人はなぜ戦争をするのか

循環器と抗加齢医学の専門医が健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

ガン細胞とプーチン大統領の共通点

2022年04月16日 12時19分05秒 | 社会
ガン細胞を端的に言い表すと以下のようになります。
「ガン細胞とは、自分の増殖にとって都合のいいように改憲(突然変異)して遺伝情報(法律)を変え、ミトコンドリアの活動(言論、表現の自由)を統制してアポトーシスから逃れ、勝手気ままに増殖を始めた細胞である」。ガン細胞はアポトーシスから逃れるようにミトコンドリアを遠ざけ、黙らせているのです。

ガン細胞をプーチン大統領に置き換えるとこうなります。「プーチン大統領は、自分の権力維持にとって都合のいいように改憲(突然変異)して遺伝情報(法律)を変え、言論、表現の自由を統制して政権批判から逃れ、勝手気ままに増殖を始めた独裁者である」。プーチン大統領は政権批判から逃れるように国民を遠ざけ、黙らせているのです。

ガン細胞と独裁者には共通点のあることが明らかです。これは取りも直さず、人間がガン細胞を先祖としていることに起因します。すべての人間はプーチン大統領と同じ立場に立たされれば、同じような行動をとるのです。ガンの予防と独裁者が排出されない社会の構築には共通点があります。次回はそのお話をしたいと思います。

ガン化を抑える細胞内の民主主義

2022年04月15日 17時25分37秒 | 社会
細胞のガン化を抑える民主主義とはどのような仕組みなのでしょうか。ガン抑制遺伝子の情報をキャッチしてDNAの格納庫である核にガン化情報を伝え、がん遺伝子の働きを停止させるように働きかけるのが細胞内情報伝達系です。細胞内情報伝達系はメディアに相当します。例えば、「病原体が侵入した」というような大事件の情報は、細胞内情報伝達系を介して細胞のすみずみまで瞬時に、かつ正確に伝えられます。細胞にとっては不利な情報であっても、隠蔽されることはなく、改ざんされることもありません。細胞内でメディアが自由に活動しているからこそ、病気の進行が未然に防げるのです。

ガン抑制遺伝子を介したガン化の情報は最終的にミトコンドリアに伝達されます。細胞内の国民であるミトコンドリアは細胞に対して生死の決定権を持っています。ミトコンドリア個々の力は弱いです。しかし、彼らが結集して声を上げると、細胞を倒すほどの強い力を発揮します。ミトコンドリアは個体を守るため、ひいては自らや、家族や、仲間を守るため、宿主である細胞の理不尽な行いに対して命がけで立ち向かっています。宿主細胞のDNAが修復不能な損傷を受けた場合や、ミトコンドリアがもうこれ以上生きられないような細胞内環境に置かれた時には、ミトコンドリアは容赦なく死のシグナルを発令します。これはアポトーシスと呼ばれ、ミトコンドリアが宿主である細胞を死に至らしめることができる権利です。ちょうど国民が総選挙で時の政権に対して「NO」を突き付けるのと同じです。

アポトーシスとはギリシャ語で「アポ=離れる」、「ト―シス=落ちる」という意味です。プログラムされた死、「programmed cell death」とも呼ばれています。アポトーシスは、正常な細胞が個体を守るために必要以上に分裂、増殖することを抑制し、周囲の細胞に害を及ぼす可能性のある時は自殺する機構です。60兆個もある私たちの体の中の細胞がめったにガン化しないのも、無制限に分裂する能力を獲得した細胞がアポトーシスで排除されるからです。ミトコンドリアがアポトーシスで宿主の細胞を自殺させる時、ミトコンドリアは運命を共にします。自らは犠牲になってでも細胞のガン化を防ぎ、他の細胞に暮らす同胞を守っているのです。

次回はガン細胞をプーチン大統領に置き換えるとピッタリはまるわけをお話しします。

ガン遺伝子を活性化させるプロパガンダ

2022年04月08日 17時12分41秒 | 社会
正常な細胞の中は、細胞が勝手に増殖しないように非常に民主的なしくみになっています。

民主主義国家では三権分立の制度が確立されているように、細胞の中でも何かの権力が突出してくると、それを抑制する力が働きます。正常な細胞内では細胞の増殖を促す遺伝子と、これを抑える遺伝子が拮抗しています。前者がガン遺伝子であり、後者が増殖制御装置の一つ、ガン抑制遺伝子です。

ガン遺伝子は細胞の成長や分裂を促し、逆にガン抑制遺伝子は細胞が無秩序に増殖しないように監視する機関です。どちらの勢力が優っても細胞を秩序ある成長に導くことはできません。

ガン細胞は、ガン遺伝子を活性化する情報(ロシアの国民向けプロパガンダのようなもの)のみを溢れさせ、ガン抑制遺伝子を活性化する情報(反戦を促す欧米の声)をブロックしています。ガン細胞では秩序ある成長に不可欠な民主主義が崩壊しているのです。

がん細胞はいきなり増殖のスイッチをオンにはしません。まずガン化の情報をミトコンドリアに伝える情報伝達系を遮断、次にがん抑制遺伝子を無効にして細胞内の民主的な制度を破壊したうえで初めて増殖のスイッチをオンにします。細胞内に暮らすミトコンドリアは偽情報に惑わされ、訳のわからないうちに気が付いたらガンの片棒を担いでいることになります。まさにプーチン大統領が自らの主導する侵略戦争を国民から支持させる戦略です。
 
次回は細胞のガン化を抑える民主主義についてお話しします。

憲法改正と突然変異

2022年04月06日 17時23分29秒 | 社会
ガン化を抑えるシステムは接触阻止だけではありません。細胞には他にもガン化しないための高度に洗練された遺伝子が整備されています。遺伝子は国家における憲法に相当します。国の形を決めるのが憲法ならば、細胞の形を決めるのが遺伝子です。

国家が憲法に基づいて法律を作るように、細胞は遺伝情報に基づいてタンパク質を作ります。法律は人間社会を動かす基盤ですが、タンパク質も細胞の枠組みを作り、細胞がさまざまな機能を果たすための原動力となります。

エネルギーを産み出すのに必要なタンパク質、細胞を動かすタンパク質、増殖に必要なタンパク質、ガン化を制御するタンパク質、これらすべてが細胞の正常な機能を担保するため有機的に働いています。憲法が正しく解釈されなければ国の形が歪んでしまうように、遺伝子が正しく翻訳されなければ異常なタンパク質が作られて細胞の機能が損なわれるのです。

わが国では護憲か改憲かという議論が噴出しています。生命にとって改憲とは遺伝子の突然変異を意味します。突然変異は必ずしも細胞にガン化をもたらすわけではありません。突然変異は進化の源泉でもあります。自然選択は常にその時代の環境に合ったように突然変異した個体の生存に有利に働いてきました。突然変異の目的が個体の利益のためなのか、細胞の無秩序な増殖のためなのかを見極めるのが細胞内に暮らすミトコンドリアの役目です。同様に、憲法改正の目的が国民の幸福のためなのか、国家権力強化のためなのかを判断するのが私たち国民の役目です。護憲か改憲かという議論よりも、人間社会の進化のためには、どの憲法をどのよう変えるかを議論すべきなのです。

細胞の悲惨な戦争体験が育んだガン化阻止の遺伝子

2022年04月04日 15時16分34秒 | 社会
祖先の細胞がお互いに戦争をしない「接触阻止」という戦争回避の遺伝子を手に入れるきっかけは何だったのでしょうか。
今から15億年以上前、戦争で瀕死のダメージを受けた細胞の一つが突然変異しました。二度と他の細胞と武力で争わない接触阻止という「不戦」の遺伝子を手に入れたのです。その細胞の名を「日本」と言ったのかどうかは定かではありません。この細胞は争わないがゆえに、最初は仲間からいじめられ、食いぶちに窮することもありました。他の細胞から侵略を受けそうになることもありました。しかし、不戦の遺伝子を獲得した細胞は巧みな外交戦略と専守防衛で危機を乗り越えました。武力で勝負をしないことが本当の強さだったのです。やがて、他の細胞が争いで滅びていく中、この細胞だけが生き残り、今日に至る生命の大躍進に繋がったのです。

生命進化の歴史は、ダーウィンが提唱した生命進化の法則「自然選択」が戦争を放棄した細胞に味方したことを証明しています。約20億年前には単細胞だけであった地球上の生命は、細胞同士が接触しても争わない遺伝子を発現させることによって多細胞化を可能にしました。それから約15億年後、地球は何百万種もの動物が暮らす命の星になりました。接触阻止遺伝子を持ち続けた細胞たちは争わずグローバル化し、やがて奇跡の小宇宙とも呼ばれる人体を作り上げたのです。もし細胞が不戦の遺伝子を獲得していなければ、あるいはその遺伝子を放棄していたならば、地球は今でも微生物と単細胞しか生存しない寂しい星であったでしょう。私たちの祖先が生命進化のために獲得した不戦の遺伝子、それは、遺伝子の憲法第9条だったのです。

それでは憲法第9条でわが国の領土と安全は守れるのか?多くの人は憲法第9条の改正とわが国の防衛に矛盾を感じていると思います。結論を申し上げれば、現時点で日本が武力を放棄することはあってはなりません。それは、ロシア、中国、北朝鮮に限らず、すべての国家は「ガン化」し、日本を侵略する可能性があるからです。

日本が名実ともに憲法第9条を遵守することができるようになるには実現させなければならない課題があります。それは、多細胞化したすべての細胞が「接触遺伝子」を備え付けて個体というグローバルな世界を作り上げたように、世界中の国々が「憲法第9条」を取り入れて真にグローバル化することです。

もう一つは、国連の改革です。今の国連のように、大国の思惑で安全保障が左右される制度では公正に国際紛争を解決することはできません。将来の国連は独立した第3者機関として世界の安全保障に携わることになります。この国際的平和維持機関は、あとでお話ししますが、人体における「免疫組織」と同じと考えていただいて差し支えないと思います。人体のすべての細胞は戦争を放棄した代わりに、病原体などの外敵やガン細胞からは「免疫組織」が守ってくれます。国の武力放棄は確かな安全保障とセットになって初めて成り立つのです。