人はなぜ戦争をするのか

循環器と抗加齢医学の専門医が健康長寿を目指す「人」と「社会」に送るメッセージ

人はなぜ戦争をするのか

2022年03月25日 15時54分16秒 | 社会
ロシアがウクライナに侵攻してから一ヶ月余りが経ちました。毎日のように報道されるウクライナの悲惨な現状を目の当たりにして、戦争の理不尽さを改めて思い知らされます。

一人の独裁者が自らの欲望を満たすために罪のない他国を侵略し、征服しようとする。人間社会に幾度となく影を落としてきた負の遺産が戦争です。人はなぜ、こうも同じ過ちを繰り返すのでしょうか。それは、人間の祖先がガン細胞だったからです。

今から約20億年前、地球上には微生物と単細胞だけしか存在しませんでした。単細胞は常にエサを求めて争い、十分なエサさえあれば無限に増殖しました。やがて生命はその進化の過程で、細胞が長く生き残るためには勝手気ままに増殖するガンの遺伝子を封印することが得策だと学びました。このことが細胞同士の戦争を防ぎ、個々の細胞が協力して個体を形成する多細胞生物の出現に繋がったのです。人間は約60兆個の細胞からなる多細胞生物ですが、個々の細胞のルーツをたどればガン細胞に行き着くのです。

細胞が本能的に自らの生存と子孫の繁栄のためにのみ行動するように、ガン細胞も人間の体の中で増殖することだけを目的に生きています。ガン細胞は排他的に栄養を貪り、正常な細胞を押しのけて増殖し、やがては臓器を破壊して個体を死に追いやります。実はこのガン細胞の所業こそが細胞本来の姿です。ガンは、体の中に宿る細胞がかつての姿を取り戻した病気に過ぎないのです。

すべての細胞にはガン遺伝子が宿っています。ガン遺伝子は細胞が自らの生存危機に直面したときに牙をむきます。飽食、過度の飲酒、喫煙や運動不足など、よくない生活習慣は細胞にストレスを与えます。生き延びたいという生存本能がガン遺伝子を活性化させ、細胞をガン化させるのです。

ガンと独裁者の本質は同じです。もっと増えたい、好き勝手に振舞いたいという細胞の本能は誰にでも潜在しています。民主主義国家では権力者がどんなに望んでもその横暴を許さない制度が整っています。しかし、一人のリーダーに権力が集中する権威主義国家では、独裁者の暴走を食い止めることは困難です。独裁者は真に国家の発展を願う反対勢力を排除し、権力基盤を固めようと画策します。民主的な制度が整っていない国では、独裁者が自らの都合で侵略戦争を開始するのは自然な流れなのです。

すべての人がガンのリスクを背負っているように、すべての国家は戦争を始める危険性を秘めています。人間社会は、どのようなガン化制御装置を備え付ければ戦争というアリ地獄から抜け出すことができるのでしょうか。その答えを導き出すカギは、単細胞から人類にまで至る生命進化の歴史を紐解くことによって見つかるかも知れません。

このブログは拙著「人はなぜガンになるのか」から抜粋しています。



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