人はなぜ戦争をするのか

循環器と抗加齢医学の専門医が健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

私たち人間の祖先はガン細胞だった!

2022年03月26日 07時57分42秒 | 社会
私たち人類の祖先はガン細胞です。その遺伝子を受け継ぐ私たちの体の中のすべての細胞はガン細胞になる性質を持っています。一日に数千個は発生するといわれるガン細胞ですが、我々はめったにガンになりません。人間の寿命は約80年ですが、そのうちガンを発症するのは約半数の人間です。これは奇跡といってもいいくらい稀有な確率でしかガンは発症しないことを示しています。私たちがガンにならないのは細胞の勝手な増殖を許さないように遺伝子が驚くほど厳密に管理され、細胞内が高度に民主化されているからです。また、たとえガン細胞が発生してもその増殖を許さない免疫システムが確立されているからです。

ガンは人間にとって憎むべき病気です。しかし、ガン細胞を責めるわけにはいかないのです。ガン細胞は体の中が平穏な状態で発生することはありません。細胞がガン化するためには必ず何か引き金となる要因が存在します。加齢、喫煙、飲酒、肥満、ある種の病原体への慢性の暴露、これらは細胞に生存に対する脅威を与え、その結果、生き延び、子孫を増やそうとする自然の反応として遺伝子を突然変異させてしまうのです。人間社会も同じでしょう。ある国に経済制裁や武力による威嚇を加われば、その国は生き延びようとして国家の遺伝子に相当する憲法を突然変異させてでも武力を強化し、抵抗しようとするでしょう。

私は、健康や平和の大切さを考える時、生命進化の歴史に想いを馳せます。私は、人間社会の歴史は生命進化の歴史と同じ道を辿ると考えています。なぜなら、人間社会は人間の集団であり、人間は細胞の集団で構成されているからです。つまり、細胞の考えていることを人間が考え、人間はその考えに基づいて行動を起こし、社会を動かしているのです。

ガン細胞であった私たちの祖先が争いをやめ、協調して多細胞化し、個体というグローバルな小宇宙を築き上げてきた進化の歴史にこそ、人類が平和な世界を築くために学ぶべき教訓が隠されていると思います。祖先の細胞が脈々と築き上げてきたガン化制御のしくみとはどのようなものだったのでしょうか。人類が生命進化の歴史に学ぶ時、戦争のない世界が訪れるのではないかと思います。

本ブログは拙著「人はなぜガンになるのか」から抜粋してお届けしています。


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