➖仁志さんはU-12の監督として、日々多くの子どもたちと接しています。今の時代の子どもたちの様子を、どうご覧になっていますか?➖
子どもたちの本質は、昔の私たちのころと何も変わっていないと思うんです。ただ、取り巻く環境が変わり、見守る大人の気質が大きく変わりました。昔は親が子どもをほったらかしていても許されていましたが、少子化の影響もあり、いろいろな意味で今の子どもたちは大人から大事にされていると感じます。
ただ、あまりに大人が手厚く接しすぎてしまうと、子どもは自ら考えたり行動する力が養われません。必要以上に手や口を出しすぎないことは、指導する上でも大事にしています。「こうしなさい」「ああしなさい」と指示しすぎず、必要最小限にとどめることが大切だと思っています。
➖仁志さん自身、プロ野球選手として自ら道を切り拓いていかれましたが、子ども時代から大切にしてきたことはありますか?➖
子どものときから、「プロに入って活躍する」という目的意識はぶれませんでした。ドラフト会議で指名を受けても、それで目標が達成されたわけではありません。常にトップレベルの選手として野球することを考え続けていたし、だからこそ、つらいことも乗り越えてこられました。
プロ野球選手になりたいという子は、今も昔も大勢います。でも、何においても言えることですが、「なりたい」と思うことと「なる!」と思うことは全然違うんです。「なりたい」と思うのは寝ながらでも思えます。けれど、「なるんだ」と思えば、行動は変わってきます。「なる」ためにやるべきことが見えてきて、そのやるべきことに今すぐ取り組める子が、目標を成し遂げられる強さがある子ですね。
➖さまざまな社会課題がある現代社会において、自分で考え、未来を切り拓いていく力がますます必要になっています。今、スポーツが子どもたちの学びに果たす役割はどのようなものだと思いますか?➖
先ほど述べた組織づくりは、今の時代だからこそ大きな学びになるのではないかと思います。U-12では、子どもたちだけのミーティングも行われます。常に自分から行動するように促しているので、何か問題や課題があるとき、子どもたちから自主的に「自分だちだけでミーティングをやりたい」と言いだすことも多々あります。コーチなど大人から言われたことより、自分たちで問題提起して答えを出したことは、決断の重みも違うのでしょう。決めたことは守り、忘れないようです。
また、家庭と学校以外の第三の場所でさまざまな人と接する経験は、将来的に大いに役立つはずです。とくに野球などのスポーツチームでは、チーム内での役割や責任を実感することができます。成長段階の子どもにとっては、未来につながる大事な学びの場だと思います。