スターバックスの前で所在なげに待っていたのは、銀髪の白人男性でした。軽く挨拶をして2人で店に入ると、
「何をお飲みになりますか?」
と、丁寧に聞かれ、
「ラテをお願いします。ショートで。」
と言うと、少し戸惑ったように、
「ラテ?ショートですね?」
と聞き返されました。
「発音がヘタだったかな。」
と思っていると、
「そのう、私はコーヒーを飲まないもので。」
と、こちらを気遣ってくれてから、彼はレジへ向かいました。
「やはり思った通り。コーヒーはお飲みにならないんですね。」
トールの紙コップに並々と入った、あまり美味しそうに見えない紅茶を飲んでいる彼に言うと、映画「インサイダー」のラッセル・クロウを少しエレガントにした感じのベル先生は、
「ええ、まあ。」
と曖昧に言って話題を変えました。多分スタバに入ったのは初めてで、ラテがコーヒーの1種で、それが普通のコーヒーとどう違うのかもご存知なかったことでしょう。香港にいるちょっと年配のイギリス人にはこんな人もいるのです。
この面接を経て、彼から英語のプライベートレッスンを受けることに決めました。これまでも移住に向けてケーキ作りやステンドグラス作りを習ったり、脱毛(!)を始めたりしていましたが、準備の一環として夫をはじめ、周囲に納得してもらうのが難しいものばかりでした(笑) でも英語を習うことにはかなり説得力があります。
「NZに移住するのだから!」
と、「キウイの英語の先生募集」と新聞に広告を出したり、知り合いのキウイに英語を教えている友人がいないか聞いてみたりしたのですが、いかんせんキウイは人数が少な過ぎ、見つかりませんでした。日本では駅前留学の先生にもかなりキウイがいると聞き羨ましく思いつつ、諦めてイギリス人の先生にしました。
そもそも英語を習うのですから、イギリス人で文句を言う筋合いはありません。お会いしたベル先生は24年間イギリス軍にいて、退役後に英語教師の資格を取り直したという折り目正しい人で、一目で気に入り契約しました。週2回ランチタイムにオフィスに来てもらい、みっちりしごいてもらうことにしました。
あまりにも理想にかなった先生だったので子どもたちにも教えてもらうことにし、夫にも勧めたら土曜の午前中という貴重な時間を割いて習うことになりました。これで西蘭家全員の英語がベル先生にかかってくることになりました。移住の頃には鼻から抜けるようなバリバリのクイーンズイングリッシュが!(話せるようになっているといいのですが・・・)
日本の英語教育はアメリカ英語を基準にしており、映画でもテレビでも耳から入って来るのは圧倒的に米語ですが、ここ香港は旧英領、同僚の西洋人の多くはイギリス人で、息子の学校もイギリス系のため先生も保護者もイギリス人やオーストラリア人など英連邦の人が主流です。移住先はNZなのですから、米語を習う理由は特にないのです。
ただ、何となく米メディアの影響力の強さからか、クイーンズイングリッシュは堅苦しくて、古臭い気がして、「How are you?」と言うよりも「What's up?」とやった方がカジュアルでフレンドリーな感じがするのではないかと、響きの違いもろくにわかりもしないのにそう思い込んでいる面もありました。ですからベル先生とお会いするまで一度も考えたことがなかったのに、彼の美しい英語を聞いているうちに、
「クイーンズイングリッシュを習おう!」
と突然前向きになりました。
「英語を習う目的を教えてもらえないだろうか?」
と聞かれ、
「まず日常会話。そして、いつになるかわからないけれど自分のウェブサイトをバイリンガル化したいのです」
と言うと、さすがにポーカーフェイスの彼も3cmくらい引いた感じでした。
「そりゃ、引くだろう。」
と内心思いながらも、相手は先生、こちらは生徒。どんな内容でも学びへの意欲は堂々と口にしていいはずです。千里の道も一歩から。アオテアロア(=ニュージーランド)目指して、Shall we go?
=============
編集後記「マヨネーズ」
ある夜、
「水着でも買ったら?」
と夫に言われ、
「明日は雪?」
と思うほどビックリしましたが、本当にめったにないことなので2人で出かけました。
夏休みに久し振りにバリに行くので、私が水着をほしがっていたのを突然思い出してくれたのです。香港ではデパートや大きなショッピングセンターが夜10時まで開いているので、夕食後でも十分買い物ができます。
香港系デパートのレーンクロフォード(通称レンクロ)へ行って水着コーナーに行くと、な~んとNZ製の水着発見!珍品と言っていいくらい見たことがない代物です。ハイレグ発祥のイスラエル製、リゾート気分いっぱいのオーストラリア製、セクシーで凝ったイタリア製などが並ぶ中、なぜか2枚だけ混じっていたキウイ・ビキニはともに黒一色で下着と見まごうようなシンプルなデザイン。
「こんなところまでオールブラックス?」
と思いながら、ちょうどサイズが合ったので敬意を表して試着してみました。上のブラ部分は可もなく不可もなく。さて下は?それが、ちょっと・・・・。2枚ともひと回り大きいんです。上に比べてワンサイズ大きい気がしました。レア物だったけれど着られないのでは仕方ないので断念。あれでは水から上がったら、絶対落ちるレベル💦
このメールが配信される頃には、早めの夏休みをとってバリのサヌールでのんびりしています。前半はお気に入りの山合いのウブドに4泊、後半はビーチに移りサヌールに3泊する予定。ヌサドゥアがどんどん開発され、クタが拡張の一途をたどっても西蘭家はハイアットホテルの城下町としてこぢんまりまとまったサヌール一辺倒。でも久しく行っていないので、どうなっていることか
=============
後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
この10年後に日本に進学した長男が大学時代のアルバイトで、キウイの先生として駅前留学で英語を教えていたのだから、人生なにが起きるかわからない(笑)
長い間バリの定宿だったサヌールのバリ・ハイアット。「再開するんだろうか?」と不安になるほど長かった5年の改装を経て、ハイアット・リージェンシーに格上げされて2019年にとうとうリオープン。
懐かしさのあまり「行ってみよう!」と夫婦で話がまとまり、予約を入れたのが2020年6月。もちろん、コロナの真っ最中で旅行はキャンセル。外国人がいなくなり、「バリの観光業は8割の落ち込み」とずい分前に読みましたが、問題の長期化でどうなっていることか。いつかの再訪を楽しみに。
「何をお飲みになりますか?」
と、丁寧に聞かれ、
「ラテをお願いします。ショートで。」
と言うと、少し戸惑ったように、
「ラテ?ショートですね?」
と聞き返されました。
「発音がヘタだったかな。」
と思っていると、
「そのう、私はコーヒーを飲まないもので。」
と、こちらを気遣ってくれてから、彼はレジへ向かいました。
「やはり思った通り。コーヒーはお飲みにならないんですね。」
トールの紙コップに並々と入った、あまり美味しそうに見えない紅茶を飲んでいる彼に言うと、映画「インサイダー」のラッセル・クロウを少しエレガントにした感じのベル先生は、
「ええ、まあ。」
と曖昧に言って話題を変えました。多分スタバに入ったのは初めてで、ラテがコーヒーの1種で、それが普通のコーヒーとどう違うのかもご存知なかったことでしょう。香港にいるちょっと年配のイギリス人にはこんな人もいるのです。
この面接を経て、彼から英語のプライベートレッスンを受けることに決めました。これまでも移住に向けてケーキ作りやステンドグラス作りを習ったり、脱毛(!)を始めたりしていましたが、準備の一環として夫をはじめ、周囲に納得してもらうのが難しいものばかりでした(笑) でも英語を習うことにはかなり説得力があります。
「NZに移住するのだから!」
と、「キウイの英語の先生募集」と新聞に広告を出したり、知り合いのキウイに英語を教えている友人がいないか聞いてみたりしたのですが、いかんせんキウイは人数が少な過ぎ、見つかりませんでした。日本では駅前留学の先生にもかなりキウイがいると聞き羨ましく思いつつ、諦めてイギリス人の先生にしました。
そもそも英語を習うのですから、イギリス人で文句を言う筋合いはありません。お会いしたベル先生は24年間イギリス軍にいて、退役後に英語教師の資格を取り直したという折り目正しい人で、一目で気に入り契約しました。週2回ランチタイムにオフィスに来てもらい、みっちりしごいてもらうことにしました。
あまりにも理想にかなった先生だったので子どもたちにも教えてもらうことにし、夫にも勧めたら土曜の午前中という貴重な時間を割いて習うことになりました。これで西蘭家全員の英語がベル先生にかかってくることになりました。移住の頃には鼻から抜けるようなバリバリのクイーンズイングリッシュが!(話せるようになっているといいのですが・・・)
日本の英語教育はアメリカ英語を基準にしており、映画でもテレビでも耳から入って来るのは圧倒的に米語ですが、ここ香港は旧英領、同僚の西洋人の多くはイギリス人で、息子の学校もイギリス系のため先生も保護者もイギリス人やオーストラリア人など英連邦の人が主流です。移住先はNZなのですから、米語を習う理由は特にないのです。
ただ、何となく米メディアの影響力の強さからか、クイーンズイングリッシュは堅苦しくて、古臭い気がして、「How are you?」と言うよりも「What's up?」とやった方がカジュアルでフレンドリーな感じがするのではないかと、響きの違いもろくにわかりもしないのにそう思い込んでいる面もありました。ですからベル先生とお会いするまで一度も考えたことがなかったのに、彼の美しい英語を聞いているうちに、
「クイーンズイングリッシュを習おう!」
と突然前向きになりました。
「英語を習う目的を教えてもらえないだろうか?」
と聞かれ、
「まず日常会話。そして、いつになるかわからないけれど自分のウェブサイトをバイリンガル化したいのです」
と言うと、さすがにポーカーフェイスの彼も3cmくらい引いた感じでした。
「そりゃ、引くだろう。」
と内心思いながらも、相手は先生、こちらは生徒。どんな内容でも学びへの意欲は堂々と口にしていいはずです。千里の道も一歩から。アオテアロア(=ニュージーランド)目指して、Shall we go?
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編集後記「マヨネーズ」
ある夜、
「水着でも買ったら?」
と夫に言われ、
「明日は雪?」
と思うほどビックリしましたが、本当にめったにないことなので2人で出かけました。
夏休みに久し振りにバリに行くので、私が水着をほしがっていたのを突然思い出してくれたのです。香港ではデパートや大きなショッピングセンターが夜10時まで開いているので、夕食後でも十分買い物ができます。
香港系デパートのレーンクロフォード(通称レンクロ)へ行って水着コーナーに行くと、な~んとNZ製の水着発見!珍品と言っていいくらい見たことがない代物です。ハイレグ発祥のイスラエル製、リゾート気分いっぱいのオーストラリア製、セクシーで凝ったイタリア製などが並ぶ中、なぜか2枚だけ混じっていたキウイ・ビキニはともに黒一色で下着と見まごうようなシンプルなデザイン。
「こんなところまでオールブラックス?」
と思いながら、ちょうどサイズが合ったので敬意を表して試着してみました。上のブラ部分は可もなく不可もなく。さて下は?それが、ちょっと・・・・。2枚ともひと回り大きいんです。上に比べてワンサイズ大きい気がしました。レア物だったけれど着られないのでは仕方ないので断念。あれでは水から上がったら、絶対落ちるレベル💦
このメールが配信される頃には、早めの夏休みをとってバリのサヌールでのんびりしています。前半はお気に入りの山合いのウブドに4泊、後半はビーチに移りサヌールに3泊する予定。ヌサドゥアがどんどん開発され、クタが拡張の一途をたどっても西蘭家はハイアットホテルの城下町としてこぢんまりまとまったサヌール一辺倒。でも久しく行っていないので、どうなっていることか
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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
この10年後に日本に進学した長男が大学時代のアルバイトで、キウイの先生として駅前留学で英語を教えていたのだから、人生なにが起きるかわからない(笑)
長い間バリの定宿だったサヌールのバリ・ハイアット。「再開するんだろうか?」と不安になるほど長かった5年の改装を経て、ハイアット・リージェンシーに格上げされて2019年にとうとうリオープン。
懐かしさのあまり「行ってみよう!」と夫婦で話がまとまり、予約を入れたのが2020年6月。もちろん、コロナの真っ最中で旅行はキャンセル。外国人がいなくなり、「バリの観光業は8割の落ち込み」とずい分前に読みましたが、問題の長期化でどうなっていることか。いつかの再訪を楽しみに。