イスラム国による湯川さん、後藤さんの人質事件は最悪の結末で幕を閉じた。イスラム国のテロリスト達による残虐な行為は許しがたい。しかし、彼らを憎み、報復するだけでは何ら解決策にはならない。イスラム国というガン組織の成長を許した国際社会に責任はないのかを真摯に省みる必要がある。
ガンとは、侵してはならない細胞同士の境界を越えて浸潤し、周りの細胞や組織を破壊しながら発育する異常な生物である。ガンはなぜ発生するのだろうか。ガン化のメカニズムは完全には明らかになっていない。しかし、ガン化の根底にあるのは未熟な細胞に対する酸化ストレスである。酸化ストレスは過食、喫煙、運動不足などのよくない生活習慣によって生まれる。すべての細胞は生命の本質として増殖したいという欲望を内在している。しかし、人間のように高度に進化した個体では、頻繁に世代交代を繰り返す血液細胞、粘膜細胞や上皮細胞を除いては勝手に分裂、増殖しない仕組みが備わっている。細胞が生まれ変わり臓器が再生されるのは未分化な幹細胞が増殖し、臓器固有の細胞に分化するからである。神経細胞や心筋細胞などの分化を終えた細胞は酸化ストレスによって自殺することはあっても、ガン化することは稀である。一方、未分化な細胞ほど、酸化ストレスに曝された時に異常な増殖に向かう遺伝子が活性化される。よくない生活習慣に伴う酸化ストレスは、幹細胞の分化を妨げ、ガン化へと導くのである。
イスラム国は外国から身代金という栄養を取り込み、国境を越えて浸潤、一部は世界中に転移して国際社会を破壊している。その行動様式はガンそのものである。シリアの一部はなぜイスラム国という形でガン化したのだろうか。イスラム国の源流はイラクのフセイン政権に遡る。アメリカが主導したイラク戦争の結果、フセイン政権は崩壊した。しかし、フセイン政権を牛耳っていた権力者達を根絶やしにはできなかった。その残党が今日のイスラム国の中核を担っているのである。イスラム国の指導者達は巧みな戦術で世界中の若者を取り込み、みるみる勢力を拡大していった。彼ら指導者は疑いなく、狡猾で残虐非道なテロリストである。しかし、戦闘員達はどうであろうか。彼らは人間として本質的に欧米先進諸国の若者と変わるところはない。大きく異なる点は、イスラム国に共感して戦闘員を志した若者の多くは幼いころから貧困にあえぎ、満足な教育を受けていないことである。まともな教育を受けられなかったという点で未熟、未分化なのである。感受性の高い未熟な若者たちは容易に過激なイスラム思想に染められ、テロリストへと洗脳されていく。イラク戦争以後、欧米先進国をはじめとする国際社会は、自らの国益を守ることだけに終始し、貧困や差別に苦しむイスラム圏の人々を顧みなかった。そう考えると、フセイン政権の残党にガン化を許した元凶は、未熟なイスラムの若者が曝されている貧困、差別という酸化ストレスであり、これを放置した国際社会であると言うことができる。
イスラム国というガン組織を退治する方法はあるのだろうか。ガン治療には抗ガン剤が用いられる。しかし、抗がん剤によってガン組織を根絶やしにすることはできない。生き残ったガン細胞は、以前にも増して悪性度を高め、個体を攻撃し、死に至らしめる。同様に、憎悪で満たされた報復の連鎖はテロ活動を一層過激にするだけである。有志連合が為すべきことは空爆という抗がん剤の投与ではない。国際社会が協力して貧困や無知といったテロの温床を断つことである。後藤さんはジャーナリストとして国際社会にこの問題を投げかけたのである。後藤さんらの死を無駄にしないためにも、国際社会は貧困と無知に喘ぐイスラムの若者を支援すべきである。特にわが国は第9条という人類の歴史上最も進化した憲法を持っている。わが国はこの憲法を前面に据え、テロの非軍事的解決を押し進める立場にある。イソップの「北風と太陽」の寓話にもあるように、テロリストの武装を解除するのは冷徹な武力ではなく、温かい援助である。それこそがガンの再発を防ぐ最善の治療法ではないだろうか。
個体の成長には限りがある。肉体がやがて老化するように、経済成長がいつまでも続くわけではない。地球資源は限られている。先進諸国が成長を目指せば、取り残された発展途上国の食いぶちはなくなり、較差はますます広がる。成熟した国家における無理な成長戦略は、底辺に暮らす未熟な若者に酸化ストレスを与え、ガン化を促し、返って健康長寿を損なうだけである。成熟した国家の使命とは何か。それは自国の経済を成長させることではなく、発展途上国の成長を心身両面で支援することである。わが国を始め、先進諸国が老化し、行き詰った時に支えてくれるのは現在発展途上にある国々の若者なのだから。
ガンとは、侵してはならない細胞同士の境界を越えて浸潤し、周りの細胞や組織を破壊しながら発育する異常な生物である。ガンはなぜ発生するのだろうか。ガン化のメカニズムは完全には明らかになっていない。しかし、ガン化の根底にあるのは未熟な細胞に対する酸化ストレスである。酸化ストレスは過食、喫煙、運動不足などのよくない生活習慣によって生まれる。すべての細胞は生命の本質として増殖したいという欲望を内在している。しかし、人間のように高度に進化した個体では、頻繁に世代交代を繰り返す血液細胞、粘膜細胞や上皮細胞を除いては勝手に分裂、増殖しない仕組みが備わっている。細胞が生まれ変わり臓器が再生されるのは未分化な幹細胞が増殖し、臓器固有の細胞に分化するからである。神経細胞や心筋細胞などの分化を終えた細胞は酸化ストレスによって自殺することはあっても、ガン化することは稀である。一方、未分化な細胞ほど、酸化ストレスに曝された時に異常な増殖に向かう遺伝子が活性化される。よくない生活習慣に伴う酸化ストレスは、幹細胞の分化を妨げ、ガン化へと導くのである。
イスラム国は外国から身代金という栄養を取り込み、国境を越えて浸潤、一部は世界中に転移して国際社会を破壊している。その行動様式はガンそのものである。シリアの一部はなぜイスラム国という形でガン化したのだろうか。イスラム国の源流はイラクのフセイン政権に遡る。アメリカが主導したイラク戦争の結果、フセイン政権は崩壊した。しかし、フセイン政権を牛耳っていた権力者達を根絶やしにはできなかった。その残党が今日のイスラム国の中核を担っているのである。イスラム国の指導者達は巧みな戦術で世界中の若者を取り込み、みるみる勢力を拡大していった。彼ら指導者は疑いなく、狡猾で残虐非道なテロリストである。しかし、戦闘員達はどうであろうか。彼らは人間として本質的に欧米先進諸国の若者と変わるところはない。大きく異なる点は、イスラム国に共感して戦闘員を志した若者の多くは幼いころから貧困にあえぎ、満足な教育を受けていないことである。まともな教育を受けられなかったという点で未熟、未分化なのである。感受性の高い未熟な若者たちは容易に過激なイスラム思想に染められ、テロリストへと洗脳されていく。イラク戦争以後、欧米先進国をはじめとする国際社会は、自らの国益を守ることだけに終始し、貧困や差別に苦しむイスラム圏の人々を顧みなかった。そう考えると、フセイン政権の残党にガン化を許した元凶は、未熟なイスラムの若者が曝されている貧困、差別という酸化ストレスであり、これを放置した国際社会であると言うことができる。
イスラム国というガン組織を退治する方法はあるのだろうか。ガン治療には抗ガン剤が用いられる。しかし、抗がん剤によってガン組織を根絶やしにすることはできない。生き残ったガン細胞は、以前にも増して悪性度を高め、個体を攻撃し、死に至らしめる。同様に、憎悪で満たされた報復の連鎖はテロ活動を一層過激にするだけである。有志連合が為すべきことは空爆という抗がん剤の投与ではない。国際社会が協力して貧困や無知といったテロの温床を断つことである。後藤さんはジャーナリストとして国際社会にこの問題を投げかけたのである。後藤さんらの死を無駄にしないためにも、国際社会は貧困と無知に喘ぐイスラムの若者を支援すべきである。特にわが国は第9条という人類の歴史上最も進化した憲法を持っている。わが国はこの憲法を前面に据え、テロの非軍事的解決を押し進める立場にある。イソップの「北風と太陽」の寓話にもあるように、テロリストの武装を解除するのは冷徹な武力ではなく、温かい援助である。それこそがガンの再発を防ぐ最善の治療法ではないだろうか。
個体の成長には限りがある。肉体がやがて老化するように、経済成長がいつまでも続くわけではない。地球資源は限られている。先進諸国が成長を目指せば、取り残された発展途上国の食いぶちはなくなり、較差はますます広がる。成熟した国家における無理な成長戦略は、底辺に暮らす未熟な若者に酸化ストレスを与え、ガン化を促し、返って健康長寿を損なうだけである。成熟した国家の使命とは何か。それは自国の経済を成長させることではなく、発展途上国の成長を心身両面で支援することである。わが国を始め、先進諸国が老化し、行き詰った時に支えてくれるのは現在発展途上にある国々の若者なのだから。