする。また画面切り替え時にはその都度後ろを確かめるような動きが挿入される。
そういった雰囲気を重視するのは、この作品なら当然なのだろう。だがそれがゲーム進行のとんでもない足枷になってるとあっちゃぁ話にならない。
ゲーム序盤は、まだマップが狭く、行ける部分が少ないので、不満は殆ど感じなかった。
しかし物語を進めるとマップはどんどん広がり、イベントのフラグもそれに合わせて複雑になっていく。
なのに移動は終始徒歩(一応遅いダッシュあり)のみ。瞬間移動は「スタート地点に戻れる」アイテムのみで、ワープ的なものはない。
つまり島の最深部に行くなら毎回そこまで徒歩で行かねばならないのだ。ちなみにセーブはスタート地点でしか出来ない。
一体何を考えてこんな糞面倒な移動システムを放置したのか。90年代としてもあまりにも酷い。
またこれに絡むのが、フラグの根拠が意味不明なこと。
例えば「アイテムAはキャラBが持ってるよ」という情報を仕入れたので、キャラBを探すことにした。
しかしBがどこにいるかは誰も教えてくれない。じゃあどうやって? 自分の足で探すしかない。
そう、広大な七ツ風の島を、だ。全部の画面を一つ一つ虱潰しに。苦行以外の何物でもな。だがゲーム終盤はこればっかり。
途中までは自力プレーに拘っていたが、このあんまりなマップと移動・フラグ立てにホトホトうんざりし、終盤は攻略サイトに頼った。
しかし負けとは思わない。俺はこんなもんに付き合うほど酔狂ではない。プレーヤーを何だと思ってる。ゲームを何だと思ってる。
身勝手な感性を押し付け、ゲームをこんな苦行に仕立て上げやがって。何なんだ一体。はぁ。
まぁ本来、今作は俺のようにゲームゲーム言う奴がプレーするものじゃなく、それこそドン臭い移動も「味」として受け入れられる人向けなのだろう。
だがそれを考慮しても、終盤の無茶苦茶さは度を超えていると思う。あれを素直に楽しめる人がいるのか? ……俺には理解できない。
雰囲気ゲーとやらの言葉に甘えていい加減に作ってるとしか思えん。あかんだろ、このゲーム。
次に、メッセージが妙に抽象的で、意味が分かりにくいこと。
今作は基本的に誰も喋らず、キャラ同士が会話してもそれが3人称の説明文となって画面に表示される。
この説明文が、何とも尻切れと言うか中途半端と言うか、非常に分かり難い。日本語としておかしいと思えるものも多い。
これもゲームの雰囲気作りの一貫なのだろうが、それでゲーム進行に支障が出てはいかんだろう。
マップや移動と同じ不満をここでも抱いた。今作は明らかに雰囲気を重視し、ゲームを蔑ろにしている。
アイテム使用や仲間の入れ替えをするインターフェースも非常にいい加減。
サターンの数多いボタンを全く活用してないダメっぷりに笑ってしまった。これがプロの仕事か。あり得んわ。
主人公には3人の仲間がいて、その特殊能力をゲーム進行に色々使うことになるんだが、
説明書には「仲間はNPCやアイテムではありません」とか書いてあるのに、ゲーム中での役割はアイテムそのもの。
偉そうなことを言うならその表現をゲームに盛り込めばいいのに、結局アイテム以上のことは何もできてない。
仲間の入れ替えは頻繁にする必要があるのに、それが無意味に煩わしくなってるし、部屋中では出来ないなどの制約はあるし……。
そのくせ仲間はきちんと主人公の後を付いてくるという、雰囲気作りの表現には気合が入っていた。
その気合を少しはゲームシステムに向けられなかったのか。力の入れ様が歪すぎる。
ちなみに、後ろに付いて来てくれるのは嬉しいんだが、3人の仲間は皆何故か足跡が異様に煩く、耳障りだった。
序盤は気にならなかったが、終盤の広大な島散策時には正直「もうお前ら付いてくんな!」とまで思ってしまった。
はぁ……。
売りになっている、プレーヤーの行動次第で本の中身が変わるシステムも、ぶっちゃけ殆ど意味がない。
イベントをクリアーするまでの時間やそこに至るまでの移動の記述が変わるだけで、本筋に変化は殆どない。
「〇〇するのに〇秒かかった」の秒数がプレーヤーごとに違うからって、それを「プレーヤーだけの物語」とは言わんだろう。
これは完全に誇大広告である。できもしないことを偉そうに誇ってんじゃねーよ。
とまぁ、今作は「ゲーム」としてはハッキリ言ってダメダメである。
そして俺は基本「ゲーム」を求めてるんだから、合うわけがなかったのだ。俺は拒絶されてたんだよ。
人を選ぶエンターテインメント。別にそれを否定する気はないが……今作の方向性はなぁ。うーん。
貶してばっかだとアレなんで、褒めるとこも。
合う合わないを除外すれば、世界設定は凝っている。入念に丹念に雨宮氏の世界を表現しようとしたことが伺える。
特に、キャラのアニメーションがどいつもこいつも素晴らしい。ウニウニ気持ち良く動く、ゲームの至宝・ドット絵アニメーション。
前述した、サターン参入時の「開発者の要望」とは、このアニメーションだったのではないかと思う。
この表現がPSで不可能なのかどうかは分からんが、2Dドット絵がサターンの方が得意だったのは確かなはずだ。
ドット絵アニメを見て良い気分になれたのは久しぶりだったので嬉しくなった。これぞ清く正しいノスタルジー。はぁ。
そして、そんなウニウニ動く多彩なキャラを見ていると……前言と矛盾するようだが、この世界が徐々に魅力的に見えてくるのだ。
確かに奇怪な奴ばかりだが、周囲もそんな奴ばかりなので、1周回って違和感がない。
そこに流麗なアニメーションが入り、「どこか愛嬌がある」という印象に変化していく。
プレーヤーには「風獣紀」という、今作に登場するキャラやアイテムを網羅した辞典のような本が与えられている。
これを読むと更にキャラ設定が細かく分かり、ますます愛着が増す……は言いすぎか。
ちなみにこの本の記述は謎解き上でも重要で、読まなきゃゲームを進められないこともある。
油ギトギトなものを好む俺だが、「通」な料理も決して不味いわけではなかった。そりゃそうか、ちゃんと作られた料理なんだもんな。
ゲームをクリアーする段階では、不満はゲームシステム方面に偏っており、世界設定には寧ろ好感を持っていたのは自分でも意外だった。
それでも「大好き」と言えるほどではないが、プレー前印象を考えれば十分な成果だ。
雨宮氏の世界、悪くない。……売れる作風とは今でも全く思わんけどね。
ゲーム中に幾つかムービーが挟まれるのだが、時代を考えるとかなりレベルが高いと思った。
CGかクレイアニメか俺には判断つかないんだが、雨宮世界を違和感なく表現し、ボリュームもそこそこあった。
当時ムービーと言えばスクウェアだったが、エニックスもこれだけのことはやれたんだね。
……問題はそれが無名なサターンゲーだったから、誰にも知られず消えちまったことかな……。
世界やキャラは奇異だが、物語はそうではなく、寧ろ割とフツーだった。いや安っぽい? あまり心が動かなかった。
端的に言うと「世界に絶望したキャラが暴走し、それを主人公が止める」話なのだが……もう使い古されてるよな。
そもそも個人的には「あの程度」の絶望で暴走するキャラは、単なる甘ったれに見えて仕方がない。
あの程度の絶望なら俺だってしょっちゅう感じてるよ。現代現実のどこにでも転がってる、虚しい心である。
なのにあのキャラは「暴走する」能力を持ち、またそれを存分に行使し、挙句暖かい仲間に救ってもらえた。
サイコーやんけ。どんだけ恵まれてるねん。俺なんかな、俺なんかな……!! 畜生、畜生。
作中の悲劇に共感するどころか、歪んだリア充っぷりに嫉妬してしまった。もう俺死んだ方がいいんか。はぁ。
特異な世界観を持つ雨宮氏も、語る物はごく有り触れた、もっと言えば陳腐な内容だったことは残念である。
俺が驚愕し、新たな世界に目覚めるよな強烈な価値を示してほしかった。ま、こんなもんなのかのう……。
ふぅ。
今作には「初回限定版」特典として、雨宮氏がデザインした原画を見られるCDがディスク2として同梱されている。
……もちろん通常版が出回ることは永遠になかったわけだが、それは言うまい。はぁ。
ディスク2はゲームに登場する殆どの原画が収録されているので、好きな人にはたまらんだろう。
俺はアニメーションやムービーが気に入っただけだから、あまり嬉しくなかったが。そっちは収録されてないし。
あと何故か項目毎に「〇〇.BMP」とファイルの拡張子が入ってるのは笑った。そんなん表示するなよ。
ディスクにゃ「プレミアムCD」「PREMIUM CD」と何故か二表記で国際的に書いてるし。わけの分からん拘りだ。
テキトーに眺めてこの世界から離れた。七ツ風の島、か。「ツ」が片仮名なとこに注意ね。あはは……。
今回調べてみたんだが、結局エニックスがサターンで発売したゲームは
・日本代表チームの監督になろう!
・忍ペンまん丸
・RIVEN
・七ツ風の島物語
のたった4本しかなかった。「RIVEN」は洋ゲーの移植だから、実質は3本しかない。
ますます謎が深まった。一体何だったんだろう。個人的な90年代ゲーム業界の引っかかりとして、これからもたまに悩ませてくれそうだ。
まぁ当のエニックスにとっちゃ、今じゃ心底どうでもいい過去なんだろうけどね。
だがこの4本の中じゃ、今作が一番作家性が強く、制作者に望まれた作品だっただろう。ちなみに売上はサッカーがブッチギリだ。
エニックスがサターンに参入した意義があるとすれば、今作しかない。俺は長い時を経て、それをプレーしたのだ。ふはは。
この意味不明な自己満足を今回のプレーの報酬としておこう。
90年代のやり残しをまた一つ遂げられたしな……やれやれだ。
あれから随分時間が経ち、エニックスはスクウェアと合併までしたものの、かつての勢いはもうない。
もう今作のような「売れ線でない」ゲームを出す余裕はどこにもないだろう。そしてそれは正しいと思う。
今やスクエニどころか日本ゲーム業界全体が危機的状況にある。実験的でニッチ向けな作品なんて言語道断だ。
必要なのは、売れるゲーム。必要なのは、金。それで当然だ。それが面白さを追求する道なら、いちユーザーとして何も不満はない。
……けど、いちゲーオタとしてはやっぱ寂しいなと思う。本当に勝手だよな。
考えてみれば、こんな主流を外れた作品が発売され、全然売れず、それを入手した数少ないユーザーからも叩かれるってのは、
ある意味幸せな状況かもしれん。まだゲーム業界にそれを許容する余裕があったとも解釈できるからな。
そりゃ今でも駄作は作られてるが、こういう端から売れ線を狙わず、かつ金と気合の入ったタイプはないだろう。
90年代の幸せな記憶。このゲームにすらこんな事を感じてしまう。現状。ああ現実。
友達と仲良く平和に暮らせる七ツ風の島とやらはどこにあるんだろう。
ギスギスギチギチクラクラトボトボこの現実。
俺も絶望で暴走を引き起こせる特殊能力が欲しいよ。そのまま暴れてりゃ、誰かが助けてくれるんだろ?
心に吹き荒ぶ黒い風を追い払ってくれる風使いの竜人はどこにもいない。
はぁ……。
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そして完全に人を選ぶゲーム
貴方は選ばれなかった
ただ、本文にも書きましたが、最初は雨宮氏の奇異な世界とキャラに違和感があったものの、
最終的にはそれらに少なくとも「嫌いではない」レベルの好感を持つようになりました。
不満を抱いたのは寧ろゲーム性の部分で、ここはどうにか改良してほしかったです。
もちろんゲーム性の部分も雨宮氏が手掛けたのかもしれませんが、
エニックス側にはきちんとゲームのプロがいるんですから、そこは調整してほしかったと。
私は当時このゲームを楽しく遊び、今でも良い思い出だと思っていますが、
記事を読んで正直感心しました。皮肉ではないです。
七ツ風の世界観と雰囲気が大好きだった自分でさえ、2011年となった今、
当時のように最初から最後までこのゲームを遊び通せるかと聞かれると、
ぶっちゃけ無理です。ダルすぎる。
それを、世界観にも物語にも興味持てなかった人がよく最後までプレイできたなあと、
正直感心しました。おつかれさまです。
一応褒めて頂いた……と解釈しますw
俺は今作に限らず、やったゲームの感想を好き放題書いてますが、それにはやはり「クリアーする」のが大前提だと思ってます。
やらないで批評するのは筋違い、だが逆に言えばやった人には好き放題感想を言う権利がある、と。
なのでどんな合わないゲームでも、プレーを始めた以上投げ出さず最後までやります。好き放題言いたいので。オタの意地ですね。笑です。
ただ今作の場合は終盤攻略サイトに頼ってしまったので、クリアしても負けた感が強く、ちょっと後ろめたいものがあります。
完全自力でクリアして、もっと遠慮なく書きたかったな。遠慮したわけじゃないですけど。
上にも書きましたが、世界設定に関しては俺もプレーしているうちに「嫌いじゃない」レベルの好感は抱くようになりました。
しかしゲーム部分の欠点は擁護の余地がないと思います。ゲームとして面白ければ、もっともっと世界に浸れて、好きになれたかもしれないのに。
そこが非常に残念です。
マップが広いのもそのためです。
確かに広すぎた気はしますが。
気長に疲れを癒してという意味もあるそうで。
また、違う視点でやっていただきたいです。
相当にこの世界を好きになればまた違うかもしれませんが、俺はそこまでは浸れませんでした。
良し悪しはさておき、システム的な部分も含め、ファミコン時代のゲームバランスという感じですね。
ゲームの雰囲気と難度や快適性が噛み合ってないのは確かだと思います。
もうちょっと緩いバランスにするか、各所に細かいサブイベントを散りばめたら良かったかな、と。
作風が唯一無二なのは間違いないので、勿体無いゲームだと思いますね。
エニックスのサターンの参入の経緯ですが、スクエアのPS参入が決まる前からセガが勧誘しており、参入の条件が「RPG用ゲームエンジンの提供」だったそうです
セガはゲームアーツに依頼して開発して貰ったのですが、そこでスクエアがPSに参入することを発表となり、さらに「RPG用エンジンをスクエアが『無料』で提供することを提案」したため、セガにお断りを入れたと
RPG用エンジンが中に浮いたため、困ったゲームアーツが作ったのが『グランディア』です
エニックスは参入契約自体はしてしまった為に、仕方なく参入という流れです
ただ、エニックスはエニックス企画の物と、サターンで発売したソフトのように下請け持ち込みの物があります
持ち込んでる以上「開発者にやる気があった」のも事実です
「RPGエンジンの話は(自称)元ゲームアーツ社員がネットに書き込んだ内容なので噂ですが」
サターン屈指の名作であるグランディアは、ある意味「サターンの負け」により生まれたわけですか。なるほどなぁ。
あとエニックスもせっかく参入したなら、そのエンジンを使ってRPGを作ってほしかったですね。「サッカー」ではなくw
面白い読み物として拝見しましたが一点だけ私の認識と違うかな?
というのはエニックスがドラゴンクエスト7を発売するくだりです
いわゆる「売れてるハードにドラクエを出す」というのはまさにこの時に
エニックスが公表したことでした
要するに「ドラクエの移籍に対しての理由付け」がこの言葉の出発点と記憶しています
>エニックスが公表したことでした
あー……確かに、言われてみればそうだったかも……。
6までは任天堂ハードで発売だったのに、PSへ路線変更をした。その理由としてこの発言が出てきたんでしたっけね。
そこまでの1年間にスクウェアの移籍によるPSの覇権確定があり、俺はドラクエの移行も発表前にほぼ確実と予想していました。
そのためこの方針発表に「言われなくても知ってるよw」と思ってしまい、記憶が前後してしまったようです。あははw
いや、鋭いご指摘ありがとうございました。よく知ってるつもりの知識ほど危ういもんですな……。