【時事(爺)放論】岳道茶房

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11/8中日春秋

2010年11月08日 | コラム
11/8中日春秋

 日露戦争で最大の激戦地となった中国・旅順の攻防戦で、日本軍は約六万人の死傷者を出した。作戦を担った乃木司令部が、歩兵をロシアの要塞(ようさい)に繰り返し正面突撃させた結果である。

 作家の司馬遼太郎さんは『坂の上の雲』を書くとき、昭和十年代の陸軍大学校の教授内容を調べて驚いたという。旅順での攻撃の失敗を認めようとせず、「成功」とするような雰囲気があったからだ。

 司馬さんは、戦史から学ばない陸軍が昭和十年前後に日本を支配した時、「日本そのものを賭け物にして“旅順”へたたきこんだというのもむりがないような気もするのである」と指摘している(『ある運命について』)。

 大国ロシアを破った日露戦争の実態は、薄氷を踏む勝利だった。それを知らされていなかった国民は講和条約で賠償金も取れないことに激怒、焼き打ち事件まで起こす。

 成功体験は独り歩きをする。それは、戦後の検察組織に共通していないだろうか。ロッキード事件やリクルート事件は、政官財の癒着に切り込んだ輝かしい実績だが、大阪地検の押収資料改ざん事件を考えると、栄光の陰に腐敗の芽はひそんでいなかったのか、と思う。

 事件を受け設置された検察の在り方検討会議の初会合が今週開かれる。取り調べの全面可視化や特捜部の存廃が焦点だ。議論を大阪という一地域の不祥事に矮小(わいしょう)化しないことを望む。


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