
「続.激突カージャック」(1973)
スピルバーグ、最初の劇場映画作品で、彼の原案である。脚本は、ハル・バーラッドとマシュ・ロビンズ。主演には、かわいいコメディアンヌのゴールディー・ホーン。1969年3月に実際に起きた事件がもとのネタである。実際は、囚人が妻の助けで脱獄し州警察のパトカーをハイジャックして逃げまわるのをパトカー数十台が追った事件。アメリカ・ニューシネマの頃でカントリー・ロードムービーのため全編がのんびりした感じで見られる。そして、映画音楽作曲家ジョン・ウィリアムズとの初めてのコラボレーションである。そのスコアは、ハーモ二カを中心とした哀しく愁いを帯びた曲調が中心。
母親を演じたゴールディ・ホーンが適役。服役経験のため赤ん坊を養子にだされてしまったルー・ジーン役を見事に演じている。母性愛に満ち溢れ、しかも男まさりのように元気がいい。一方、夫は妻の尻に引かれているようで気弱。妻は、服役中の夫を脱獄させ、赤ん坊を取り戻すために車を盗み、さらに、パトカーも盗んでシュガーランドへ行く。
ジョン・フォード映画の脇役で印象的な俳優ベン・ジョンソン扮するタナー警部の指揮するパトカー数10台が出勤するアクションシーンは緊迫感があり、また、報道陣の車が道路を走るシーンは躍動感があって印象に残る。
タナー警部とルー・ジーンらとの警察と犯罪者という立場でありながらも奇妙ではあるが温かい人間的な心の交流が生まれる。これは、犯罪の動機が赤ん坊にあることが起因しており、しかも、彼らが凶悪でなく町行く人々から同情が集まる。さらに、このタナー警部が、顔が厳しく図体はごつく背が高いがその人柄は、温厚で心の優しさを持った人物であり、ルー・ジーンを実の娘のように父親的立場でいるからだ。それは、まるでスピルバーグが尊敬する監督ジョン・フォードの分身であるジョン・ウェインのようだ。
また、この映画にはコミカルなシーンもあることが特筆に値する。人質にとられているのが同僚である警察官であるため下手な手出しが出来ずに鳥の糞のように犯罪者のパトカーにゆっくりぞろぞろ付いて行くのだ。
母親と赤ちゃんという人間関係の原点となる題材を劇場第1作に選んだのはスピルバーグらしい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます