IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

4本のプレッシャー

2004-12-30 16:56:19 | ニュース
2004年も残すところあと2日。少し前まではニューヨークかボストンへ行こうと思っていたのだが、先週発生した幾つかの航空会社のトラブルを見ていたら、どうもワシントンを出る気がしなくなってしまい、今年の大晦日もワシントンで普段の生活と変わりなく友達と飲みながらサッカーの話でもする事になりそうだ。先週のクリスマス休暇中、フィラデルフィアやワシントンではUS航空とコムエアー(デルタ航空の子会社)が1000本以上のフライトのキャンセルをしたり、乗客の手荷物を何日も空港に放置したりして、エライ騒ぎとなっていたのだ。

コムエアー側はフライトの大量キャンセルについて、その前にアメリカ中西部で発生した大雪でコンピューターがおかしくなってしまったからだと、言い訳にもならないような言い訳を繰り返しているのだが、確かにコンピューターで全てが管理された社会では有り得ない話ではない。US航空の手荷物ホッタラカシ事件の原因はもっともっとアナログ的なもので、クリスマスシーズン中に空港の手荷物係の間で風邪による大量の病欠が発生したんだとか…。

何とか名誉挽回につとめたいUS航空側は、今週末に社員の無給での労働参加を呼びかけている模様。人員不足はかなり深刻なようで、労働組合に加入していない社員にボランティア労働を呼びかけているんだが、この国ではおそらく底抜けにおめでたい夢物語として切り捨てられるのがオチなんじゃないだろうか?

だからという訳じゃぁないんだけど、久しぶりにレンタル店で映画を借りてきた。大晦日の深夜までは無理かもしれないが、頑張って今週末に気になってた映画を見ようかと思い、無謀にもDVDを4本も借りてしまった…。返却日が来週月曜日の深夜までなので、おそらく時間的には大丈夫だろうと思っているが、やっぱり2本か3本にしておけばよかったかな…。で、今日はこんな映画を借りてきたんです。

「ザ・ターミナル」:トム・ハンクス主演
「ザ・マンチュリアン・キャンディデート」:デンゼル・ワシントン主演
「ヒーロー」:ジェット・リー主演
「コラテラル」:トム・クルーズ主演

トム・ハンクスの「ザ・ターミナル」は何人かの友人から「絶対にいい映画だよ」と言われ続けてきたのだが、結局劇場公開時には見に行くチャンスが無く、DVD化された今になってやっと見れるようになったのだ。日本でも公開予定(もうされてるのだろうか?)のはずだから、ストーリーを知っている方も多いかもしれないが、空港での入国時に自分の国が消滅した事を知らされた主人公を描いたドラマである。個人的に思い出すのは、ボストン時代に一緒にサッカーをしていたコートジボワール出身の学生のことだ。国からの奨学金でエンジニアリングを学んでいた彼だが、祖国で突然クーデターがあって、翌日から学費が一切払えなくなって嘆いていたのを覚えている(その後、なんとか奨学金制度は復活したらしいが)。国家の消滅って、意外とフィクションなんかではないのです。

今日も色々とニュースを眺めていたのだが、こんな話があった。最近の米軍基地内では、結婚カウンセリングに通う夫婦が増えているが、こういったカウンセリングなどは陸軍が200万ドルを投入して始めた「兵士家族の結婚生活を守る」事業の一環らしい。最近発表された調査によると、夫や妻のどちらかが戦地に派遣された家族の離婚率は21パーセントとなっており、通常の離婚率よりも高いことが明らかになっている。

陸軍はすでに200万ドルを投入し、様々な種類の結婚カウンセリングを実施したり、高級ホテルの無料宿泊券をプレゼントしたりしている。陸軍に20年間勤務する空挺師団所属の兵士はAP通信のインタビューに対し、「軍がこういう事にお金を使ったのは初めてじゃないでしょうか」、と驚きを隠せない。カウンセリングの1つでは、40時間のコースの中で夫婦のコミュニケーションの再確認や、アルコール問題や戦地で受けたトラウマにどう気付くかなどを学ぶことが出来る。さらに、現場の指揮官にもカウンセリングや育児休暇の希望者達に休暇を与えるよう指示が出ている。

陸軍での結婚カウンセリングはハワイ駐留部隊の牧師が1990年代後半に個人的に開始したが、2001年に法律が改正されると、軍による宿泊施設や食事の支払いが認められ、あっという間に全国の基地内へと広がりを見せた。また結婚カウンセリング同様、兵士の心理カウンセリングも重要視されてきている。

2002年にノースカロライナ州のフォートブラッグ陸軍基地内で、アフガニスタンから帰還した兵士4名がそれぞれの妻を殺害する事件が発生しており、軍内部では兵士のトラウマと結婚生活をいかにうまくコントロールできるかが重要な課題となっている。殺人事件今で発展しなくても、戦地から帰ってきて家族と上手くコミュニケーションが取れない兵士が多いのは事実のようだが、一体どのような原因なのか非常に興味がある。