デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/5月25日(日)~5月31日(土)

2008-06-01 00:04:10 | Weblog
■5月25日(日)~5月31日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★虹立ちてアイリスすっくと揃い咲く/丸山美知子
虹とアイリスの取り合わせが、欧米の抒情詩のようであって、新鮮である。虹の色を一つもらったようなアイリスの花の色。すっくと立つ姿が毅然として、それらが触れ合うことなく己を保ちながら揃い咲く様がすっきりとしている。(高橋正子)

【特選/5句】
★新緑の水突っ走る伊予の山/大西 博
新緑の中を走る水の勢い。伊予の豊かな植生が多量の水をはぐくんでいる結果でもあろう。風土を詠って、潔い。(高橋正子)

★茅葺きの山門入れば栃の花/渋谷洋介
茅葺の山門にも風情があるが、さらに印象的なのは、大樹であろう、大きな葉に咲く栃の白い花である。梅雨前のこの季節の情緒がよく表されている。(高橋正子)

★子らの声朝はや響く柿若葉/小河原宏子
日が昇るのが早くなった。まだ朝早いというのに、子どもたの元気な声が響いている。柿若葉はてらてらと耀き、天気もよく、なにもが元気に満ちるときである。(高橋正子)、

★帰り路はいつしか晴れて風青し/甲斐ひさこ
家を出られる時は雨が降っていたのでしょう。用事を済ませて戻られるころには雨もやみ、青空が広がってきました。今頃の季節の雨上がりは気持ちがいいですね。(多田有花)

★葉桜や風吹き抜けて吹き抜けて/矢野文彦
「吹き抜けて」を重ねて使ったところ感心しました。葉桜を揺らしながら爽やかな風が吹き抜けていく感じが読み手にはっきり伝わってきます。(小河原宏子)

【入選Ⅰ/15句】
★手向けられし百合水切りし又挿しぬ/柳原美知子
手向けられた百合の花が永持ちし永く香りたつように水切りをして水揚げを良くしてあげた。詠み手のあらゆる面での優しさがそのまま伝わってきます。好きな句。(前川音次)

★若竹の力みなぎるふとき節/吉川豊子
通勤のバスの中から若竹の姿を毎日眺めていますが、節ごとに白い粉を噴き青く真っ直ぐ伸びた姿は、全く力みなぎる若さそのものです。(桑本栄太郎)

★しゃぼん玉歪みのとれて風にのる/志賀泰次
ご近所の子供達が遊んでいるところを見ておられたのでしょうか。吹き出しはじめと玉になって飛んでいく様が判り、一緒に喜んでる詠者が見えてきます。(祝 恵子)

★空きベンチ座りましょうよバラの香と/祝 恵子
バラの花を前にお友だちとでしょうか、座ってゆっくりながめましょうと。何か不思議な位、私も月曜日のことですが、このように友とベンチに座りました。さわやかさと、やさしさを感じる好きな句です。(小川和子)

★春雨や遠野の谷戸の古水車/奥田 稔
春雨、遠野、谷戸、古水車と、美しい連想を誘う日本語四語が音符のように句の中に散りばめられて、独特のリズムと心地よさが感じられました。いろいろな御句に良き人生と旅を読ませていただいて有難うございます。(竹内小代美)

★梅雨に入る雨の匂いの新しき/池田多津子
昨日、四国管区梅雨宣言が発表されました。そういえば、梅雨の雨だという実感に句の細やかさを感じました。(大西 博)

★代田澄む雲と夕陽と山の影/桑本栄太郎
この時期、さまざまのものを映して静まっている代田は風景を一変させます。広々とした水田地帯ではにわかに大きな湖ができたような雰囲気になります。棚田はまた異なる趣があります。その情景を見事にとらえられています。(多田有花)

★白百合の活けられるより香の立ちぬ/藤田洋子
厳密に言えば、白百合は、活けられる前からも匂っているわけであるが、活けられると、本来の清楚な姿となって、香りがいっそう感じられるというのだ。(高橋正子)

★朝日射す御堂へ今日は豆御飯/黒谷光子
毎朝の仏飯に、今日は季節の香りいっぱいの豆御飯をお供えした。御堂には、すがすがしい朝日が差して、まことに気持のよいことである。(高橋正子)

★蒲公英の絮半球となり夕日/小西 宏
蒲公英がまん丸い絮となって、一日を過ごすうちに、風に吹かれて、半分はどこかへ飛んでいった。残りの半球を夕日がやさしく包んでいる。今日の終わり野の光景である。(高橋正子)

★万緑や半身で生きて七年に/河野啓一
半身で生きては、ご病気で半身不随になられたということであろうが、それも七年になる。万緑の健やかさに励まされることであろう。(高橋正子)

★薔薇の園香りもろとも撮りにけり/國武光雄
薔薇園の数え切れない薔薇の花。香りが漂い、写真に撮れば、その香りごと写真に収められる気がする。芳しい薔薇の写真となって出来上がることだろう。(高橋正子)

★夏めくや藻の立ち上がる湖の底に/宮本和美
水辺が慕わしいころになってきました。水底に揺れている藻、そこでいっしょに揺れている日の光と波、明るく気持ちのいい湖の情景と、穏かに水を見つめられている作者の姿が浮かびます。(多田有花)

★時鳥鳴く追分の夜明けかな/大山正子
百人一首にある「ほととぎす鳴きつる方をながむれば」の歌を思い起こしました。追分は、中山道の追分宿でしょうか。この朝、月は残っていたのでしょうか? 夏の朝のさわやかさが匂うようです。(多田有花)

★紫陽花や葉脈しかと張りをもち/藤田裕子
紫陽花の花ではなく、葉に目を向けた句。あの大きな毬のような花を浮かばせ、支えているかに見えるのが、しっかりとした葉である。葉脈がしかりと通り、大きな葉に力がある。(高橋正子)

【入選Ⅱ/15句】
★おのが場所おのが風受け青葉揺る/多田有花
それぞれの場所でそれぞれの風を受けて揺れる青葉が清々しいです。青葉の葉擦れの音、揺れる木漏れ日まで想像し、心地よくなります。(池田多津子)

★緑陰の乳母車子ら駆け寄り来し/古田敬二(信之添削)
ここしばらく暑い日が続いております。乳母車の親子連れも木陰で一休みしたいところでしょう。若葉の季節の親子連れの姿を上手く表現していると思います。(小河原宏子)

★五月闇海から半里遠汽笛/吉田 晃
五月闇を縫って半里向こうの海から汽笛が聞こえる。一日の生活が終わり明日へ繋がるひと時の風景。どっしり感が好き。(古田敬二)

★ミニトマト口いっぱいに陽の恵み/高橋秀之
トマトは自家栽培されてあるのでしょう。収穫の素直な喜びが伝わってくる気持ちのい い句です。他の2句も生き生きとしたいい句だと感じました。(國武光雄)

★豆腐屋のラツパの音色や夏の夕/飯島冶朗
ラツパの音色をひさしく聞いていないので懐かしく思うとともに夏の雰囲気を感じました。(奥田 稔)

★五月晴今日の一日の始まりに/堀佐夜子
梅雨に入り、五月晴が待たれる昨今、今朝は五月晴で、さあ、今日は頑張って仕事を始めようという気持ちの表れた句。共感を覚えます。(宮本和美)

★植田今水に馴染みてみどり濃く/小川和子
植えられた直後の早苗は水面にやっと顔を出しているおぼつかない姿です。それも数日たてば、はやしっかりと根をはり、背を伸ばしています。その苗の姿を的確にとらえられています。(多田有花)

★この埃この匂ひして麦の秋/前川音次
麦刈をされた経験をお持ちの方なればこその句と思います。嗅覚は五感のうちでも 最も原始的なもので、本能に訴え、記憶を呼び覚ます効果を強くもっています。匂いの記憶を生かされた佳句です。(多田有花)

★庭のばら雨滴をふくみ父の手に/川名ますみ
自宅のお庭に薔薇を作っていらっしゃるとは素敵ですね。薔薇は姿も香りも高貴で凛としたものを感じる花です。華麗な女性のイメージもあり、お父様のがっしりとした手との対比が見事。(多田有花)

★十薬を束ね明るさ活けにけり/竹内小代美
十薬の花が束ねられて活けられる。はっきりした白い花苞と中の小花が明るさを感じさせます。活けた場所がぱっと明るくなるようです。(池田多津子)

★えごの花明るさそのまま抱き落つ/網本紘子
小さな白い花をいっぱいにつけるえごの木です。落ちてもなおその明るさと香りを残しています。えごの花を見つめる作者の優しい眼差しを感じます。(池田多津子)

★山風に鮎の匂いの風の来る/篠木 睦
鮎釣りのシーズン到来ですね。初夏を待ちかねている人も多いのでしょう。そんなわくわくする思いを強く感じます。山からの風もすっかり夏の風です。(池田多津子)

★山清水そば屋の暖簾縹(はなだ)いろ/小口泰與
暑い日が増えてくると涼しさを求めるようになります。清らかに流れる山清水とそば屋の暖簾の縹色(うすい藍色)に涼しさを感じ、ほっとします。(池田多津子)

★長距離バス郷愁誘う初夏の風/大給圭江子
「長距離バス」の旅にあれば、日常とは違った思いだ。「郷愁誘う」こともある。「初夏の風」に吹かれていれば、過去の風景が蘇ってきて、現実となる。(高橋信之)

★梅雨前の一と日の青空仰ぎたり/岩本康子
梅雨に入ると、青空がめったに望めなくなる。入梅前のまぶしい青空を仰ぐのも人情というものだろう。(高橋正子)

※入賞発表は本名ですので、不都合な方は、ご連絡ください。入賞発表から削除します。

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30 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (志賀泰次)
2008-06-01 09:58:49
信之先生、正子先生、拙句"しゃぼん玉"を入選句にお採り戴き有難うございます。また祝恵子様には素敵なコメント戴き嬉しく存じます。
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お礼 (宮本和美)
2008-06-01 10:47:33
信之先生、正子先生
拙句の「夏めくや」を入選15句にお選び頂き、有難う御座います。今後も精進致しますので、宜しくご指導をお願い申し上げます。
多田有花様
素晴らしいなコメント有難う御座います。嬉しく読まして頂きました。
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お礼 (高橋秀之)
2008-06-01 10:50:15
正子先生、
ミニトマト口いっぱいに陽の恵みの句を入選Ⅱへお取りいただきありがとうございました。
また、國武光雄さまには、コメントをいただきありがとうございました。
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お礼 (竹内小代美)
2008-06-01 12:04:14
正子先生、「十薬」の句を入選Ⅱに入れていただき有難うございました。池田多津子様には、おやさしいコメントをいただき有難うございました。
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お礼 (大給圭泉)
2008-06-01 12:27:14
信之先生、正子先生
「初夏の風」を入選Ⅱにお選びいただき有難うございます。
信之先生嬉しく素敵なコメントを添えてくださり
有難うございます、重ねてお礼申し上げます。
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お礼 (岩本康子)
2008-06-01 13:28:47
正子先生

「梅雨前の一日の青空仰ぎたり」にコメントを添えて入選Ⅱに選句いただき、大変有難うございました。 久しぶりの俳句でした。

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御礼 (堀佐夜子)
2008-06-01 14:31:07
正子先生、「五月晴」の句を入選Ⅱに入れていただき有難うございました。宮本和美様素敵なコメントをいただき有難う御座いました。
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お礼 (河野啓一)
2008-06-01 16:10:37
正子先生
単に自己の日記録のような「万緑や」の句を入選1におとりくださり、ご懇篤なご講評をお添え下さいまして誠に有り難う御座いました。物事が思うようにならぬとついイライラもする昨今ですが、初夏の万緑を見渡せる喜びの中で、「例え右手右足で生きているような」ことでもあり難いことだ。嬉しいことだ、と思い直している次第です。
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お礼 (吉川豊子)
2008-06-01 17:25:40
  正子 先生

  若竹の力みなぎるふとき節 を入選Ⅰにお選びいただき
まして有難うございました。
桑本栄太郎様 同区に素敵なコメントを、お添えいただきまして
嬉しく拝聴いたしました。
有難うございました。
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お礼 (小河原宏子)
2008-06-01 18:12:12
正子先生 
 「柿若葉」の句を特選にお選び下さり、素晴らしいコメントをお書き下さいまして厚くお礼申し上げます。これからもご指導よろしくお願い申し上げます。
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