昨日午後のことです。電話が鳴りました。
「はい」
「・・・」ちょっとためらった様子。こちらも黙って待ちます。
「ああ、突然電話しますが、決して怪しい電話ではありません」
いくらそういってもこれは怪しい。相手が詐欺野郎でも、本当の知人でもどちらにも使える台詞で対応。「怪しくないが一番怪しくない?」
「本当に怪しくはないのです。叔母ちゃん、Fです。お久しぶりです」
「な~んだ、Fくんかあ。本当に怪しくはないよね」。12年上の姉の次男です。その旨をすらすら言いますから、これは本人に違いありません。
それにしても久しぶりに電話をかけるのに、どう挨拶したものかと迷う時代ですよね。
「いや、本当に特に用事はないのです。ただ仕事のことで東京の地名が出たら、叔母ちゃんの所と丁目違いだったので、懐かしくて電話したんよ」とのこと。いろいろ商売のことなどおしゃべりです。義兄も姉もすでにあの世の人となっていますので、聴いてほしいこともあるのでしょう、良くしゃべりました。
姉の夫の義兄はかなり我の強い人でした。「俺はもしも総理大臣よりいい給料をくれると言っても、人に使われるのは好かん。自分で商売を立ち上げる」。NHKの朝ドラ「藍より青く」そのままにアイスキャンデー屋から始めて、麺類の製造で名の知れた事業を起こした人でした。それを継いだのがこの甥です。
彼の繰り返し話すことがあります。「おやじが言いよったいね。お前が事業を継いでくれるのは嬉しいけれど、俺が死んだら2年ともたんでつぶれると思う、と。でもおばちゃん、不思議につぶれんとやっちょるいね」。
昨日もコロナ時代、同業者などの倒産話が数多く聞こえて来るけれど、おかげでまだつぶさんと頑張るいね。とのことでした。頑張っても後継者がおらんけどね。息子継がんというから。商売閉じる時を考えんといけんのじゃけど、まだもうすこしがんばろうと思うんよ。
最後は彼独特の冗談で締めました。
「頭も、男前も悪いけれど、身体だけは丈夫じゃけん、まだ頑張れると思うんよ」