【時事(爺)放論】岳道茶房

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4/17中日春秋

2010年04月17日 | コラム
4/17中日春秋

 こんなご時世で、閉店に追い込まれる飲食店は少なくない。だが一方、不況どこ吹く風で繁盛している店もある。多分、こういうことだ。

 好況の時には、消費者の目は甘く、出費を決める合格ラインはさほど高くない。だから、客へのアピール度「まずまず」ぐらいの店もやっていける。だが、不況になると話は別だ。財布のひもをしめる時、合格ラインはぐっと引き上げられる。

 もう、「まずまず」では来てもらえない。結果、繁盛するのは、好況時には余裕で合格していたようなアピール度「抜群」の店だけになる。どうも不況には、店やら商品やらが持つ地力の差を鮮明にしてしまうところがある。

 さて昨日、話題の本が発売された。村上春樹さんの小説『1Q84』の三巻目。そのアピール度は「抜群」ぐらいの表現では足りない。既に一、二巻は計二百四十四万部も売れ、出版取次大手の集計では昨年最大のベストセラーだ。文芸作品のトップは一九九〇年の集計開始以来、初だった。

 三巻も初版五十万部。三十万部の増刷まで決まっており、不況にあえぐ出版界にあって、まさに特異な売れ方。ただ、この「一人勝ち」とも言える、あまりに強烈な人気の集中はちょっと気掛かりだ。

 ただでさえ、数多(あまた)のアピール度「まずまず」の作品たちには、厳しい時代である。その上、この一作の吸引力がこうも強いと…。


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