origenesの日記

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今谷明『書評で読む歴史学』(塙書房)

2008-12-29 00:48:38 | Weblog
室町時代の封建主義研究で有名な歴史学者が朝日新聞に掲載した書評を纏めたものである。戦後の歴史学を呪縛したマルクス主義について、柳田國男と折口信夫について、織田信長の評価について、邪馬台国論争について、十字軍について、網野善彦について、などなど、洋の東西を問わない著者の歴史学に対する興味を伺い知ることができる。尚、著者は京都大学経済学部出身であり、大蔵省官僚であったこともあったという。ゆえに、歴史学者の中では特に経済や行政に詳しい。歴史学をロマンティシズム抜きに見ることができる著者の批評眼は貴重なものだ。
本書を読んで気になった本。
水谷三公『ラスキとその仲間-「赤い三十年代」の知識人』
政治学者ハロルド・ラスキらがマルクス主義・ソ連礼賛に走ったことについての批判的論考。
フランソワーズ・ジルー『イェニー・マルクス-「悪魔」を愛した女』
マルクスの妻の手記をまとめたもの。
井上章一『狂気と王権』
王と狂気、あるいは王権に対する反逆者と狂気について。
ロイ・ポーター『ギボン-歴史を創る』
ローマ帝国史で有名なエドワード・ギボンについて。
子安宣邦『「宣長問題」とは何か』
加藤周一が適した宣長問題に対する学者の返答。
森山軍治郎『ヴァンデ戦争-フランス革命を問い直す』
フランス革命の負の側面である農民虐殺について。呉智英が好きそうな研究書。
千田稔『邪馬台国と日本』
邪馬台国論争と日本ナショナリズムについて。『魏志倭人伝』を根拠とした九州説に比べて、有力説である畿内説にはナショナリズムの影が付きまとう。

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