origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

最近見た映画7

2009-01-12 00:07:18 | Weblog
『ジャンパー』
『スターウォーズ』の新エピソードで若きアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンセンが主演。自分の意思のままに別の場所にジャンプすることができるようになった少年の物語。特に面白くはなかった。
『エリザベス・ゴールデンエイジ』
エリザベス1世を描いたケイト・ブランシェット主演の歴史映画。カトリック復興を強行に推し進めたブロッディ・メアリーの後に女王となったエリザベス1世は、カトリックとピューリタンを抑圧し、英国国教会の徹底を図った。当然この時代においては、カトリックに対する風辺りも強く、当時のイギリスの貴族たちの反カトリック的な感情もこの映画では描かれている。カトリック教徒の家に生まれたウィリアム・バードやシェイクスピアは、このような時代を生きていたがために自らの信仰を隠さなければならなかったのだろう。
エリザベス1世に幽閉されやがては処刑された薄幸の貴族メアリー・スチュアート、無敵艦隊を率いながらも結局はイギリス軍に敗北を喫するスペイン王フェリペ2世、エリザベスに仕える探検家で詩人のウォルター・ローリーなど、歴史上有名な登場人物が独自の解釈のもとで描かれている。
『ダークナイト』
タイトルにバットマンという名がついていない、バットマン・シリーズの最新作。前作『バットマン・ビギンズ』に続いて暗くシリアスなムードの作品であり、快楽殺人を続けるジョーカー役のヒース・レジャーのおどけた演技が観客に恐怖を与えてくる。ティム・バートン版でジョーカーを演じたコミカルなジャック・ニコルソンとは別次元の怖さ。
この映画には2つの重要な対照関係がある。同じく闇を生きるバットマンとジョーカーという対照関係。光の騎士と呼ばれるハービー・デントと闇の騎士バットマンという対照関係。

荒俣宏『知識人99人の死に方』(角川ソフィア文庫)

2009-01-09 00:28:45 | Weblog
作家や学者、音楽家といった日本の知識人たちがどのように死んでいったかを叙述した本。荒俣版『人間臨終図鑑』と言えようか。荒俣が主な著者ではあるが、章によっては関川夏央(有吉佐和子)、猪瀬直樹(三島由紀夫)、都築響一(稲垣足穂)、武田徹(今西錦司)といった作家たちの手による文章を読むことができる。特に都築の稲垣足穂に関する文章は素晴らしく、足穂という我儘で世間を斜めから見た作家の魅力を伝えてくれる。三島も川端も安岡も安岡も大江も、皆足穂から悪口を言われている。当時は足穂から批判されることが一流作家の条件だったのも。
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私の死はもう眼の前に迫っているが、私は死について何も考えていない。考える事の興味が無い。多くの人が死について色々考えているが、すべて無駄だと私は思っている。
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第1回芥川賞作家・石川達三が死に迫ったときに言った台詞である。死について人は色々と考えるが、どのような思想も死を的確に表現することはできない。石川のこの考え方は、実は著者荒俣の死に対する考え方に近いのではないかと思う。様々な知識人が死について考えたが、結局それは正しかったと言えるのだろうか。ロシュフーコーの名言にあるとおり、いかに知識人といえども、死を直視することはできなかったのではないか。