【時事(爺)放論】岳道茶房

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6/25編集手帳

2010年06月25日 | コラム
6/25編集手帳

 よく見聞きする「目からウロコが落ちる」という表現は新約聖書に由来する。日常語として定着したのはそう昔ではなく、戦後のことという。

 「魚類や爬虫類(はちゅうるい)ではあるまいし、人間に、ましてや目に、ウロコがあってたまるものか」と、言語学者の田中克彦さんはこの表現になじめなかったらしい。

 皆が使い慣れ、聞き慣れた今、ウロコを詮索(せんさく)する人はいない。聞き慣れた言葉には注意せよと、田中さんは言う。〈ことばは考えるために役立つが、人々を考えなくさせるためにも役立つ〉と(岩波現代文庫『法廷にたつ言語』)

 思考を妨げる言葉の一例はスローガンだろう。民主党が圧勝した昨年衆院選の「政権交代」は分かりやすい反面、有権者が公約の中身を一つひとつ吟味するのを邪魔したうらみもなしとしない。参院選が公示された。勇ましいスローガンは消え、「消費税」「普天間」「政治とカネ」などを争点に、与党野党が政見の中身を競う。耳をすまし、考える、本来の国政選挙らしい選挙になりそうな気配である。

 日本には今、何が必要か。有権者の目から積年のウロコが落ちるような舌戦を待つ。


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