オフィス・ヤハのトホホな日々

エホバの証人の一プログラマが聖書研究と自転車の趣味等を徒然なるままに

将棋史上この一局

2009年09月05日 | 将棋
    ちと古いが未だに興奮冷めやらぬ、第21期竜王戦七番勝負。図は、昨年12月18日(木)の最終第七局の中終盤。


                


    パリでの第一局のダメージが残ってずるずると三連敗した後、第四局の奇跡の打ち歩詰め勝利から三連勝で、遂に将棋史上初の三連敗四連勝という大逆転の可能性が出てきた。どちらが勝っても、永世竜王の権利を得るという注目の大一番だけに、ネット中継にくぎ付けになって第七局を観戦していた。そして、二日目の午後三時過ぎになってこの局面である。

    アマチュアの二・三段レベルではとても難解で適確な形勢判断など不可能なのだが、ここで露骨に5二金で飛車を取られたら羽生相手ではもう勝ち目ない。少し読んでみたが、もうだめだ。かわいそうな渡辺明さん。奇跡の大逆転の可能性でいくら周りが盛り上がっても、最後に負けてしまえばマスコミはこぞって羽生永世七冠達成のニュース一辺倒だ。

    その喪失感やいかに。過去にも王将戦で佐藤棋聖が三連敗後三連勝したことがあるが、最後は佐渡島決戦で無念の敗退。あの時も終わってみれば、やっぱ羽生でしょ的なマスコミの論調だった。佐藤棋聖の奥さんも同伴してきて、対局中は佐渡島観光で時間を過ごしていたが胸中はいかに。

    М日新聞は、羽生が三連勝した時点で、もう時間の問題とばかりに「永世七冠まであと一勝」の見出し。対照的に、渡辺竜王への気遣いというか同情を込めた扱いがA日新聞だった。竜王がやっと一矢報いた時、「竜王まず一勝」と書いた。羽生相手に一勝しただけではまだまだ絶望的ではあるものの、A日新聞は私の(そして、あの時の竜王の)心情を代弁していた。この時のМ日新聞の記事は、「羽生永世七冠お預け」だった。こうも違うのだ。

    主催のY売新聞でさえ、論調は一応客観的な報道の姿勢を保ってはいたが、渡辺の防衛は絶望的という主観が感じられた。

    で、話は図の局面に戻るが、当然の5二金で終わりと覚悟を決めて、今夜は集会もあることだし、後は集会から帰ったらこっそりとニュースで結果を見て一人で渡辺さんを悼もうと思った。集会中は全く将棋のことなど頭をよぎることも無かった。

    しかし、その後の展開は羽生変調が続いたらしい(パソコン将棋ソフトと同じ手を指したり。考えてみれば、空前絶後の永世七冠と国民栄誉賞がかかっていたんだものね)。竜王の驚異的な粘りと時の運も手伝って、何と奇跡の大逆転という結末。いろんなところの解説を読むと、中盤の3三銀が新手(BS放送解説の藤井九段は勉強会で若手が指して、竜王が採用したのを知っていた。アマの強豪、早咲さんは以前から指していた。私は浅く考えて3三銀で当然だと思っていた。)で、羽生を怒らせ(プロの感覚では、3三銀はものすごく身勝手で欲張りな手なのだそうな)、その後は壮絶な死闘。形勢は二転三転して羽生の勝ち筋が何度も生じた(竜王は何度も負けを覚悟した)ものの、一分将棋で指した▲2四飛が最後に△3五角の王手飛車取りで抜かれて、後手玉に詰みがなくなり結果論的に敗着となる。

    後日、羽生名人自身の解説によれば、5二金もあったが結構難しいとのこと。2三歩を先に入れて、後で6二金が指された。これも、プロたちに評判悪かった。しかし、羽生の手を狂わせたのは直前の名手△4二金か。竜王も凄い。羽生に襲いかかられて残せる棋士など何人いるか。さかのぼって、3三銀を許せなくて守りを後回しにしたのが、5二金では難しかった遠因になっていたのではなどと、生意気なことを言ってみる。

    第22期竜王戦決勝リーグでは、羽生名人は敗退し、とりあえず今年のリベンジはなくなった。この人も蛇のように執念深いから怖い。でも、いつかは来る。なんだか、ハルマゲドンみたい。


  
メギドのテル