8月に縄文土器体験会をした作品を、再び森林公園で野焼きした。
最初は焚火の周りで炙り焼きして、土器の水分を飛ばす。
ボランティアスタッフに知恵のある大人がいて、主旨を理解してベニア板で反射板と多段式の棚を組み立ててくれた。「大和川おやじ倶楽部」は偉い!
大人達が鉈で薪作りをして焚火を始めたら、いつの間にか参加した少年が鉈で遊んでいた。
危なっかしかったけど、好きにさせて見守っていた。
少年が真剣に刃物を扱う姿が微笑ましく、頭を撫でてやりたくなった。
女の子たちも、ノコギリで遊びだした。押す時には静かに、引く時は一気に鋭くとアドバイス。
子供の内に危険な刃物を真剣に扱う経験をすることは必要だと思う。
私の少年時代も、器用で何でもできる母方の爺さんが包丁を砥ぐ姿が格好良くて、真似している内に刃物が研げるようになったし、よく切れる刃物で仕事する楽しさを知ったのだ。これは生涯の財産。
怪我も一杯したけど、色んなことが学べた。
重要なのは、色んなことができる大人の姿を子供に見せることだろう。
子供達は、そんな大人の姿を見て真似したくなるものだ。
大和川区の「おやじ倶楽部」は、そんな理想的な環境作りに成功している。
野焼きの時には、パンも焼いた。
火傷した子もいたけど、少しくらいの怪我や火傷したっていいじゃねえか、と思う。
刃物遊び、火遊び・・・危険な遊びほど面白いし、何時か何かの役に立つもんだ。
炙り焼きが終わったら、中央に土器を寄せて焚火で囲み、徐々に焚火を大きくしていく。
体験会が終わったあとは、おやじ倶楽部の面々と焚火を囲んで語らう。
こんな大人が揃っている地区は、いい子供が育つに違いない。
2週間前に友人の赤野さんの家で作った土笛を、再び赤野家で焼成。
赤野さんの新居移転祝いに、長男のテンドウ君が描いた赤野さんの似顔絵をモデルにオカリナを作った。
ちゃんと音は出るが、子供が勢いで描いた絵を立体にするのは難しいのだ。
今回は小型のオカリナばかりなので、縄文式の野焼きではなく、燃料に炭を使ってバーベキューグリルで焼成した。
この方式は、バーベキューが出来る環境なら、住宅街でも縄文土器が焼けるのである。
手順は簡単。
カラカラに乾燥させたオカリナ(または土器)を、弱火の遠火で少しずつ炙っていく。
今回はグリルの上に最初に鉄板を乗せて、次に網に代えて遠火のまま、弱火から強火状態にした。
トングで向きや位置を変えたりして均一に熱くしていく事。
右が赤野さん。
左の女性は、縄文人(見習い)の見習いになった柏崎のちいちゃん(笑)。
ここで焦って温度を上げると、急激な温度変化で爆裂してしまうので、コツは炭火でサンマを焼く火加減より、若干低い温度で気長に土器の水分を飛ばすこと。
それと重要なのは、炭はホームセンターで売っている安いバーベキュー用でも良いが、温度ムラを作らない為に、炭を鉈で割ったり、ハンマーで叩いて均一な大きさにしておく事。
30分から1時間も炙れば、白っぽかった土器が赤黒く変色してくる。
グリルの中の炭火を端っこに寄せて、スペースを作った中央に赤黒く変色した土器を乗せる。
土器の周囲を熾火で囲むのである。
端っこに寄せた炭火の上に新しい炭を補充して、自然に燃え移らせる。
30分くらいかけて少しずつ炭火の包囲網を狭めていき、完全に包囲したら新しい炭を土器の上に乗せる。
新しく乗せた炭が自然発火して全体が赤くなって更に30分~小一時間で焼成完
了。
20個くらい焼いて全部成功!
火加減を見極めることさえできれば、野焼きではなくても、バーベキューグリルや七輪コンロでさえ、縄文土器は焼けるのである。
悔しいことに、焼成が終わって写真を撮る前に、モデルの絵が一重瞼から二重瞼に描き加えられてしまって、雰囲気が似なくなってしまった(泣)
冬になって暇になったら工房に籠って練習しようと思っていた矢尻作りだが、何年も暇にならないので、ぬなかわヒスイ工房の仕事の合間に開始した。
矢尻作りの道具はシンプル。
黒曜石を叩いて小割するハンマー兼整形道具の鹿の角だけである。
木のハンドルが付いた道具は、私の縄文の師匠である古代技術研究家の関根秀樹先生のそのまた師匠である、和光大学名誉教授の岩城先生が誰でも気軽に矢尻作りができるようにと考案した、銅線を嵌め込んだ鹿角の代用品。
黒曜石は天然ガラスなので、硬い石や金属製品で加工しようとすると粉々に砕けてしまうので、原始人達は大割は石のハンマー、小割と整形は鹿角で打製石器を作っていたらしい。
しかし現代人が鹿角を入手するには難しい。
第一、どこで鹿角が買えるのか???
そこで岩城先生が考案したのが、銅線利用の鹿角の代用品という訳だ。
実際、使い比べると代用品のほうが扱いやすいのだ。
ユーチューブで検索したら、外人が同じ道具で打製石器を作っていたので、岩城流が外国まで広がっているという事・・・流石である。
左から栄養ドリンクの空き瓶、青い日本酒の空き瓶、クリスタルガラス、右端が黒曜石で作った矢尻。完成度は60点くらいかな?
黒曜石は購入品なので、練習はガラス瓶で行う。
ガラス瓶のほうが硬いので、これで練習しておくと黒曜石の加工はずっと楽。
矢尻が満足できるレベルになったら、次はナイフを作りたい。
「もののけ姫」の主人公、アシタカが胸に下げている「珠」とは、黒曜石のナイフ。
アシタカナイフが目下の目標だ。
この冬までに完成させたいもんだ。
縄文オカリナの新作!
縄文晩期(三千~二千五百年前)の秋田県能代市の麻生遺跡出土の土面をモデルにした縄文オカリナ。
表面がピカピカに磨かれており、黒く燻し焼きされている。
日曜は、友達の赤野さん一家を中心に、子供たち相手の縄文土笛つくりの教室。
毎回のことながら、子供たちはすぐに飽きて他の遊びに夢中になっていたけど、大人のほうが夢中になっていた。
実は縄文土器つくりも土笛つくりも、泥んこ遊びの延長なのだ。
大人が子供に帰って泥んこ遊びしている姿は可愛い。
「見て~!」
子供の作品は、奇想天外なデザインばかりでニンマリしてしまう。
大人たちは、子供の喜ぶ顔が観たいと色んな遊びを考える。
でも当の子供はすぐに飽きて他の遊びに夢中になる・・・。
こんな現場を目の当たりにしていると、子供を支えている、という大人の想いが、実際には子供に支えられていると思えてくるのだ。
ありがとう、子供たち!
土笛を友達に見せて周っている。
どこでも受けるが、アニメキャラ以外の一番人気は埴輪形の土笛だ。
ブログやフェイスブックで見ていた人から、実物がこんなに小さいとは思わなかったという感想が多かったので、友達のお嬢ちゃんにモデルになって貰って大きさの比較写真を撮った。
みて~っ!って感じが可愛らしい。
モアイは予想通り人気。
縄文時代の土偶は一部の人にしか受けないのは意外でもあり心外だ。
縄文時代中期(五千~四千年前)の土偶をモチーフにした土笛。
子供には怖い印象を与えるようだ。
クニという概念できた弥生時代以降は、社会的には貧富の差や身分の格差が発生し、民衆の自由度は低くなっていた暗い時代と思っていたのだけど、埴輪には微笑ましい印象のデザインが多いのは何故だろう?
左手を頭に当てている埴輪を、私は林家三平形埴輪と呼んでいる(笑)
「ドーモ、スイマセンッ!」っていう感じしませんか?
10月に予定されている縄文土器の野焼きまで待ちきれずに、乾かしてした土笛を焼いた。
モアイ揃踏み。海岸に並べてみたい感じだ。
アクセサリーとしても使えるようにペンダント仕様になっているが、演奏する時に笛を落として壊さない工夫でもある。
石笛のプロ演奏家や神職さんの顧客が多い「ぬなかわヒスイ工房」が作るから、演奏用の笛として機能するのは当然!ちゃんと音色の調整と、音階変化ができる工夫がされているのだ。
この埴輪を観る度に、「どうもスイマセン!」と額に手を当てる林家三平を想い出す。
縄文時代の土偶は、オドロオドロシイ印象を与えるが、古墳時代の埴輪は剽軽な感じのものが多い。
叫び!・・・中央の黒い土笛は、焼成の後に「炙り焼き」という炭素を吸着させた技法によるもの。縄文晩期(三千~二千五百年前)に流行る焼き方で、当時は焼成直後の熱い土器を松葉などに包んで行っていたと推定されている。
縄文時代の土偶をモデルにした土笛。
信州の土偶をモデルにした土笛。
コダマ、大魔神、アンパンマン!予想通り、友人の子供たちに見せたら「チョーダイ!チョーダイ!」と大合唱になったので、暇になったら友人宅で土笛作りの体験会をすることになった。
著作権のないキャラは、ぬなかわヒスイ工房ネットショップで売ってやろうかな。
石笛と違って造形に制限を受けないので、作っていてアイデアがゾクゾクと出てきて困っているのだ。
ぬなかわヒスイ工房では、誰もやっていない作品開発を意欲的にしているが、新しい世界が開けてくる感覚って好きだし、人の真似やパクリは面白くない。
縄文式土笛の質問があったので、構造と作り方を公開。
息を吹き込む孔がある中空構造を作ると、取敢えず音は出る。
鉛筆キャップやビール瓶を吹いて遊んだことのある人なら簡単。
ただ、良い音色の土笛を作るにはそれなりのノウハウがある。
吹き口のアップ。吹き込んだ息の半分から七割くらいが中空の中に入ってくれることが重要。エッジの工夫がいるのである。
吹きながら、エッジの微調整をしていくと、綺麗な倍音が出てくれる。
裏には音階調整用の指孔を開けたが、これは好みで無くても大丈夫。
指孔付きの土笛を作っていて閃いたのが、石笛にも指孔を開けるというアイデア。
友人の石笛仙人、守山鷲声さんはアメージンググレースを始めとした複雑な曲を演奏しているが、石笛で自在に音階調整するのは難しい技術。
試作したら、能管みたいな音色の石笛が出来た・・・すぐに売れた!
大魔神みたいな複雑な造形に挑戦するのは面白い。
造形が終わったら一週間ほど自然乾燥。
焚火の周りで炙り焼きして、土笛の色が赤くなってきたら野焼きすればお終い。
土器と違って短時間に焼けるので、七輪コンロでも焼ける。
以上!
8月に縄文土器講座講師をしたら、久し振りに土器の創作意欲が湧いてきた。
土笛作りである。
子供達に既成概念から離れた遊びを提示するために、キティーやムンクの叫びをモデルにした土笛見本を作ったのだけど、講座が終わってからも次々とアイデアが湧いてきて、ぬなかわヒスイ工房の本業そっちのけで作り始めてしまった。
埴輪、モアイ、縄文の土偶、叫びのバリエーション、もののけ姫に出てくる森の精霊「こだま」、大魔神、アンパンマンなどなど・・・。
土偶形土笛のモデルは、青森や信州の土偶が多い。
首からぶら下げられるペンダントにしてある。
土偶そのままだとアクササリーや土笛にならないので、あくまでもデザインは創作。
意外にも大魔神は簡単に作れた。リアルに作るには小さ過ぎるのが残念だが、眼を点にして汗を流す大魔神も悪くない。なんか戸惑っているよう。
あんまり面白いので、アニメキャラ以外の土笛は、ぬなかわヒスイ工房ネットショップでも売ってやろうと目論んでいる。
縄文式の土笛の音の出し方は石笛と同じだから、石笛初心者の練習用である。
石笛も新しいアイデアがドンドンと湧いてくる・・・時間がなくて困っている。
「海のヒスイ・ロード」旅で知遇を得た友人達が続々と糸魚川に遊びに来ている。
ぬなかわヒスイ工房のお客さんや、古い友人達もやってきて、8月だけで19人も案内した。
三ケ月も仕事を休んでいた、「ぬなかわヒスイ工房」を再開。
最初に作ったのは、ネコ形ピンバッチ。
上から時計まわりで、ラベンダーヒスイ、珪質頁岩、石英斑岩、鉄石英、蛇紋岩、石英斑岩。
目には福井産の漆が塗られている。ヒスイだけが糸魚川の石じゃないぜ!
誰もが「糸魚川って面白い所ですねえ!また来たいです。」と言ってくれるし、中には実際に二週間で三回も遊びに来てくれた人もいた。
千客万来だ。
糸魚川が面白いというより、どんな土地でも面白さはあると思うのだ。
要は見所や面白さを発見した人が、どんな伝え方をするかという問題だと思う。
奴奈川姫終焉の地と伝説がある稚児ケ池。
糸魚川市の人でも知る人が少ない場所だが、住宅地のすぐ裏の山の中にあるのだ。古代史好き、パワースポット好き、ヒスイ好きなら面白い所。
親不知も天瞼の崖下に降りると、ちょっとした冒険気分が味わえる。
かっての北陸線のトンネル潜りも冒険気分が味わえる。懐中電灯は必携。
崖下に僅かに残った浜では、ヒスイを始めとした色んな石が拾える。
普通の人には単なる石ころでも、石の名前と人とどんな関わり合いがあるかを知っている人と一緒なら、糸魚川の海岸は宝の山に観えてくる。
チャートや珪質頁岩は縄文人が矢尻を作った石、蛇紋岩は磨製石器を作った石、石英は火打石に利用できる等の説明があると、俄然と面白くなるのだ。
石拾いに飽きたら、海に石を投げてピョンピョンと跳ねさせる、「水平投げ」を教えたり、昼寝したり、海に潜ったり・・・海は色んな愉しみ方ができる。
糸魚川といえばヒスイが有名だ。
前から声を大にして言っていることだが、ヒスイだけが糸魚川の石じゃないのだ。
だから私は、「ぬなかわヒスイ工房」を作って、ヒスイ以外の石にもスポットを当てている仕事をしていきたいし、鉱物そのものではなく、それらと人がどんな付き合い方をしてきたのかを発信していきたい。
風光明媚というだけなら、秋田の男鹿半島には遠く及ばないし、縄文時代の文化というだけなら青森の三内丸山遺跡に比べるとインパクトは少ない。
オンリーワンの糸魚川の魅力は、フォッサマグナに育まれた風土と人の歴史。
私はそういった焦点の当て方をして情報発信している。
8月23、24日は大和川公民館主催で、子供たちのサマーキャンプがあった。
大和川区には、「おやじ倶楽部」という保護者の会があって、これまで意欲的にイベントを行ってきた経緯があり、今回は公民館主催のサマーキャンプをバックアップすることになったらしい。
「子供は国の宝」とは戦前の標語らしいが、今時の田舎では意欲的で行動力のある大人達の存在は宝だ。
遊びや生活技術、他人との付き合い方など、かってのように日常生活の中で子供たちが学習する機会が少なくなってきている。
だから、おやじ倶楽部のような存在は貴重だ。
おやじ倶楽部には高校の後輩がいて、キャンプの一環で私に縄文土器講座を頼んでいたのである。
キャンプ場所は、大和川区の森林公園。
高台にあるので夜は寒かった。
カレーと豚汁、流し素麺というキャンプ定番の食事、朝は正しくラジオ体操という正しい日本の林間学校。
子供は無言でラジオ体操するが、大人たちは「ウワ~」「あ”~」と呻きながら体を反らせたのは笑った。
参加した子供たちは31名。
正直いって、縄文土器初心者対象の体験会では一人で面倒が見られるのは5人が限度。
まあ、楽しければいっか、という訳で賑やかに遊んできた。
小学生が相手でも、縄文土器と弥生土器、古墳時代以降の土器の違いをきちんと説明するし、縄文土器の名の由来である縄文の付け方や、その意味を説明するのが私流。
後から保護者から解り易かったと受けたようだ。
低学年の作品は面白い・・・なんだこれ???・・・可愛いなあ、と頭を撫でてやりたくなる。
上の写真の子供の作品。不思議なオブジェが出来たが、粘土に隙間が多く複雑な形状なので、野焼きすると割れてしまうだろう。
子供たちの作品を観て回ったら野焼きの段階で土器が割れる可能性が高い作品が多いので、失敗のない土笛も作らせた。
私が作った見本がこの3つ。
左から東北から出土している海獣形土笛をモデルにしたオカリナで、簡単なデザインなら誰でも作る事ができるのだ。
真ん中がムンク風の笛で、頭の孔から息を吹き込めば口から音が出る。
右端がキティ形土笛で、きちんと縄文が付いている・・・史上初の縄文キティである。
キティ形は女の子たちに受けて、何人も挑戦していた。
野焼きは10月の予定。
今回のキャンプで作った格言。
・子供は意味なく走り回るが、大人は緊急事態でもないと走らない。
元気いっぱいに走り回る子供たちをみて、そういえば長いこと走ってないなあ、と老いを実感。