一昨日の日勤業務の終わりである夜6時過ぎ、入所者の夕食が終わって、私が食堂の清掃をしていたとき、入所者Tさん(男性)が煙草を吸うためにいらっしゃいました。食堂端にある喫煙所でTさんは静かに煙草を吸われていましたが、おもむろに私に話しかけてきました。
Tさん「4月の『き』は何の『き』か知ってる?」
わたし「き?『き』って『木』のこと?う~ん...桜...かなぁ?」
Tさん「いや、桜は3月なんだよ。1月は松で、2月が梅でね...」
ギャンブルがお好きな方ならもうお気づきになるかもしれませんが、Tさんは花札の絵柄にそった植物のお話を切り出してこられたのです。私はギャンブルには縁が無いので、さっぱり解らなかったのですが、花札の絵柄は季節に合わせた植物が描かれているのですね。
Tさん「今度、面白い話をしてあげるよ」
わたし「じゃぁ、私は明日は15時半に仕事があがるから、仕事が明けたら聞かせて」
その日はそう約束して終わりました。
翌日、15時40分にTさんの居室がある1階へ降りたところ、Tさんは居室ではなく、前日と同じ喫煙所がある1階食堂で私を待っていらっしゃいました。
Tさんのお話というのは、ご自分の夢を語られるもので、その夢の内容は、300坪くらいの敷地に家を建てて、庭に12種類の植木を植えたいというものでした。松、梅、桜...と花札の絵柄に沿って植えていき、12種類の植木・植物を1年中楽しみたいという趣向です。
前日の短い会話の中でも私たちの施設の敷地面積が何坪くらいあるか、私に尋ねてこられていました。Tさんの夢はなかなか具体的に描かれており、私たちの施設の敷地は300坪は優に越えていますが、その一部分からご自分の夢の敷地をイメージしてみたかったようです。
私は3年前まで不動産会社の営業をしていましたが、その頃は昨日と同じように、顧客と相対して商談をしていました。
Tさんが私に土地や家がらみの話題を投げかけてきたのは、私に「不動産屋の匂い」が残っていたからでしょうか?
私が営業職の頃、顧客からできるだけ情報を知りたくて、また大事な意志決定をしてもらいたくて、顧客と商談をしていました。昨日は営業と顧客という関係ではありませんが、あの頃に似た感覚でTさんのお話を伺っていました。
結果、300坪の敷地に宮大工が建てるような家を建てたいというお話を端緒に、Tさんに関していくつかの新しい情報が聞き出せました。
以前は福祉施設の厨房でお仕事をなさっていたこと、お若い頃は「(最近、その存続が危ぶまれていることが報道された)ばんえい競馬」で馬の世話をなさっていたこと、お金や経済の動きに敏感な感覚をお持ちで、施設で購読している新聞の株式・相場面をよくご覧になっており、週に一度の頻度で為替レートと金相場の記録を続け、世の中の動きを知ろうとなさっていることなどです。
ほんの30分ほどでしたが、Tさんとの会話は私にとっては、緊張感を顔には出さずに相手の情報を引き出すという、かつての営業職時代の感覚を思い出させてくれました
Tさんにとっては、話したいことが話せた楽しい時間だったでしょうか?
Tさんが入居している居室の男性は皆、引きこもりというわけではないのですが、同室の他の方々と気軽に話しあったりすることが少ない方々です。最近になって入所されたTさんは、本当は社交的で、皆と打ち解けたいと思われていたのかもしれません。
Tさんが話したいことは山ほどありそうです。そのほんの僅かでも打ち明けていただけたのなら私も嬉しいです
先月、何故か娘にねだられて、100円ショップで花札を購入。
札には花の名前も点数も書いてないけど、そこがまた美しかったりします。
11月は「雨」なので植木は無理じゃね?とか思っていたのですが、「柳」でした。
http://www.maenisi-hs.gsn.ed.jp/season/hanafuda_gif.html
実家=北海道の帯広で、一度だけ「ばんえい競馬」を体験しました。
サラブレッドとは全然違う生き物のレースですが、とても興奮したのを覚えています。
が、年末に行ったので、とにかく恐ろしく寒かった。
Tさんの夢が叶うか否かは別として、話を聞いてくれる人が増えると良いですね。
「ばんえい競馬」は北海道でしたね
Tさんも、ばんえい競馬の馬が、サラブレッドとは全く違う馬であることを楽しそうにお話しされていました。
お嬢さん...花札に興味を持つなんて...親御さんに似た??