竪穴住居の耐用年数は20年前後とされているが、長者ヶ原遺跡の復元竪穴住居は限界に近づいてきたようだ。

二年前から倒壊の恐れがあると立入禁止になった「1号建物」は、冬をこえたら一目で傾きがわかるくらいになってきた。

最も大型の11号住居の茅葺も抜け落ちて隙間から陽光が差し込んでいた。

煙だしの部分の棟が損壊しつつある3畳もない小型の16号住居は、一棟だけ墓域の中央広場に背を向けているので、集落の営みから一線をひいた「ご隠居の家」と名付けてガイドしているが、中にはいると寛げるので「縄文のお茶室」とも呼んでいる。

住居に囲まれた墓域の広場は、秋になると土が筋状に掘り起こされる現象があり、エサを求めたイノシシが掘り起こした痕跡と推測していたが、「自然界の報道写真家」を自称するプロカメラマンの宮崎学さんに確認してもらったら、やはり「イノシシの仕事」であるとのことだ。
年に何度もガイドしたり、縄文キャンプのコーディネートをしているわたしでも遺跡内で野生動物を観たことはないが、シカを目撃したとも聞いたので、誰もいない夜は「野生の王国」になっているのだろう。
余談だが二年前にNHK特集で宮崎さんが紹介されて、モノの観方やなんでも自作する撮影スタイルのファンになり、SNSでつながり糸魚川のガイドをしたりしていた。
ご自身が主宰する「gaku塾」に入会を誘われて、今年から野生動物の痕跡や生態、棲家の探し方など教えてもらえる師弟関係になったのは、長者ヶ原遺跡に棲む野生動物の生態を研究するためだ。
ジブリアニメ「平成たぬきポンポコ」では高畑勲監督にタヌキの生態を指導するなど、マタギなみに野生動物に詳しいプロフェッショナル。
長者ヶ原遺跡の朽ちゆく竪穴住居は、人類が誕生して以来、繰り返してきた集落の繁栄と衰退、そして野に還っていった歴史をうかがわせ、諸行無常を感じる。
人口減少の税収減による財源の問題があるから、竪穴住居の建替えをするにしても、あと1回くらいではなかろうか?繁栄と衰退は地方自治体、そして国家も同じ・・・。
例え財源不足で朽ちるに任せる状況になっても、ヒトはこうやってイノチを繋いできたという、立派な歴史教材だ。
ブラックジョークではなく、朽ちゆく竪穴住居にモノの哀れを感じて神妙になる。
諸行無常を感じたい人、長者ヶ原遺跡に遊びに来てちょうだい。