透水の 『俳句ワールド』

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芭蕉の発句アラカルト(20) 高橋透水

2023年08月22日 | 俳句・短歌・評論・俳句誌・俳句の歴史
手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜 芭蕉
 
 出典は『野ざらし紀行』。貞享元年、秋の句。江戸住まいが長くしばらく帰郷していなかった芭蕉だが、『野ざらし紀行』によれば、貞享元年八月、門人千里を伴い、伊勢神宮に詣でた後で伊賀上野に帰郷した。前年亡くなった母の墓参を済まし、その足で大和・吉野・美濃を巡り、翌年四月江戸に戻っている。
 さらにその後、貞享四年十月に江戸を旅立ち、尾張・伊勢桑名を経て、年の暮れに伊賀上野に帰郷し、実家で新年を迎えている。このとき、芭蕉は故郷へ万感の思いを込めて、「古里や 臍(へそ)のをに泣く としのくれ」と詠んでいる。それはさておき「手にとらば」の句であるが、『俳諧一葉集』に「母の白髪おがみて」と前書きがある。それをみてみると、
 長月の初、古郷に歸りて、北堂の萱草も霜枯果て、今は跡だになし。何事も昔に替りて、はらからの鬢白く、眉皺寄て、ただ「命有て」とのみ云て言葉はなきに、兄(このかみ)の守袋をほどきて、「母の白髪おがめよ、浦島の子が玉手箱、汝がまゆもやゝ老たり」と、しばらくなきて、「手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜」とある。
 兄半左衛門と芭蕉の何年かぶりの対面は印象的である。兄は決して高飛車でなく、弟を懐かしく丁重に迎えている。芭蕉も熱い泪をみせている。故郷とは伊賀の国小田郷赤坂のことで、父与左衛門は福地家系の人で上野の「農民町」に家宅を持ったという。この父は、芭蕉が十三歳の年に病没している。母は伊賀名張の生まれ、祖先は、藤堂高虎の伊賀転封に同行した伊予宇和島の桃地氏という。
 さて「秋の霜」は母の白髪のことで、熱い涙を霜の上、つまり手にした母の白髪の上に落としたら、消えてしまうだろうと詠ったのだ。このことからも芭蕉が長年帰郷をしていなかったことが推測できる。ただし当時の藤堂藩では出国後五年目に藩の役所に出頭することが義務付けられていたが、芭蕉はこの義務は遂行している。つまり芭蕉は藤堂藩から抜けだすような単なる俳諧師ではなかった。

★2023年『俳句のWA』 6月俳句祭りの結果

2023年08月03日 | 俳句・短歌・評論・俳句誌・俳句の歴史
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★2023年『俳句のWA』 6月俳句祭りの結果
◎高得点作品
不器用な生き方が好き蝸牛  風間典雄

◎詠み込み(宝・夢)高得点作品
姿なき夢魔に魘され熱帯夜  戸矢一斗

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★2023年『俳句のWA』 9月俳句祭り開始 !!
投句締切は 9月20日
8月20日より受け付けます。
◎特選賞 各選者の特選句より3名
◎詠込優秀賞
◎『俳句のWA』賞
◎その他サプライズ賞
各賞の該当者には賞品券をお送りします。
●応募規定
当季雑詠 2句
詠込み句 1句(真または増)
●投句先 パソコン :
https://ws.formzu.net/fgen/S31510800/
スマホ専用 :
https://ws.formzu.net/sfgen/S31510800/
あなたの会心の句をお待ちしています!!

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