総選挙では自民党が圧勝しました。安倍首相の長期政権が保障されることになりそうです。そこで、安倍政権が長期的に推し進めようとしている成長戦略によってわが国の今後がどうなるのかを抗加齢医学の観点から予想したいと思います。
わが国はもはや成熟した社会です。その社会において、安倍首相は無理やり経済成長を目指そうとしています。日本を若々しく、たくましい肉体に改造しようとしているのです。それはまさに高齢者に対する成長ホルモン療法です。安倍首相が進める成長ホルモン療法とは、金融緩和によるインフレ促進、公共事業による国土強靭化、防衛力強化です。これらはすべて高度経済成長時代、すなわちわが国が戦後復興を成し遂げた、いわば青春時代の成長戦略です。私はこういった成長ホルモン治療が一時的に経済を活性化することがあっても、長期的にはわが国を破滅の道に追い込むのではないかと危惧しています。それには医学的な理由があるからです。
人間の体は成長期には自然に成長ホルモンが分泌され、これが逞しい肉体を作り上げます。発展途上国で国力が増していく過程と同じです。しかし、成長を終え成熟した個体において、成長ホルモンは寿命を縮めることが実験的に証明されています。成長ホルモンは強い肉体を作るのと引き換えに老化を促進する遺伝子でもあるのです。
事実、高齢者におけるホルモン補充療法には常に老化の促進やガン化といった副作用が伴います。高齢者は細胞内に暮らす国民であるミトコンドリアが老朽化し、彼らが発する危険な活性酸素によって常に酸化ストレスに曝されています。高齢者では酸化ストレスという老化の根本的な原因があるために、成長ホルモンが頑強な肉体作りという意図した方向に向かわず、動脈硬化や異常な細胞の増殖、すなわちガン化を促すのです。
アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可のもとに、高齢者の寿命延長や生活の質改善を目的とした成長ホルモンの使用が認可されています。成長ホルモンには筋肉量や骨密度を増やし、脂肪蓄積を抑制する作用があります。加齢に伴う筋力低下や骨粗鬆を予防するので、寝たきりの人の廃用委縮を改善し、リハビリテーションを促進することが期待されています。しかし、大規模臨床試験において成長ホルモンによって明確に認められた効果は筋肉増強と脂肪減少だけで手根管症候群、浮腫、糖尿病などの副作用も強く、老化を抑制する効果は認められませんでした。加えて、成長ホルモンによる発ガンの危険性も払拭されていません。このような結果を受けて、2009年にアメリカの成長ホルモン研究学会は「人における有効性が明らかになるまでは老化予防目的での成長ホルモンの臨床使用は推奨できない」という声明を出しています。
翻ってわが国の現状に目を向けると、世界一の少子高齢化社会です。多くの高齢者が働きたくても働けず、年金や社会福祉に頼った生活を余儀なくされています。このように生産年齢人口が極端に減少した少子高齢化社会において、発展途上国と同様な経済政策が成り立つはずはありません。成長ホルモン剤の注入によって一部の産業を活性化するという無理な経済成長戦略は、たとえ一時的に成功しても、やがては社会を疲弊させるに違いありません。一つ間違えば、異常な成長の最も恐ろしい副作用である、ガン化、すなわち戦争への道を辿る危険性すらあります。そのような後戻りできない道に迷いこまないためにも、安倍首相が推し進める時代錯誤の経済政策は見直す必要があるのです。
少子高齢化は人類が最も地球環境に適応した姿であり、それに伴うデフレは成熟し終えた人間社会の証でもあります。安倍首相が「この道しかない」と言い切るインフレ政策の先にはどのような危険が待ち受けているのか想像もできません。成熟した社会が健康長寿を目指すのであれば、無謀な経済成長政策から安定的で持続可能な経済成長政策へと舵を切り直すことが必要です。新しい安倍政権には国家を強くするような政策ではなく、国家という細胞の中に暮らすミトコンドリアである国民を元気にするような政策を望みます。それが結果的に国力の増強に繋がるのではないかと思うのは経済の素人である医師の浅知恵でしょうか。
このブログは風詠社出版の拙著『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著では少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。私たちはミトコンドリアの声に真摯に耳を傾け、幸福な少子高齢社会への道を歩んでいかなければなりません。それこそが、ミトコンドリアがリードした生命進化の頂点に君臨する人類の責務であると思うのです。
わが国はもはや成熟した社会です。その社会において、安倍首相は無理やり経済成長を目指そうとしています。日本を若々しく、たくましい肉体に改造しようとしているのです。それはまさに高齢者に対する成長ホルモン療法です。安倍首相が進める成長ホルモン療法とは、金融緩和によるインフレ促進、公共事業による国土強靭化、防衛力強化です。これらはすべて高度経済成長時代、すなわちわが国が戦後復興を成し遂げた、いわば青春時代の成長戦略です。私はこういった成長ホルモン治療が一時的に経済を活性化することがあっても、長期的にはわが国を破滅の道に追い込むのではないかと危惧しています。それには医学的な理由があるからです。
人間の体は成長期には自然に成長ホルモンが分泌され、これが逞しい肉体を作り上げます。発展途上国で国力が増していく過程と同じです。しかし、成長を終え成熟した個体において、成長ホルモンは寿命を縮めることが実験的に証明されています。成長ホルモンは強い肉体を作るのと引き換えに老化を促進する遺伝子でもあるのです。
事実、高齢者におけるホルモン補充療法には常に老化の促進やガン化といった副作用が伴います。高齢者は細胞内に暮らす国民であるミトコンドリアが老朽化し、彼らが発する危険な活性酸素によって常に酸化ストレスに曝されています。高齢者では酸化ストレスという老化の根本的な原因があるために、成長ホルモンが頑強な肉体作りという意図した方向に向かわず、動脈硬化や異常な細胞の増殖、すなわちガン化を促すのです。
アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可のもとに、高齢者の寿命延長や生活の質改善を目的とした成長ホルモンの使用が認可されています。成長ホルモンには筋肉量や骨密度を増やし、脂肪蓄積を抑制する作用があります。加齢に伴う筋力低下や骨粗鬆を予防するので、寝たきりの人の廃用委縮を改善し、リハビリテーションを促進することが期待されています。しかし、大規模臨床試験において成長ホルモンによって明確に認められた効果は筋肉増強と脂肪減少だけで手根管症候群、浮腫、糖尿病などの副作用も強く、老化を抑制する効果は認められませんでした。加えて、成長ホルモンによる発ガンの危険性も払拭されていません。このような結果を受けて、2009年にアメリカの成長ホルモン研究学会は「人における有効性が明らかになるまでは老化予防目的での成長ホルモンの臨床使用は推奨できない」という声明を出しています。
翻ってわが国の現状に目を向けると、世界一の少子高齢化社会です。多くの高齢者が働きたくても働けず、年金や社会福祉に頼った生活を余儀なくされています。このように生産年齢人口が極端に減少した少子高齢化社会において、発展途上国と同様な経済政策が成り立つはずはありません。成長ホルモン剤の注入によって一部の産業を活性化するという無理な経済成長戦略は、たとえ一時的に成功しても、やがては社会を疲弊させるに違いありません。一つ間違えば、異常な成長の最も恐ろしい副作用である、ガン化、すなわち戦争への道を辿る危険性すらあります。そのような後戻りできない道に迷いこまないためにも、安倍首相が推し進める時代錯誤の経済政策は見直す必要があるのです。
少子高齢化は人類が最も地球環境に適応した姿であり、それに伴うデフレは成熟し終えた人間社会の証でもあります。安倍首相が「この道しかない」と言い切るインフレ政策の先にはどのような危険が待ち受けているのか想像もできません。成熟した社会が健康長寿を目指すのであれば、無謀な経済成長政策から安定的で持続可能な経済成長政策へと舵を切り直すことが必要です。新しい安倍政権には国家を強くするような政策ではなく、国家という細胞の中に暮らすミトコンドリアである国民を元気にするような政策を望みます。それが結果的に国力の増強に繋がるのではないかと思うのは経済の素人である医師の浅知恵でしょうか。
このブログは風詠社出版の拙著『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著では少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。私たちはミトコンドリアの声に真摯に耳を傾け、幸福な少子高齢社会への道を歩んでいかなければなりません。それこそが、ミトコンドリアがリードした生命進化の頂点に君臨する人類の責務であると思うのです。