origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

塩野七生『レパントの海戦』(新潮文庫)

2008-03-05 23:06:10 | Weblog
『コンスタンティノープルの陥落』『ロードス島攻防記』に続く3部作。3部作においては著者は14・15世紀のキリスト教国とイスラム教国の戦いを描いている。
今回のテーマはスペイン・ヴェネチア・ローマ教皇庁の連合軍がオスマン・トルコ帝国を破った1571年の「レパントの海戦」である。これ以降スペインの海軍は無敵艦隊などと呼ばれることになった(アルマダでイギリスに負けるけれども)。
世界史で必ず習う事件だが、さすがは塩野、語り口がうまくまるで小説を読むかのようにすらすらと読めてしまう本であった。
この本が面白い理由として、出てくる歴史上の人物がみな、魅力的だということが挙げられる。スペインの国王でありカトリック王としてイスラム勢力と戦おうとしたフェリペ2世、反宗教改革の教皇であり連合艦隊に力を貸すレオ10世、スペインの連合艦隊総司令官であるドン・ホアン、ヴァネチアの参謀長で途中で戦死することとなるバルバリーゴ……。それぞれが野心のある魅力的な登場人物となっている。
最も著者はヴェネチアびいきすぎるところがあり、オスマン・トルコを悪役として描いているところは問題点もあるだろう。
塩野は作家であり歴史家ではない。そのことを如実に感じることができる本であった。