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縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

ヒスイは丁寧に磨いてこそ珠・・・残念な勾玉のリメイク

2023年03月15日 06時39分56秒 | ぬなかわヒスイ工房
高校の同級生から、キーホルダーの勾玉が汚れたのでクリーニングして欲しいと頼まれた。ひと目でミャンマー産とわかるヒスイで、緑の方は樹脂含侵の発色であるらしい。
汚れは切削傷が原因だよと、鉛筆でなぞって傷を浮きださせてみせて、これだとクリーニングしてもすぐに汚れるから、いっそのことリメイクしない?と提案。
薄いグレーの勾玉は古墳時代前期の勾玉風にスマートに。緑の勾玉は分割して二個のペンダントトップに。
使い古しの雑巾みたいだった勾玉は、淡いスミレ色の別嬪さんに生まれ変わった。丁寧に研磨すると鉛筆の芯が滑って汚れが着かなくなるし、乱反射しないから本来の色が内側から浮かびあがってくる。素材の良さを引き出すのは職人の矜持。
緑の方は箸置きみたいに中央が凹んでいたし、中途半端な位置に紐穴があけられていたから二個に分割した理由。奥さんから「うわぁ、かわいい!」と喜ばれたそう。エカッタ。
 
傷だらけの粗製乱造品であっても、ヒスイは神秘の霊石という類いの宣伝文句を並べ、桐箱に納めさえすれば、ありがたがって買ってくれる人もいるから商売が成り立つのが、現代の「ヒトとヒスイの物語」。
 
産地はどこであれ、これではヒスイがかわいそうだ。
 
万葉歌人が不老長寿への切ない想いを詠んだ「ヒトとヒスイの物語」は、そこにはないですねぇ。
 
 
 

出雲大社の宝物「真名井の勾玉」の謎を追う・・・勾玉探偵の気づき

2023年02月20日 07時26分40秒 | ぬなかわヒスイ工房

「勾玉探偵の気づき」

左端の宇木汲田の丁子頭勾玉(20%スケールダウン)と、中央の真名井の勾玉(原寸大)を同時につくって大変な収穫があった。
右端はわたしの定番デザイン勾玉(縦27㎜)で、サイズ比較に並べると小さくみえるが、現代の勾玉にしたら大型の部類だ。
出雲大社の宝物と知られる流麗な真名井勾玉は、北部九州の定形勾玉の系譜と思いきや、頭部と尾部の大きさに大きな差がなく、同心円状の腹部のえぐりをもつ西部北陸の半玦勾玉をスマートにして面取りした系譜、と実感した。
対して、宇木汲田の勾玉は釣針状の腹部のえぐりを持つので断面の曲面率が変化し続けるし、胴部が間延びしてもいるので造形も研磨も大変で、回転工具のリューターでは凸凹して滑らかに仕上げられず、最後は大昔と同じく棒砥石で手研磨。
 
その点、真名井勾玉の系統は造形も研磨も難しいものではないが、その特徴の無さが僅かな差で美醜の分かれ目になる点では難しい立体造形だ。実物の紐孔は5㎜もあるので魚や蛇などの生き物の眼を思わせるが、訳あって4㎜にしてあるので、ちょっと印象は違う。
 
考古学の先生方にもファンが多い宇木汲田の勾玉は、つくるのに手間暇がかかり過ぎる。
だから勾玉が量産される古墳時代以降は、シンプルな半玦勾玉の系譜に吸収されていったのではないだろうか?
 
ちなみに私の定番モデルは北部九州の定形勾玉を手本にした、頭部が腹部に若干入り込んだ形状なので、やはり手間暇がかかる。
ほほ笑んでいるようで、つくるのが楽しいんですよねぇ。
 
 

春だから特別な贈り物・・・古代風の勾玉首飾り

2023年02月18日 07時49分57秒 | ぬなかわヒスイ工房
水晶の管玉は考古資料にはなく、幕末以降くらいからつくられていたようなので、古物と偽って転売される恐れはなかろうと開発した古代風の勾玉首飾り。
ヒスイ勾玉を中央に据え両脇を赤メノウ勾玉に従えた。
ヒスイ勾玉の形は弥生時代の定形勾玉にしたいが、現代につくられたものということを明らかにするためにオリジナルデザインにしてある。
 
遺物の画像検索をしていたら、真名井遺跡の勾玉とわたしの勾玉を388,820円という半端な値段で売っているサイトを発見した(笑)噂の偽サイトであるらしいが、会社概要もなく日本語も怪しく、画像無断使用の抗議をする気にもならず笑ってしまった。
 
けしからんのはオタマジャクシみたいな安っぽい勾玉が、70万円で売っているではないか!どんな価値観の人がつくったサイトだろう( ´艸`)
 
水晶の管玉と赤メノウの組合せは女性的な印象になりますねぇ。
なぜか今年の年度末は、地元の人からお祝いの贈り物の依頼が多い。昨年亡くなった親父が応援してくれてるのかな。
 
まだ注文品は残ってる。次いこう~!
 
 
 

 


真名井の勾玉の謎!・・・勾玉探偵

2023年02月17日 07時55分23秒 | ぬなかわヒスイ工房
勾玉探偵の趣味と実益をかねた遊び。
右端が北九州の宇木汲田遺跡出土の丁子頭勾玉、右から3番目が出雲大社の宝物でもある真名井遺跡出土の勾玉の実測図からおこした原寸型。
 
2番目と4番目は、そのプロポーション比較のために縦27㎜に縮小した型だが、際立ってデザインの違いがわかった。
 
わたしの関心は、ヒスイの加工をしていなかった島根の遺跡から出土した真名井の勾玉が、いつ、どこでつくられた?というもの。
 
実測すると真名井の勾玉の紐孔は、直径5㎜もある片側穿孔なので、石針で穿孔したにはでか過ぎるので、管錐で穿孔した縄文勾玉の系譜のように思える。してみると製作時期は弥生中期の前葉か?ちなみに宇木汲田を含め、北部九州の勾玉は両側穿孔された小さな紐孔のようだから、穿孔技術は北陸系のようだ。
 
勾玉のプロポーションは、胴部の断面が宇木汲田が円形に対して真名井が楕円形。
 
スマートな北部九州の定形勾玉と、角を丸めないCの字をした西部北陸方面の半玦形勾玉の折衷なのではないか?
 
見逃せないのは、真名井の勾玉はガラスのような透明感のある非常に美しいロウカンヒスイということで、これはロウカンヒスイの勾玉の本家といえる唐津平野から出土する勾玉の系譜ということだ。
 
そこで点と点を繋いで・・・弥生中期の定形勾玉が完成する以前の北部九州に、西部北陸から半玦形勾玉が渡ってきて、北部九州でも半玦形勾玉系をロウカンヒスイでつくるようになった。
 
その北部九州メイドの半玦形勾玉をスマートにしてみたのが真名井の勾玉で、こりゃいける!と喜んだ職人が頭部を球状に、胴部断面を円形にした、さらにスマートな定形勾玉へと発展させていった。ということは真名井の勾玉は、定形勾玉のプロトタイプではないか?・・・という物語りが浮かびあがってきた。
 
もちろん「既存のアカデミズにとらわれない学問領域」のニューアカデミズおじさんではないから、断定はしない(笑)
 
石川県・福井県といった西部北陸、丹後半島、北部九州の勾玉の出土状況、玉つくり遺跡を調べて検証を地道にしていく訳ですな。
 
 
 
 

石なのに柔らかく温かみを感じるモノをめざす・・・笑う岩偶モチーフ石笛

2023年02月16日 09時36分08秒 | ぬなかわヒスイ工房
すっかり忘れていたのだが、二年前に投稿した「笑う岩偶」をモデルにした石笛の写真がでてきて、われながら斬新な作品だ!と笑った( ´艸`)
あの当時は地味で不人気な色のヒスイの活用がマイブームで、艶消し研磨してから線刻する土偶モチーフを連作していた。
額の孔はペンダント仕様の孔だけど紐をはずすと吹くことができ、量産品の石笛よりいい音がする。
奇をてらったデザインと笑うなかれ。ちゃんとオクターブ半の音域があるので、名人クラスなら楽曲演奏もできる。
石なのに柔らかく、温かみを感じる質感を目指しております。これぞ芭蕉先生の仰る「造化」ではないか?
 
「艶消し研磨」と「切削傷や研磨傷がのこっている艶が出てない研磨」をいっしょにしてもらっては困る。似て非なる異次元の技術差なのだぞ(笑)
 
 
 
 

 


勾玉キーホルダー金具の補修・・・焼き入れ・焼きもどし

2023年02月14日 07時38分01秒 | ぬなかわヒスイ工房
地元の人が土産物屋で買った勾玉のキーホルダーの金具が壊れたとの補修依頼。
最初はバチカンという華奢な金具であったらしいので、ステンレスの針金で自作。
 
針金そのままでは弱いので、大まかに成形してからバーナーで赤く焼いてから水で急冷する「焼き入れ」をして硬くする。そのままでは脆いので、再びバーナーで焼いて空冷して靭性を復活させる「焼きもどし」をして、成形の微調整。
 
黒い煤をスポンジヤスリで磨いて取付け完了。指でひっぱったくらいではびくともせず合格!
 
この技術は「平成の大首飾り」で。線径5㎜もある銅線で耳環を作る必要があり、ネット検索で自得した。簡単に書いているけど、ジャスト寸法・形にするのに4回も作りなおしているのですぞ。これがプロの仕事( ´艸`)
 
 
 

ステンレスに孔をあける・・・プルプルゆれる「ゆりかご勾玉」

2023年02月12日 07時09分46秒 | ぬなかわヒスイ工房
初代のプルプルゆれる「ゆりかご勾玉」では自作シルバーリングをつかっていたが、既製品のサージカルステンレス製リングにかえてみた。
リングを母胎、勾玉を羊水に浮かぶ胎児にみたてたシリーズ。自作したシルバーリングのバラつきがおおきすぎて規格化できずにいたので保留のままになってたのよ(笑)
サージカルステンレスは医療用メスと同じ素材だから貴金属ではないというデメリットがある反面、頑丈なうえに錆びず、安価で金属アレルギーにも強いメリットもある。
 
そして非常に硬いので、最初は直径1㎜の小孔ですら貫通させられず、足掛け一週間の試行錯誤の末に、ついに5分で貫通できる方法をみつけた。
ワイヤーも金と銀で試作したが、次はリングの奥行き幅を1㎜アップしたリングを取り寄せて勾玉の小型化したりと相性を確かめ、オシャレ女子たちの意見を聴いて育てていく。
 
 
 

女友達は「カワイイ」の先生・・・ラベンダーヒスイの勾玉

2023年02月09日 07時40分27秒 | ぬなかわヒスイ工房
ラベンダーヒスイは紫よりスミレ色のヒスイと呼びたい。
ヒスイ業界では濃くて均一な色が好まれる傾向があるが、白地に斑のコントラストがわたし好みだ。
ラブリーなヒスイだから、ぽってりとカワイイ感じの勾玉が似合う。
これほどラブリーなのに、出土品にラベンダーヒスイがないのはなぜだろう?ヒスイと認識していたのか?認識していなかったのか?
やはりヒスイは緑色であることが王道であったらしいが、ヒミコやヌナカワ姫といった女王にこの勾玉を見せて「なにこれ!はじめて見た!超カワイイ!」と言っている図を想像する。太陽光に透かして透過光の神秘に驚いたに違いない。
 
既存の価値観から脱皮するには、感覚的なカワイイが突破口!だから積極的に女友達の意見を聞く。
均一さ、緑だけがヒスイぢゃないぜ。
 
 
 

 


ヒスイ海岸でプルプルゆれる勾玉ツリー

2023年02月08日 06時17分33秒 | ぬなかわヒスイ工房

ヒスイ海岸でプルプルゆれる勾玉ツリー

タイトルそのままです(笑)

まだ二月なのに春の陽光にさそわれてヒスイ海岸でロケーション。 海風でゆられた勾玉が笑っているみたいですネ。

ちなみに黄緑色をした手前のおおきい勾玉と中央上のちいさな勾玉は、ロウカンと呼ばれる最上級の希少ヒスイ!

 

 

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成長期にメデタサを感じる文化・・・縄文晩期の胎児形勾玉

2023年02月04日 07時27分36秒 | ぬなかわヒスイ工房
頭でっかちで紐孔がでかい縄文晩期の勾玉は、わたしにはマンガチック表現の赤ん坊っぽく感じる。
朝日山遺跡出土の勾玉モデル。実物には黄緑系のロウカン質ヒスイで、白い斑(フ)がはいっている。
ところが中沢新一は生き物の生々しい形、グロテスクだと感じて、額部に刻みがあるものは魚のエラだと断定する。こちらも朝日山遺跡出土の勾玉モデル。わたしには額部の刻みがエラに認識しようもなく、おでこと鼻に感じるけど。
 
証明できないことを自分勝手に断定するのは、コメディ映画「ピンク・パンサー」のクルーゾー警部みたいな人ですな( ´艸`)
 
それはおいといて、縄文晩期の勾玉は淡いラベンダーヒスイが似合う。あえて黄色い不純物を残して出土品っぽい雰囲気を出してみた。
家を建てる時、施主に気付かれない屋根束の番付をわざと逆に書く風習があるのだと、横須賀の大工から聞いた。家が完成してしまうと古くなるだけなので、番付が間違った未完成で引き渡して、家運ますます登り坂とする縁起担ぎなのだそうだ。つまりは成長期をメデタシとする民俗例。
 
完璧なモノ、完全無欠なモノを目指さない寸止めの美学。
成長期にあるモノに感情移入する心情。
欠落したモノに侘び寂びを見出し愛でる視点。
こんなモノにわたしは余裕を感じて、なんだかホッとする。