人はなぜ戦争をするのか

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ガン化を抑える細胞内の民主主義

2022年04月15日 17時25分37秒 | 社会
細胞のガン化を抑える民主主義とはどのような仕組みなのでしょうか。ガン抑制遺伝子の情報をキャッチしてDNAの格納庫である核にガン化情報を伝え、がん遺伝子の働きを停止させるように働きかけるのが細胞内情報伝達系です。細胞内情報伝達系はメディアに相当します。例えば、「病原体が侵入した」というような大事件の情報は、細胞内情報伝達系を介して細胞のすみずみまで瞬時に、かつ正確に伝えられます。細胞にとっては不利な情報であっても、隠蔽されることはなく、改ざんされることもありません。細胞内でメディアが自由に活動しているからこそ、病気の進行が未然に防げるのです。

ガン抑制遺伝子を介したガン化の情報は最終的にミトコンドリアに伝達されます。細胞内の国民であるミトコンドリアは細胞に対して生死の決定権を持っています。ミトコンドリア個々の力は弱いです。しかし、彼らが結集して声を上げると、細胞を倒すほどの強い力を発揮します。ミトコンドリアは個体を守るため、ひいては自らや、家族や、仲間を守るため、宿主である細胞の理不尽な行いに対して命がけで立ち向かっています。宿主細胞のDNAが修復不能な損傷を受けた場合や、ミトコンドリアがもうこれ以上生きられないような細胞内環境に置かれた時には、ミトコンドリアは容赦なく死のシグナルを発令します。これはアポトーシスと呼ばれ、ミトコンドリアが宿主である細胞を死に至らしめることができる権利です。ちょうど国民が総選挙で時の政権に対して「NO」を突き付けるのと同じです。

アポトーシスとはギリシャ語で「アポ=離れる」、「ト―シス=落ちる」という意味です。プログラムされた死、「programmed cell death」とも呼ばれています。アポトーシスは、正常な細胞が個体を守るために必要以上に分裂、増殖することを抑制し、周囲の細胞に害を及ぼす可能性のある時は自殺する機構です。60兆個もある私たちの体の中の細胞がめったにガン化しないのも、無制限に分裂する能力を獲得した細胞がアポトーシスで排除されるからです。ミトコンドリアがアポトーシスで宿主の細胞を自殺させる時、ミトコンドリアは運命を共にします。自らは犠牲になってでも細胞のガン化を防ぎ、他の細胞に暮らす同胞を守っているのです。

次回はガン細胞をプーチン大統領に置き換えるとピッタリはまるわけをお話しします。


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