デイリー句会入賞発表

選者 高橋正子
水煙発行所

入賞発表/6月8日(日)~6月14日(土)

2008-06-15 00:12:03 | Weblog
■6月8日(日)~6月14日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★咲きのぼる空の青さよ立葵/大山 正子
「咲きのぼる」が上五にあるが、初め、その主語は示されない。咲きのぼる場所が続いて示され、それが青い空であると解る。そこまでで、読者は、青空をバックに下から咲いてゆく花を想像する。それが立葵であることに納得するわけである。、(高橋正子)

【特選/5句】
★色足らぬ梅雨夕焼けや湖の道/前川音次
厚い雲に覆われた梅雨時の夕焼け。湖の見える道を辿りつつ何かもの足らぬ思いの詠者に共感を覚えます。やはり夕焼けはぎんぎんぎらぎらと真っ赤なのが良いですね。(河野啓一)

★棹突きて蛍の川へすべり出す/渋谷洋介
蛍狩とか蛍舟とかの季語もありますが、「蛍の川」と一語で言ってのけた辺りがとても良いとおもいます。(前川音次)

★夏蒲団ふしぎな夢を見て目覚む/多田有花
不思議な句、楽しい句、夢が広がります。色んな夢を想像させます。(前川音次)

★青笹の粽一皿届けらる/丸山美知子
ご近所から届けられたのだろう。皿にのった青笹の粽に思わず爽やかな笑みがこぼれる。日常生活をリフレッシュしてくれるのも、こういったことからと思える。(高橋正子)

★河鹿鳴くせせらぎの水汲み帰る/河野啓一
河鹿は、清流で鳴く。河鹿の声にますます清らかに思えるせせらぎ。そんなせせらぎがある嬉しさ。その水を汲む楽しさが伝わる。(高橋正子)

【入選Ⅰ/15句】
★梅雨の海遠き処にまず一灯/竹内小代美
海の広がりを感じる句です。遠くに灯った灯は漁火なのか、それとも灯台か、
あるいは内海であれば対岸の人家か、さまざまなことが想像できます。(多田有花)

★山影を映す植田のうすみどり/桑本栄太郎
「植田のうすみどり」、山影を映して、のどかな田園風景を想像します。絵画をみるようで、好きな句です。(吉川豊子)

★黒南風といふも明るき吉備平野/宮本和美
使い慣れない"黒南風"という言葉に魅力を感じる私です。梅雨時期に見せる風だそうですが、梅雨のない北国では文字と解説の文章からのイメ-ジしかありません。黒南風が吹いても吉備平野の広がりに明るさを感じ取った処に豊な田園風景を想像します。(志賀泰次)

★朝顔の双葉へ児ら水たっぷりと/飯島治朗
自分の、或いは子や孫の小学生のころの思いにいっぺんに引き戻されてしまいます。どこにでもありそうな景ですが今朝のこの句は何処か新鮮に感じる。(前川音次)

★活けてより紫陽花大輪青深む/藤田裕子
活けてからも色を変える紫陽花。大輪の青が日ごとに深まるのを見るのはうれしいですね。部屋の印象も違ってくるようです。(池田多津子)

★熊除けの鈴と歩めり岩清水/小口泰與
熊除けの鈴が必要なほど深い山中の岩清水。さぞ清冽なことでしょう。鈴の澄んだ音色が、いっそう涼しさを深めます。(川名 ますみ)

★羊歯青し飛沫絶えざる滝の下/川名ますみ
良く見かけます、滝の飛沫が絶え間なくあたり青く水々しく光ってる。涼しそうな、ひんやりとした空気を感じます。(大給圭江子)

★早苗田の陽を燦々と散りばめり/大給圭江子
苗が整然と植えられた田、田水が夏の日差しに輝いています。大都会の中心部以外ならまだどこでも水田の風景は身近に見られることでしょう。この時期の風光を詠われたさわやかな句です。(多田有花)

★荒梅雨に張らる地縄の弛みなし/尾崎 弦
間もなくそこに新しい家が建てられます。更地に張られた地縄、地縄を張ると、改めてその土地の様子が建築関係者の方にははっきり見えるそうです。とても大事な建築工程のひとつなのですね。激しい雨の中ぴんとはられた地縄にいろいろなものが見えてきます。(多田有花)

★風の来て若葉を白く吉田山/古田敬二
若葉のみずみずしい初夏の季節、折から一陣の風が来て葉裏を返す。「吉田山」には、よき日々の、高邁な理想を想起させるところがあります。(小西宏)

★梅雨晴れ間鳥飛び交いて影落とす/井上治代
飛び交う鳥たちも、梅雨の晴れ間を喜び、楽しんでいるようです。明るい晴天の
日差しがあればこその、鳥の動きとその影です。(藤田洋子)

★境内に咲けばみな供花濃紫陽花/黒谷光子
境内に咲く濃紫陽花が一際鮮やかな美しさです。供花となる一花一花の紫陽花に、心静まるような浄らかな空気を感じます。(藤田洋子)

★山影を映す植田のうすみどり/桑本栄太郎
田水に映る山影も美しく、田植えが終わったばかりの植田の「うすみどり」も清々しく、心澄み渡るような状景です。(藤田洋子)

★枇杷熟れて色の揃いし今朝の晴/柳原美知子
朝空に、熟れた枇杷の実の一つ一つが見えてくるようです。梅雨どきに、枇杷の実りの揃う彩りが、嬉しく明るい朝の晴です。(藤田洋子)

★しぶき上げ三連水車田水張る/國武光雄
水しぶき上る三連水車ならではの勢いに、清涼感あふれる日本の美しい水田の風景を感じます。(藤田洋子)

【入選Ⅱ/15句】
★明易のアマリリス咲き目覚めけり/大西 博
明け易くなり、眠気のさめやらぬ身を、アマリリスの鮮やかな大輪の赤は、覚醒させてくれそうです。白々と明け始めた庭の美しさも目に浮かびます。(柳原美知子)

★朝もぎの露おく茄子の色の冴え/篠木睦
朝早く切り取った茄子には露がかかっていて、色も紺色というか、茄子の瑞々しい色で輝いていたことでしょう。朝採りの茄子を上手く表現した素敵な句と思いました。(小河原宏子)

★クローバー足元にしてバーベキュー/吉川豊子
バーベキューを楽しそうになさっている足元にクローバーが咲いてる爽やかな光景が伝わります、美味しそうですね。(大給圭江子)

★梅雨深し校舎抜ける風は青/池田多津子
本格的な梅雨の時期、校舎を吹き抜ける風は新緑の匂いを残す青葉風である。簡潔に景を詠まれていて下五の"風は青"と言い切った潔さが梅雨を払拭した心地よいものに感じさせている好きな一句です。(志賀泰次)

★即売の野菜にしばし夏の蝶/奥田 稔
取りたて野菜の売り場の光景でしょうか。「しばし野菜に蝶」新鮮さがわかりますね。(祝恵子)

★郭公の鳴けば豆蒔く頃合と/志賀泰次
農作業の目安は地域によってもさまざまだと思います。豆を蒔くのに待っていた郭公の声が聞こえました。広々とした畑に郭公の澄んだ声が響きます。(池田多津子)

★陽だまりのめだかの学校ビオトープ/高橋秀之
学校にビオトープが作られているのですね。その中ではめだかたちが群れをなして泳いでいるのでしょう。日だまりのほっとする空間です。(池田多津子)

★梅雨晴れの水色スカート女学生/小河原宏子
梅雨の時期は少しの晴れ間もうれしいものです。女学生の溌剌とした姿がうれしく、水色のスカートも軽やかで涼しさを感じます。(池田多津子)

★リビングに藺草の匂い衣更/小西 宏
リビングルームに藺草の敷物が敷かれました。その新鮮な香りが夏本番の到来を知らせてくれます。服装も半袖で夏の装いになるように、家具調度も衣替えですね。(多田有花)

★待画面一面溢るる菖蒲かな/堀佐夜子
デスクトップの待機画面をハナショウブにされたのでしょう。画面いっぱい濃淡さまざまな花々が咲きそろっています。パソコンの上でも季節感を大事にしたいと思われている作者の姿勢がよくわかります。(多田有花)

★一面のクローバー青し梅雨夕焼/甲斐ひさこ
広々とした場所一面にクローバーが茂っているというのは、開放感に満ちています。梅雨の晴間、夕焼けがその上空を覆っています。夕暮れが遅いこの時期、壮大な光景です。(多田有花)

★静けさや若葉の奥の能楽堂/上島祥子
能楽堂からは地謡の声が漏れ聞こえてきたりして、必ずしも音がないというわけではありません。しかし、しっとりとした若葉の庭の佇まいには、濃厚な「静けさ」が漂っているように思えます。(小西宏)

★山門をくぐる紫陽花寺は雨/矢野文彦
奥深い古刹の山門をくぐる。それだけで、えに言われぬ、きっぱりとした思いに満たされます。その門をくぐれば、紫陽花の庭がしっとりと雨に濡れているのでした。(小西宏)

★並び居るわらべ地蔵は木下闇/祝恵子
ふだん何気なく通り過ぎるわらべ地蔵のすがたも、いつの間にか深い木陰に見るようになりました。わらべ地蔵はその暗みの中に、静かにこちらを向いて並び立っています。(小西宏)

★馬鈴薯の花に朝風とおり過ぐ/小川和子
ジャガイモ畑は広々とした景観を想起させます。その花の列を涼やかな朝風が吹き通り、彼方へと去っていきます。彼方にはまた、遠大ななにものかを見る思いです。(小西宏)

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39 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (高橋秀之)
2008-06-15 00:36:28
正子先生、
陽だまりのめだかの学校ビオトープの句に
選を賜りまして、ありがとうございました。
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御礼 (飯島 治朗)
2008-06-15 02:24:00
正子先生、「朝顔の双葉へ児ら水たっぷりと」の句を入選Ⅰに御選頂き、誠にありがとうございました。また、前川音次様には、同句に素敵なコメントを頂き、誠にありがとうございました。
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お礼 (丸山美知子)
2008-06-15 07:30:47
正子先生、「青笹の」の句を特選5句におえらびくださり、嬉しいコメントも添えていただきありがとうございました。
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お礼 (宮本和美)
2008-06-15 08:08:51
正子先生には「黒南風しいふも明るき吉備平野」の句を入選1にお選び頂き、誠に有難う御座いました。また、志賀泰次様には同句に素適なコメント有難う御座いました。
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お礼 (竹内小代美)
2008-06-15 08:47:43
正子先生、「梅雨の海」の句を入選Ⅰに入れていただきましてありがとうございました。いつもお目通しをいただきまして深く感謝をしております。
多田有花様には、情景をリアルに想像いただいたコメントに感激しました。有難うございました。福岡からの岐路、夕暮れの日豊線に乗りずっと別府湾を眺めていて詠んだ一句です。
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御礼 (大山 凉)
2008-06-15 09:20:07
正子先生、
「立葵」の句を最優秀句にお選びくださいまして有難うございます。
又うれしいコメントまでも頂戴いたしまして感謝申し上げます。
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お礼 (前川音次)
2008-06-15 09:22:33
「お礼」
正子先生
「梅雨夕焼け」の句に「特選/5句」の選を戴き大変嬉しく存じます。誠にあり難く、厚く御礼申し上げます。

河野啓一様
同句に素敵なコメントをお寄せ戴き感激です。どうも有り難うございます。
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お礼 (大給圭江子)
2008-06-15 09:35:36
正子先生
「早苗田」の句を入選Ⅰにお選びいただきましてありがとうございました。
ふるさとで見てきた景がいろいろ思い出されます。
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お礼 (祝恵子)
2008-06-15 10:02:36
正子先生、「木下闇」の句を入選Ⅱにお取りいただきましてありがとうございました。
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お礼 (矢野文彦)
2008-06-15 11:02:44
高橋正子先生。
「山門を」の句、入選Ⅱを頂きありがとうございます。
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