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つぐみ集2023年8月のエッセイ

2023年11月12日 | 俳句・短歌・評論・俳句誌・俳句の歴史
【エッセイ】水の音

古池や蛙飛びこむ水の音  芭蕉
 まず「蛙飛びこむ水の音」が芭蕉の頭
に浮かんだが、それだけでは句にならな
い。「水の音」をどう句に反映するか。つ
まり鳴いていない蛙の存在をどう表現す
るか。さらに幽玄の世界を音で表現する
にはどうするか。
 鈴木大拙は、芭蕉の古池は「時間なき
時間」を有する永久の彼岸に、横たわっ
ている。それはこれ以上「古い」ものの
ない「古さ」である。どんな規模の意識
もこれを量ることはできぬ。それは万物
の生ずるところであり、この差別世界の
根源である。(『禅と日本文化』)
のなかの「禅と俳句」の一節である。
 大拙の解釈は、古池を「時間なき時間」
とみなすことは無限の空間を表すことに
もなろう。
 確かに芭蕉の目指したのは「水の音」
からくる無限で幽玄の世界である。だが
俳諧表現イコール禅世界でない。まして
俳諧は他者との共有する世界が求められ、
そのためには道具立てが必要になる。こ
の句の場合それが古池だ。


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