デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/6月1日(日)~6月7日(土)

2008-06-07 23:51:35 | Weblog
■6月1日(日)~6月7日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★水色の増える教室六月に/池田多津子
六月になると、教室には水色が増える。教室に貼られた絵には、海や魚、あじさい、水色の洋服を着た子などが描かれているのだろう。教卓の花も涼しそうだし、さっと見回しても水色が増えて、梅雨の季節も涼しそうで明るい教室になった。(高橋正子)

【特選/5句】
★麦刈られ火の見櫓の高きかな/國武光雄
晴れた日の里山で一刈りごとに香ばしい麦の香りが立ちこめる麦刈りがいっせいに行なわれ、広々とした麦畑の彼方に、今まで、余り関心がなかった火の見櫓が堂々と立っている姿に感激した作者を見ることが出来ます。(小口泰與)

★飛び散りて上る噴水星の夜/竹内小代美
素敵な星空の下噴水が高く上り飛び散ってる水に星の明るさが見えてて綺麗な様子も想像します。(大給圭江子)

★板の間も畳も今朝の素足に触れ/多田有花
素足に触れるひんやりとした感触の心地の良いこと、夏の到来ですね。(大山正子)

★渓水の匂う山蕗届けられ/黒谷光子
届けられた山蕗に渓流のささやきが伝わるような瑞々しさを感じます。(志賀泰次)

★星涼し父の土産の匂袋/川名ますみ
星の涼しさに、ほのかに匂う匂袋。優美で涼やかな世界が広がるが、匂袋が父の土産と言うことで、温かみのある現実の世界が持ち込まれた。それが、この句を支えているのがよい。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★青葉風かくれんぼの声運びおり/大給圭江子
爽やかな季感を感じさせる句でその情景がよく出ています。(篠木 睦)

★夏蝶に逃げられし児の一途/大西 博
逃がしてしまった蝶を必死に追う子どもの真剣な顔が目に浮かびます。健康的で愛らしい姿ですね。(大山正子)

★仏事終え山を離れる梅雨の雲/藤田洋子
仏事を無事終えられ、ふっと安堵なさった気持のあらわれが深みのある素敵な詠みになった一句と思いました。(志賀泰次)

★墨を磨る欅青葉の風入れて/柳原美知子
外は明るい五月の晴天。ゆっくりと墨を磨るのも書に向かわれるひとつのプロセスです。穏かな風が茂った欅の葉を揺らしていきます。美しい時間です。(多田有花)

★青葉闇通り抜ければ空真青/堀佐夜子
ほの暗い木々の下を通り抜けて出会う、空の明るい青がまっさらに感じられる。陰から明へ移り変わりる眩しさが新鮮です。自分もまた同じ世界にいるようです。(網本紘子)

★僧の列すたすた来る京薄暑/甲斐ひさこ
私も数回見かけた事がありますが、大きな笠を頭に載せ、若い托鉢僧が5~6人一列に並んで移動する様は、あっけないほど「すたすた」との感じがあります。この時季の京都近辺ならではの風物ですね。(桑本栄太郎)

★入梅や墨痕太き古代文字/尾崎 弦
「入梅」にも「古代文字」にも黎明の響きがあり、「墨痕太き」の韻律が奥深いイメージを喚起してくれます。(小西宏)

★最北の平野に動き田の植わる/志賀泰次
広々とした北海道の地に人や車両の動きを見る。それはようやく始まった最北の平野の田植えだったのだ。人と季節と自然の姿をおおらかに伝えてくれる句です。(小西宏)

★自転車の弾む母子の夏帽子/大山正子
明るい初夏の、軽やかな親子連れの自転車姿が、いきいきと描かれていて素敵です。(小西宏)

★次郎吉の墓つきとめぬ木下闇/奥田 稔
権力に立ち向かう義賊を待ち望む庶民の思いから生まれた次郎吉の墓を、ほの暗い茂みの下に突き止めたという。その思いは、なにとはなしに、清涼感と安らぎを伝えてくれます。(小西宏)

★梔子の花に明るき西の空/小西 宏
香気ある梔子の浮き立つばかりの白さ を感じます。その際やかな純白に広がる西方の空が、一際明るく梅雨の最中の嬉しさです。(藤田洋子)

★樹々涼し森の中ゆく往き帰り/小川和子
下五の「往き帰り」がいい表現だ。「森の中」を詠んで、そのどこもがいつも、「樹々涼し」なのだ。(高橋信之)

★筆太の字を染め上げて夏暖簾/宮本和美(信之添削)
夏の元気を「筆太の字」にいただく嬉しさ。暖簾が涼しく揺れている。(高橋信之)

★田植終え透き通る風吹き抜ける/小河原宏子
田植が終ったあとの安堵感のある田の風景。植えられたばかりの苗は、水に浮いているようだが、これからしっかりと根付く。風も透き通るとは実感。(高橋正子)

★土の香や子ら一同に甘藷植う/飯島治朗
子どもたちが一同に揃って、甘藷の苗を植えつける。おぼつかない手つきながら作物を植える喜び、土に触れる楽しさがある。(高橋正子)

【入選Ⅱ/18句】
★紫陽花やジグザグに行く裏小路/上島祥子
6月はどこへ行っても紫陽花のオンパレード。「ジグザグに行く」が裏小路の様子を的確に表している。(古田敬二)

★からり咲く南瓜の花や野の真昼/網本紘子
南瓜の花、オレンジ色がかった黄色い花だったな?美しい花だったな?とそんな記憶があります。間違っていたらごめんなさい。「からり咲く南瓜の花」沢山の収穫が期待できそう、、楽しみです。下語が効果的で好きな句です。(吉川豊子)

★窓明かり青田をすべる終電車/丸山美知子
静かな夜の田園風景がすっと浮かびました。心地よい句と思いました。(竹内小代美)

★梅雨入りや生命あるものみな色に/桑本栄太郎
梅雨の頃には、しばしば「鬱蒼」という言葉が浮かびます。鬱陶しい気分を思いがちですが、命の盛んな様を云うのですね。草木の茂りを初め「生命あるもの」が、こぞって色を深めるために、梅雨時は仄暗いほど彩りが濃いのだと、御句にお教え頂きました。(川名ますみ)

★さよならの声聞く公園夕涼み/高橋秀之
何かほっとする一日の終わりを感じ、幸せな満ち足りた気持ちになりました。子供たちがお家に帰ったのでしょうね。(丸山美知子)

★夏めきて鈴鹿稜線真青なり/篠木睦
鈴鹿の山々の稜線の青葉が滴る美しい情景を思います。(大山正子)

★過ぎさりし昭和かたりつ豆ご飯/吉川豊子
平成も20年になり、長かった昭和もすでに遠くなりました。あまりにもいろいろなことがあった昭和という時代、それも遠くなれば懐かしく、あのころに思いをはせて話が弾みます。「豆ご飯」が昭和にぴったりです。(多田有花)

★髪切るや鏡のおくの五月闇/前川音次
髪を切ってもらっている間は、自然と自分の姿、および背景としばらく向き合うことになります。その鏡の中に広がる闇は自分の背後に広がるものです。ふとした日常の中に垣間見る別次元を思わせます。(多田有花)

★今年竹揺れて耀く梅雨晴れ間/河野啓一
生長した若竹がすがすがしい青さをみせて空へ立ち上がっています。そのすっきりとした姿が梅雨晴間にうれしく、新鮮な思いで見つめておられる作者がいます。(多田有花)

★五月雨や稽古に励み賑やかに/松本千恵子
何のお稽古なんでしょう? 子どもたちか、あるいは大人? 外は雨ですが、部屋の中は明るい活気に満ちています。その対比がいいですね。(多田有花)

★ぶらんこを空まで漕げよ夏の陽に/志賀泰次
梅雨季とはいえ、晴天の陽差しは眩しいほどの輝きです。夏の陽差しのもと、広がる空へ「ぶらんこを 漕げよ」の呼びかけに共感しつつ、心明るく広やかな気持ちにさせていただきました。(藤田洋子)

★衿元へ初夏の風入れ遊歩道/渋谷洋介
日常生活を詠んで、気負ったところがない。「初夏の風」が快い。(高橋信之)

★純白の紫陽花多し疎水道/古田敬二
疎水に沿う道に、偶然であろうけれど、純白の紫陽花が多い。哲学の道などを思い浮かべるが、そうそうとした感じが残る。(高橋正子)

★風にのる重さありけり梅雨の蝶/矢野文彦
晴れた日などは、蝶は、ひらひらと飛んで重さを感じさせないが、梅雨の蝶となれば、梅雨を含んだような羽の重さを感じる。その重さも、「風にのる重さ」なのでまことに梅雨の蝶らしい。(高橋正子)

★葉丈こえ菖蒲の蕾伸びあがる/祝 恵子
緑色の艶やかな葉の中から 高い花茎を立てる菖蒲。「伸びあがる」蕾に、これから優美な花を開こうとする勢いを感じ、とても清々しく目に映ります。(藤田洋子)

★白樺の梢揺れおり夏の霧/小口泰與
高山や高原に発生する夏の霧。立ち込める夏霧の山中に、白樺の揺れも美しく、しっとりと心落ち着く静かな状景を感じます。 (藤田洋子)

★山里に植田広がり空深し/井上治代
山里にも田が植えられて、あの田この田とつながって広がりをもつ。水面を渡る風にそよぐ早苗目にすずしい。山里の植田の静かさに対して、空はと言えば深い。静かさと深さが体に沁みるようだ。(高橋正子)

★夏料理すっきり盛られ宴に入る/藤田裕子
これから宴が始まろうとして並んだ夏料理。夏料理は目にすっきりと、涼しそうなのがいい。たのしい宴への期待感があわせて感じられる句。(高橋正子)

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34 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (大山正子)
2008-06-08 07:59:17
正子先生
「夏帽子」を入選Ⅰに選を頂戴しまして有難うございます。
小西様には、同句に嬉しいコメントを頂きまして有難うございます。
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お礼 (前川音次)
2008-06-08 08:03:10
正子先生
「五月闇」の句を入選Ⅱにお選び戴き有り難うございます。
多田有花様嬉しいコメントを戴き有り難うございます。
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お礼 (志賀泰次)
2008-06-08 08:37:21
信之先生、正子先生、”田の植わる”、”夏の陽に”の句に夫々入選Ⅰ、Ⅱの選を有難うございます。また、宏様、洋子様には素敵なコメントを夫々添えて戴き有難うございます。体の具合で外に余り出れなく、多くはベットで日記の中の憶いを追っては詠む日々です。目前の景の写生がないと思う様な句が出来ませんが、もう一人の自分と向かいあって応援歌を送る積りで生甲斐のひと時にしています。励みになります、有難うございました。
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お礼 (丸山美知子)
2008-06-08 09:18:04
正子先生、「窓明かり」の句を入選Ⅱにお選び下さりありがとうございます。竹内小代美様嬉しいコメントをありがとうございました。
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お礼 (河野啓一)
2008-06-08 10:01:37
正子先生
「今年竹揺れて」の句を入選Ⅱにお選びいただき、有り難うございました。風の強い日で、薄緑色の若竹の束が空を掃いて揺れるのが素晴らしいと思いました。
多田有花さま
同句に作者の気持ちをお汲み取りいただいた評を頂戴し嬉しく存じました。ありがとうございます。
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お礼 (矢野文彦)
2008-06-08 10:28:45
高橋正子先生。
「風にのる」の句、入選Ⅱを頂き、コメントもありがとうございます。
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お礼 (小西 宏)
2008-06-08 12:38:13
高橋正子先生
「梔子の花に明るき西の空」を【入選Ⅰ/15句】にお加え下さり、たいへんありがとうございました。
藤田洋子さま
たいへん丁寧なコメントをいただき、嬉しく読ませていただきました。どうもありがとうございます。
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お礼 (吉川豊子)
2008-06-08 13:12:29
  正子 先生

 豆ご飯 を、入選Ⅱにお加えいただきまして、有難うございました
多田有花様、同区に共感のコメントを、お添えいただき
まして、感激をいたしおります。
ありがとうございました。
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お礼 (大給圭江子)
2008-06-08 13:22:26
正子先生
「青葉風」の句を入選Ⅰにお選びいただき有難うございます。子供達の遊ぶ声は楽しくなります。
篠木睦様  嬉しいコメントを添えてくださり有難うございます。
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お礼 (正子先生)
2008-06-08 14:35:17
正子先生 「紫陽花」の句を入選Ⅱにおとり上げいただきありがとうございました。古田敬二さまにはうれしいコメントをいただきありがとうございます。
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