「スピルバーグ的なものを探し楽しむ。」と橋本 勝 氏が、2000年現代書館から出版している『スピルバーグ』)の中で書いているが、まさしくそのとおりだと思う。それに加えてスピルバーグによって見出された監督や俳優の成長過程を知るのもこの上なく楽しいものだ。
1980年代に入ると1984年に「アンブリン・エンターティメント」を作り本格的にプロデュサーとなる。
1990年代に入ると「ドリームワーク」を作る。彼は、プロデューサーの時は企画し資金提供をする。
今回は、特に印象に残っている作品を中心に主なものを簡単に振り返ってみたいと思う。いかにスピルバーグの映画におけるアイデアが膨大であるかわかるにちがいない。
初製作総指揮作品の「抱きしめたい」(1978)は、アメリカにおけるビートルズ人気絶頂時代をファンの目を通して描くコメディで、ロバート・ゼメキス初監督作品。この作品には、まぎれもなくスピルバーグが青春を過ごした時代である1960年代が色濃く反映されている。
「ユーズド・カー」(1980)は、ロバート・ゼメキスが続いて監督した作品で、中古車販売競争をめぐるコメディ。
「Oh!ベルーシ絶対絶命」(1981年)は、「1941」にも出演したジョン・ベルーシ主演のコメディで注目するは脚本を書いているのが「レイダース/失われたアーク」の脚本も担当したローレンス・キャスダンである。
「ポルターガイスト」(1982年)は、スピルバーグの原案・脚本で監督は、B級ホラー映画の鬼才であるトビー・フーパーである。彼は、「悪魔のいけにえ」「ファンハウス惨劇の館」を監督しており、この作品以後、「スペース・バンパイア」を監督して大ヒットをとばしている。音楽は、ホラー映画といえばこの人「オーメン」や「エイリアン」のジェリー・ゴールドスミス。アメリカの郊外が舞台。家族、子ども、ホラー映画、テレビというスピルバーグの好きなアイテムが網羅されている。そして、スピルバーグの少年時代の体験や記憶が色濃く反映されている作品として忘れてはならない。スピルバーグは語っている。「特に私が生まれ育ったアリゾナ州スコッツデールの町をイメージにセットをデザインした。」また、たびたびスピルバーグは撮影現場を訪れ指揮した。
ポルターガイストとは、死者の霊により心霊現象や超常現象を起こす力のことを言い、実際に起こっている。新興住宅に越してきた一家が、ポルターガイストに襲われる。主人公は、5歳の末娘キャロル・アン。彼女が、ふとしたことから何も映っていないテレビと交信をし始める。その後、数々のポルターガイスト現象が起きる。地震や停電がこの家だけに発生する。ある真夜中に7歳の長男ロビーが、雷鳴と稲妻で目を覚ますと大きな音をたてて窓の外の木が風の中で踊りだし枝が窓ガラスを破ってロビーを襲う。ロビーをつまみあげ窓の外へひきずりだす。そこへ父スティーブがかけつけてロビーを助ける。大木は、強風の中へ姿を消す。そして、とうとうキャロル・アンの部屋から彼女が消える。ここから、母ダイアンを中心にしての娘の救出劇が始まる。ダイアンが娘を助けようとする過程で、死霊の力により自宅の部屋の天井にへばりつけにされるシーンは、特に特撮の素晴らしさが感じられる。手がかりは、テレビから聞こえるキャロル・アンの声。そして、キーワードは、お墓である。「ジョーズ」と同じくホラー映画なのに何度も見たくなる面白さがある。