【時事(爺)放論】岳道茶房

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11/3産経抄

2010年11月03日 | コラム
11/3産経抄

 霜月に入ったとたんに、ロシアの大統領が頼みもしないのに国後島にやってきた。きのう前原誠司外相は、駐露大使を一時帰国させると発表し、小紙の編集局もてんやわんやだったが、「柳腰内閣」としては上出来だ。口先だけの抗議で済ませてしまうなら菅直人政権は年を越せないだろう。

 北方領土や尖閣問題の陰に隠れてしまったが、上出来どころかとんでもない案が政府から出された。10年かけて幼稚園と保育所を統合し、就学前児童の教育や保育を「こども園」に一本化しようという案を内閣府が示したのだ。

 増え続けている保育所に入りたくても入れない待機児童を解消するための切り札というが、なんとも乱暴な案である。「幼保一体化」という美名のもと、日本にできてから130年以上もの歴史がある幼稚園が名実ともになくなってしまいかねない。

 子供を保育所と幼稚園に通わせた小欄の経験からいえば、保育所には保育所の、幼稚園には幼稚園の良さと欠点がある。統合すれば、子供を長時間預かってくれる保育所の良さと幼稚園の教育水準の高さが組み合わさってより良くなるという発想は甘すぎる。

 幼稚園の約6割は私立だ。「こども園」に転換するためには、先生を増やし、建物を増築し、調理室を新築しなければならない。設備投資できるお金がふんだんにある園は数えるほどで、教育の質も下がるだろう。

 「こども園」には、子供は親ではなく、社会が育てるというかつての社会主義国のにおいがする。首相が今やるべきことは、待機児童をゼロにする対策で、多様な幼児教育を妨げることではない。拙速な決断で後世に禍根を残すよりは、何もしない方がまだましである。


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