はがきのおくりもの

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孤独な決断

2014年01月10日 | 私家版学校経営試論

 危機対応で校長が最もつらいのは、孤独な決断を迫られることです。

 南海トラフ大地震の対応で、臨海学校の実施場所を伊豆の弓ヶ浜から新潟の瀬波海岸へ変更したときのことです。中心となって臨海学校を実施している保健体育科の教員の代表が校長室を訪ね、「臨海学校を伊豆の弓ヶ浜で続けるのが、保健体育科教員の総意です」と言ってきました。

 彼らは、瀬波海岸への変更についての調査も積極的に行い、実施が可能であることも確認していました。44年間弓ヶ浜で臨海学校を実施してきましたし、弓ヶ浜の海のほうが適度に荒れて卯高生にふさわしい実施場所だという主張もわかります。しかし、地震発生後、2分以内に1メートル程度の津波が到達するという事態に絶対に対処できません。そこで、心を鬼にして「臨海学校は弓ヶ浜ではなく、瀬波海岸で実施します。それが校長の判断です」と伝えました。

 臨海学校を実施するために情熱を込め、全力で準備してきた教員たちの意見です。情の部分では、受け入れてあげたい気持ちでしたが、生徒や教職員、協力してくれる卒業生の安全を考えると、そうはいきません。

 校長の判断を伝えると、保健体育科の教員たちは「わかりました。瀬波海岸での実施に向けて準備します」と、晴れ晴れとした顔をして席を立ちました。その日から実施場所の変更に向けて全力で取り組んでくれ、無事に瀬波海岸での臨海学校をやり遂げました。

 どうやら自分たちの気持ちを伝えても校長の決断は変わらないことを理解した上での行動だったようです。

 しかし、そのことを感じたのは校長の判断を伝えた後でしたから、保健体育科の総意で弓ヶ浜で続けたいと言われた瞬間には、つらいものがありました。しかし、上述したように校長の判断を貫き通しました。

 孤独な判断を下す際には、優先順位を自ら納得するまで考えることが大切です。このときの優先順位は、第1位が命、第2位が臨海学校を継続実施すること、第3位が例年通り弓ヶ浜で実施することととらえました。そして、優先順位の第1位と第2位は両立するが、第1位と第3位は両立しないと判断し、臨海学校を弓ヶ浜ではなく、瀬波海岸で実施すると判断しました。


【危機時の管理職心得】
  ⑨ 孤独な判断を下す際には、優先順位を自ら納得するまで考える

 前年度、東日本大震災後、大津波の心配があったなか、弓ヶ浜での臨海学校実施を決めた際には、

  伝統行事だから何としてもやる、というのは判断停止
  単に不安だからやめよう、というのも判断停止

という2つの判断停止に陥らないように気をつけました。その上で、安全確保を優先順位第1位として検討し、安全が確保できると判断し、弓ヶ浜での実施を決めました。しかし、データが変化し、安全が確保できないときには、いつでも中止すると宣言しました。

 危機時の管理職心得を書き出してみたら、9つになってしまいました。心得が多いのは、危機時にはそれだけ管理職の役目が大きいからです。平常時に危機時の対応についていろいろと思いを巡らしていることが校長の仕事かもしれません。生徒や教職員などには見えない仕事ですが。

 平常時にはあまり存在感がなくて教職員がのびのびと教育活動を行っており、危機時には存在感のある管理職というのが理想の管理職の姿ではないかと思っています。


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