Mey yeux sont pleins de nuits...

読書、映像・音楽の鑑賞の記録など

小川洋子『ミーナの行進』

2011-01-02 21:20:29 | 読書
 小川洋子の作品の舞台は多くの場合、具体的な地名として示されていないことが多い。どこにもなさそうで、しかし意外と身近にありそうな場所。あるいはどこかにありそうで、やはりどこにも存在しないのではないかと思わされる場所。だからこそ作者の奔放な想像力の中で遊ばせてもらうことができる。けれども、この『ミーナの行進』の場合、舞台は芦屋とその周辺で、イニシャルでぼかされていても、具体的な場所につい思い当ってしまう(たとえば、このAという洋菓子屋は、本来Hのことで、クレープ・シュゼットというのはあれのことかな、といった次第)。モデルについても心当たりがないではない。そのため、先にコメントを書いた二作に比して、想像の愉しみという点で、少しばかり窮屈に感じた。 . . . Read more