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商標の広場

弁理士の福島が商標のお話をします。

商標権と芸名

2015-08-27 10:17:17 | 日記

商標権と芸名の問題を、安室奈美恵の商標登録出願(その後、取り下げ)について考えてみたいと思います。「安室奈美恵」の商標はかばん類、貴金属アクセサリー等のファッション製品では既に登録されています。これは、たとえば、レディーガガ・ブランドの香水等と同じように、アーティストの名前をブランドとして展開するというよくある戦略です。

今回出願されたのは、芸能活動に直接関係ある「歌唱の実演」等の役務(サービス)を指定した商標です(権利者法人)。商標法では、他人の氏名や著名な芸名等を含む商標はその他人の承諾がなければ登録されないと規定されています。そもそも安室奈美恵は本名なので、今回の新出願は安室奈美恵さんの承諾がなければ登録されません。

第一に、商標とは、商品や役務の出所を示す標識ですが、少なくとも日本では歌手名は役務の出所とは扱われないというのが特許庁の解釈です。つまり、安室奈美恵のコンサートのチラシに書かれた安室奈美恵の名前は商標と解釈されない(ゆえに商標権の効力は及ばない)可能性が高いのです。

仮に上記の解釈が覆ったとしても、商標法では、商標権の効力は、自己の氏名や著名な芸名を普通に用いられる方法で表示する商標には及ばない旨の規定もありますので、「安室奈美恵」商標登録に基づいて安室奈美恵さんが芸能活動を行なうことを差止めることはできないでしょう。一方、既存の登録商標に基づいて安室奈美恵ブランドのバッグ等の販売等を禁止することはできます。

さらに、先使用権(商標登録出願の前に既に著名になっていた商標には商標権の効力が及ばない)の規定もありますので、独立後に安室奈美恵の名前を使わせないために所属事務所がこれから商標登録出願を行なうのは意味がないことになります。


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