origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

sbiacoさん

2008-03-17 22:42:52 | Weblog
ブックマークありがとうございます。

ルイス・モロー・ゴットシャルクはニュー・オーリンズ出身の作曲家・ピアニストで、ショパンからも賞賛されたそうです。ロマン派の作曲家の中では珍しく、南米を旅し、南米の音楽を自作に取り入れようとしました。You Tubeでも映像があります。が、大抵の曲は普通の初期ロマン派のピアノ曲といった感じで、ジャズの起源をそこに見出すのは少し難しいかも。

http://www.youtube.com/results?search_query=gottschalk+louis&search_type=

『ゼッフィレッリ自伝』(東京創元社)

2008-03-17 22:10:29 | Weblog
創元ライブラリの本なのだが、解説も含めると637ページと文庫にしてはかなり分厚い本である。ゼフィレッリというと日本では「ロミオとジュリエット」や「ブラザー・サン・シスター・ムーン」、「ジェーン・エア」を撮った映画監督として特に知られているが、本業はオペラの演出家であり、この伝記を読むと映画監督ではなくオペラ演出の仕事こそが彼の人生の中枢に横たわっていることがわかる。
ゼフィレッリが生まれたのは1923年のイタリア、フィレンチェ。彼は私生児であり、ゼフィレッリという苗字も彼の母が「コシ・ファン・トゥッテ」のそよ風のアリアからつけたものらしい。守護聖人は後に映画化するアッシジの聖フランチェスコ。少年時代には当然のようにイタリア・オペラやワーグナーに接し、音楽への興味を深めていっているが、彼は同時に英語を学び、イギリス文化への傾倒もこの頃から始まっている。ムッソリーニによるファシスト政権下で青春を送った彼は、ヴィスコンティのようなドイツびいきにはならずに、むしろファシスト政権を打ち破ったイギリスのひいきとなったようだ(映画「ムッソリーニとお茶を」にはこの実体験が生きているのだろう)。戦後、彼はオペラ演出家としてキャリアを始め、様々な人々と出会うこととなる。ココ・シャネル、マリア・カラス、アンドレ・ジッド、ジャン・コクトー、プラシド・ドミンゴ、アルテューロ・トスカニーニ、カルロス・クライバー、ローレンス・オリヴィエという信じられないほどに豪華面子の文化人や演奏家とゼフィレッリは交流し、自らの才能を開花させていく。しかし、中でも最も重要な出会いは、オペラの演出家であり映画監督であるルキノ・ヴィスコンティとのものだった。ゼフィレッリと初めて出会ったとき、ヴィスコンティはジャン・ルノワールの助手であり、ココ・シャネルの恋人だった。オペラ演出家としても映画監督としてもゼフィレッリは圧倒的にヴィスコンティの影響下にあり、2人の関係は時に不和を巻き起こしながらも続いていった。この本で最も感動的な箇所は1976年のヴィスコンティの死であり、彼のヴィスコンティに対する深い畏敬の念と父親に対するような愛情を同時に感じさせてくれる。
解説は意外にも文芸評論家の三浦雅士。彼によるとゼフィレッリ自身が選ぶ好きなオペラは以下のようであるらしい。
1モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』
2ベリーニ『ノルマ』
3ビゼー『カルメン』
4チャイコフスキー『ボリス・ゴドノフ』
5ベルク『ヴォツェック』
6モンテヴェルティ『オルフェオ』
7ヴェルディ『椿姫』
8プッチーニ『ラ・ボエーム』
9プッチーニ『トゥーランドット』
10ヴェルディ『ファルスタッフ』
チャイコフスキーとベルクが高順位なのが意外だ……。
以下、メモ。
-ゼフィレッリの若い頃のヒーローはローレンス・オリヴィエであり、彼は『ヘンリー5世』を見てこれぞシェイクスピア映画の最高傑作と感動した。
-ゼフィレッリは演出中に訪れた大指揮者トスカニーニに対して、自分の演出を邪魔するなと邪険な態度を取った。このことは「ゼフィレッリはトスカニーニに対してさえ強気に出た」と後まで語り継がれた。
-ヴィスコンティの名作『夏の嵐』は脚本でテネシー・ウィリアムズが参加している。
-カラヤンはマリア・カラスと共演した後で、彼女の声を酷評した。カラスも二度とカラヤンとは共演したくないと思っていたらしく、そのことをゼフィレッリに愚痴っている。
-『ロミオとジュリエット』の成功により、ゼフィレッリは映画監督として有名になった。オリヴィア・ハッシーは当初太りすぎていて、ジュリエット役には不適切だと思ったという。
-『ブラザー・サン・シスター・ムーン』はニューヨークでは酷評を受け、ロンドンでも評判は芳しくなかった。しかし、日本では高く評価された。ゼフィレッリは自然との一体化を重視する日本人がアッシジの聖フランチェスコに共感を示したのは当然のことだと考察している。
-ローマ教皇パウロ6世の前でベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』(サヴァリッシュ指揮)が演奏された際、ゼフィレッリはサン・ピエトロ聖堂を演出した。
-テレビドラマとして製作した『ナザレのイエス』には豪華な役者が集まった。イアン・メイソン、ローレンス・オリヴィエ、オリヴィア・ハッシー。マルチェロ・マストロヤンニにも打診していたという。なお、脚本は作家のアントニー・バージェスらが担当。