人はなぜ戦争をするのか

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ついに下されたアポトーシスの審判

2017年07月03日 08時33分13秒 | 社会
昨日、東京都議会選挙が行われました。結果は自民党の惨敗でした。ついにミトコンドリアがアポトーシスの審判を下したのです。

ミトコンドリアは細胞の中に住んでいます。ミトコンドリアは国家の枠組みの中に暮らす国民によく似ています。国家が国民を守り、国民が国家を支えるように、細胞とミトコンドリアとの間には相互支配の関係が成立しています。個々のミトコンドリアの立場は弱く、細胞に対しては従属的です。しかし、一方でミトコンドリアは細胞に対して生殺与奪の権利を有しています。それはアポトーシスという細胞を自殺に追い込む権利です。アポトーシスは、ちょうど選挙で政権を崩壊させる有様に似ています。

細胞の中のしくみはとても民主的です。それは、私たちの祖先がガン細胞だったからです。ガン細胞は無限に増殖する能力を有しています。人がガンになるのは、遺伝子に組み込まれた細胞の欲望が頭をもたげる時です。少しでも自分の勢力を拡大したいという細胞が本来持っている国家権力にも似た欲望です。
 
同様に国家を脅かす危機は、細胞の増殖を企てる勢力が多数を占め、それが暴走した時に訪れます。生命は細胞の暴走を抑える増殖制御装置などの憲法を遺伝子に組み入れながら進化してきました。その憲法に保障された民主的なしくみを支えているのが、メディアに相当する細胞内情報伝達系です。例えば、国際紛争や原発事故のような大事件は、細胞内情報伝達系を介して細胞のすみずみまで瞬時に正しく情報が伝えられます。その結果、細胞内に暮らす数々の小器官は、細胞を守り、ひいては個体を守るために適切な対応をとることができるのです。ところが、ガン化を企てる細胞は、細胞内外で発生した事件を正しく細胞内小器官に知らせず、自らの増殖にとって都合のいい方向にのみ情報を伝えようとします。特定秘密保護法、安全保障関連法や共謀罪処罰法は、まさに国民が国内外の変化に正しく対応するための情報を隠蔽し、国家権力の暴走を許すガン化促進法なのです。

民主主義国家では三権分立の制度が確立されているように、細胞内でも何かの権力が突出してくると、それを抑制する権力が働きます。例えば正常な細胞内では細胞の増殖を促す遺伝子とこれを抑える遺伝子が拮抗しています。前者がガン遺伝子であり、後者が増殖制御装置の一つであるガン抑制遺伝子です。ガン遺伝子は細胞の成長や分裂を促し、逆にガン抑制遺伝子は細胞が無秩序に増殖しないように監視する独立した機関としての役割を果たしています。どちらの勢力が優っても細胞を秩序ある成長に導くことはできません。ガン細胞では、ガン遺伝子を活性化する情報のみが溢れ、ガン抑制遺伝子を活性化するはずの情報はブロックされているのです。
それでは、ガン抑制遺伝子は本来どのように機能しているのでしょうか。ガン抑制遺伝子は、もし細胞が無秩序に増殖しようと企てると、それを察知して細胞分裂に待ったをかけます。それでも従わないときは、細胞内小器官の一つであるミトコンドリアに知らせてアポトーシスという自殺の機構に訴え、細胞に引導を渡します。このしくみは、細胞のガン化を未然に防ぐため、細胞内に暮らす国民とも言えるミトコンドリアに与えられた大切な権利です。国会で内閣不信任の決議を下し、選挙によって政権を交代させることができる権利と同じです。

ミトコンドリアは細胞のガン化を防ぐ最後の砦です。細胞内では、もし民主的な制度が機能せず、細胞がガン化しようとしても、細胞の生死を決定する権限を持つミトコンドリアがアポトーシスによって細胞を裁いてくれます。アポトーシスは、細胞や個体の正常な発育を担保するために生命進化の過程で備わった最も大切な命の制御機構です。アポトーシスは、周りの細胞や、ひいては個体に迷惑をかけるような身勝手な細胞を消去するために不可欠な犠牲死のシステムです。東京都議選で自民党に下されたアポトーシスの宣告は、まさにガン化しようとする安倍政権に対して、正しい国家のあり方を問い正す国民の審判だったと言えるのではないでしょうか。


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