goo blog サービス終了のお知らせ 

limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター DB ⑳

2018年02月05日 20時09分16秒 | 日記
「お久しぶり、Jです」電話口から聞き覚えのある声が呼びかけて来る。「何故、今回の件でこれほどまでの大仕掛けをされるのです?」私はミスターJに問うた。「あまり時間が無いので、細かな事は、後々手紙にでも記してお知らせしますよ。まずは、もうKやDBは貴方に手出しが出来ないと断言して起きましょうか。返事は結構。私が一方的に喋るのを黙って聞いて下さい。彼等は貴方を精神修行とやらに送り込む予定で、今回こそ拉致しようとしましたが、穴だらけの計画が上手く行く筈が無い。徒労の斧では拉致など成功はしません。貴方はこれから病院へ帰って頂きますが、私の仲間達と内応してくれている多数の社員達の為にも、無事にも帰り着く義務がある。そのためにも、後半戦にもさまざまな仕掛けが施されてます。KやDBが自由気ままに闊歩する時代は終わったのです。彼等は退場するべきなのです。これからは貴方達が活躍する時代だ。そうした世代交代を一気に進める為に、貴方の様な犠牲者を2度と出さないためにもY副社長やI氏に手を貸したのです。KやDBは仇敵だが、今回は未来のための投資でもある。だから、今回の事は思想信条抜きです。貴方を助ける事は、若い社員達を助ける事に通じているのです。だから、私は最大限の知恵を絞り、仲間達を集め戦いに加わったのです。理由はそれだけです。共に勝利を勝ち取りましょう!さて、女性に代わっていただけますか?」「ありがとう。代わります」ミスターJの思いは分かった。思想信条は相容れないところはあるが、人間としてはKやDBの様な輩に比べれば明らかに「暖かみ」がある。人としては「当たり前の事」を彼等はやってくれているのだ。「はい、2台はこちらから目視できる範囲に居ます。1台は国道との分岐点付近に、もう1台は国道から北側の団地へ入る地点で確認されました。包囲しているつもりです。はい、間も無く姿を現わすと思います。スペシャルゲスト?!誰ですか?見ていれば分かる?!はい、彼は落ち着いています。分かりました。待機します。監視は怠りません。了解です」看護師の女性は電話を切り、私に言った。「もうすぐKとDBが現れるはずですが、心配はいりません!Jさんによれば、スペシャルゲストが来てくれるそうなので、彼等は破滅するそうです。様子を見ていましょう!」一体誰が来ると言うのか?私は2階の角部屋から外を伺った。KとDBと部下達が屯ろしているのが見えた。DBの手にはロープと手錠らしきモノがぶら下がっている様だ。明らかに「捕縛」の手筈を打ち合わせている。奴らが自宅への道を歩き始めようとしたその時、1台の車がクラクションを鳴らしながら行く手を阻むように突っ込んで来た。車から降りて来た人物は、大声でKとDBを制止して前に立ちはだかった。「まさか」私の体の血が熱くなった。立ちはだかった人物とは、誰あろう「Y副社長」だった!事業所長も飛び出して来て、部下達を制止している。運転していたのは「S部長」。かつての上司だった。鷹に睨まれたKとDBと部下達は、バツの悪い悪童そのものだった。最早、言い逃れは不可能。立ちすくむ以外にない。「決定的ね。破滅だわ」「ああ、奴らは全てを失った。失職モノだな」2人が言う通りだった。一瞬で立場は逆転したのだ。KとDBにとっては天国から地獄への転落の時だった。

ミスター DB ⑲

2018年02月05日 10時21分52秒 | 日記
降りる予定のICまでの距離は残り僅か、しかも、その手前のPAには2台目の追跡車両が待ち構えている。指示は「JCTまで突っ走り、東京方面へ向かえ。最初のICで高速を降りよ!」と言っている様だ。「前門の狼」である2台目の追跡車両をどうやってかわすのか?「後ろの護送部隊は何と言っている?」男性が問う。「こちらとは900m以上は離れているそうだわ」看護師の女性が冷静に答える。「ヘリでも飛んでいない限り、正確なタイミングを計るのは不可能だ。PAの車は無視して進もう!どっちにしても、空振りにしかならない。上手い具合に大型トラックやバスが走行車線を塞いでくれているし、道は思っている以上の上りだ。一気に突き放してJCTへ向かえば、勝手に向こうが迷ってくれそうだ」男性の運転で私の車は走行車線の車両を巧みに盾としつつ、追い越し車線を駆け上がりJCTへとひた走った。「護送部隊より連絡よ。1台は当初の予定通りのICで降りたそうだけど、3台の新たな追跡車両がこちらへ向かっていると言っているわ」看護師の女性が更に続けて「新たな追跡車両は、大型車両に阻まれて差を詰め切れない模様。残る護送部隊は妨害走行から監視走行に切り換えると言っているわ。そして、Jさんから指示。東京方面へ向かえ。最初のICで降りて市街地に紛れ込めと。ポイントブラボーをX地点から東方向のZ地点に変更するそうよ。どうやら目先を逸らせる事に成功したみたい」声が明るくなっていた。「予定通りだな。今JCTを通過したと伝えてくれ」男性も安堵したようだった。追跡車両は5台にまで膨れ上がっていたが、私の車に迫ってこれそうな追跡車両は来なかった。案の定、JCTで名古屋方面へ1台が逸れて行ったと連絡があり、更にSAへ1台が下りて行った事も確認された。その頃、私の車は高速を降りて市街地へと紛れて行った。残った追跡車両の内、1台は東京方面へそのまま走り続けた為、背後から追って来るのは2台となった。しかし、1台はSAへ寄り道をした関係で遅れている。追跡車両は文字通り「四部五裂」になり、私を「捕縛する」企みは半ば潰えた。まだ完全ではないが・・・。護送部隊の1台と私の車は市街地内で合流し、後部に張り付いた。残る1台はポイントブラボーに先回りしており、前を固めた。私の車は何とDBの自宅付近を堂々と走り抜け、山間地へ向かいだした。「間もなく携帯の電波が圏外になる。無線通話に切り換えるわ」看護師の女性がトランシーバーを取り出して、感度確認を開始した。「KやDBもトランシーバーを持っているはずと思うでしょ?でもね、彼らが持っているヤツにはNさんがある細工を施してあるわ。こっちの電波を拾えないようにね!」私はNさんの名前を聞いて驚いた。「大丈夫、Nさんも内応者の1人よ。Iさんは知らないけれど、他にも大勢の人達が内応者として参加しているわ。KやDBに反感や嫌悪感を持っている人は意外と多いってJさんが言っていた。みんな貴方を救う事でKやDBに反旗を掲げていると示したいのよ!だから、絶対に貴方を救うってみんなが結束したの。安心して、みんなが貴方を無事に病院へ帰してくれるわ」予想以上にミスターJの秘密組織は堅固で強力なものの様だ。今回限りではあろうが、この組織を散ずるのが惜しくてたまらなくなった。やはり「リーダーの器」が組織には必須なのだと思い知らされ、低迷する事業部を立て直すには、KやDBの様な「老害」は一刻も早く切り捨てるべきだと思った。「はい、感度良好。ええ、分かったわ」看護師の女性が沈黙を破った。「追跡車両が追い付いて来たようよ」「もう遅い。間もなく自宅だ。手出しすら出来ないよ」男性が笑いながら答えた。見慣れた景色が広がっていた。自宅までもうすぐ。国道を逸れる際に、護送部隊は離れて行った。坂道を上り詰めた先の家。そこが私の家だった。車庫入れを終えると、男性が言った「荷物は積んだままにします。家の鍵を貸してください。後で必ずお返しします。家の固定電話を使いますが、通話履歴は削除しておきますのでご安心を。とにかく家へ入りましょう。Jさんが貴方と話したいそうです」「ミスターJが?!」私が半ば驚く中、男性は「無事かどうかを直に確認したいそうです」と答えた。「護送部隊へ、追跡車両に気付かれないポイントへ散開して。それから追跡車両の停止位置と人員を至急確認してちょうだい」看護師の女性が指示を送っている。私は自宅に入り、リビングの暖房を入れた。ここからまた「極秘裏に病院へと帰る」と言う大仕事が始まる。周囲には追跡車両が鉄の鎖を張り巡らせるはずだ。あわよくば、私を捕縛して「精神修行」とやらへ送り込もうと狙いを定めているはず。包囲網をどうやって「突破」するのだろうか?答えはミスターJに聞く以外になさそうだ。「Jさんが呼んでおられます」男性が受話器を差し出した。「もしもし?」私はミスターJとの奇妙な会談に臨んだ。